噛み合わない会話1 ジュリアスside
「何故です? 何故、ジェニーではダメなのです?」
「…何故もなにも、そなたの恋人は医者の娘ではないか。到底、そなたの正妻にするわけにはいかぬ」
「高名な医師の娘ですよ! 本人も今年、大学を卒業する優秀な女性! 私を支えてくれるには最適な女性ではないですか!!!」
「確かに、彼女の優秀さは聞き及んでいる。王立大学をスキップで入学し、最短で卒業するほどの才女である事もだ」
「そうでしょう! 王立大学始まって以来の天才と名高いんです!」
「…そのようだな。入学してからもトップの成績を独走している」
「なら!!!」
「…ジュリアス、お前は医者にでもなるつもりか?」
「はっ!? い、いしゃ? 何故、私が医者になどなるんですか?」
「お前が、ジェニー嬢と結婚するという事は、彼女の家に婿入りするという事だ。先の事は分からんが、ジェニー嬢は医師になる予定はないようだからな。そうなれば婿を医師にして跡を継がすのは当然だろう」
「えっ!?」
父上は何を言っているのか。
何故、私がジェニーの家に婿入りして医者になる事になるんだ?
彼女は王家に嫁に来る立場だ。
私の妻になるという事は、王子妃になるという事だろう?
「まさかと思うが知らぬのか?」
そのまま父上は絶句し、難しい顔のまま眉間に手を当てた。
何の事だ?
知らない?
何が?
私の知らない何かがあるのだろうか?
 




