表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/50

死霊司祭

「そうだ。もちろん計画的に行動する魔人族もいるが、この城塞都市ゼリアは、魔人族の気紛れ、遊戯感覚で滅ぼされた。城塞都市ゼリアの衛兵。戦士、冒険者、女子供老人を含む非戦闘員に至るまで全て皆殺しにされた。魔人族どもは、人間族の死体の山を見ながら酒を飲んで狂笑し、やがて何処かに消えた」


 シオンが淡々と解説する。

 クレアとペイモンが、美貌に恐怖の表情を浮かべる。

 凶悪極まりない魔人族の所業に、全身が冷たくなる。


「よく覚えておけ、魔人族と人間族は宿敵だ。どちらかが滅びるまで戦いは続く。これは未来永劫変わることのない真理だ。『殺すか、殺されるか』その二つしか無い。魔人族を見つけたら躊躇無く殺せ」


 シオンが、静かな語勢で二人の近衛侍女に諭す。


「シオン様の仰せのままに」

「了解なのです」


 クレアとペイモンが、強い決意とともに答える。


 シオンが、二人をこの滅びた都市に連れてきたのは、魔人族の脅威を強く認識する事。そして、魔人族を倒す覚悟を身につけさせる為だ。


 戦闘中には一瞬の躊躇が命取りになる。

 戦いには、精神的な覚悟も重要なのだ。


「今日はここで野営する」


 シオンが、命じた。


 クレアとペイモンは、主人の命令に、


「「はい」」


 と言って答えた。

   



  


夜の帳が下りた。

 闇夜が、世界を覆い尽くし、フクロウの声がどこからか聞こえてくる。


 夜風が、廃墟の都市に吹き付けている。


 シオンが、この場所をわざわざ野営地としたのは、クレアとペイモンの教育のためだ。

 魔人族への脅威を強く認識させる事。


 そして、今ひとつの思案が、シオンにはあった。

 シオンは、いつも通り、食事をつくり、クレアとペイモンにふるまった。


 シオンの得意のクリームシチューである。

 ビアンカに教わった得意料理で、シオンたちにとってはお袋の味のようなものだ。 


 食事が終わり、満足した後、シオンたちは食後の休憩をした。

 一時間後、変異がおきた。


「予想どおり来たな」


 と、シオンが独語した。


 シオンは立ち上がり、廃墟の都市の奥に美しい碧眼をむけた。


「何事ですか?」


 クレアが、異変を察知して立ち上がり、弓を構える。

 ペイモンも、油断なく細剣レイピアを構えた。


「クレア、ペイモン。特別授業の開始だ。〈死霊レイス司祭ブリースト〉と、死霊系の魔物の大軍のお出ましだ」


シオンが、自身の黒髪を手で撫でつけながら言う。

 シオンの視線の先に、青白く発光する魔物があらわれた。


 クレアとペイモンが、全身に緊張のさざ波をたてる。


 死霊レイス司祭ブリーストは、幽霊のように半透明だった。


 顔は髑髏に似ており、聖職者のような衣服をまとい、右手に杖を持っている。人間に似ているが足がない。


 宙空に不気味に浮かぶ様は、まさに幽霊だ。


 死霊レイス司祭ブリーストの背後には、死霊レイスが、百体ほどいた。


 死霊レイス〉もまた半透明で、宙空に浮かんでいる。


 死霊司祭や、死霊のような死霊系の魔物は、幽霊ゴースト系とも言われる。


 人間の怨念、悪意、怨嗟などが、具現化したのが、死霊系の魔物である。特に〈死霊レイス司祭ブリースト〉は、死霊系でも高位の魔物で知能が高く、魔法が得意で多くの〈死霊〉を従えている場合が多い。


 城塞都市ゼリアのような人が多く死んだ廃墟では、このような死霊系の魔物が発生しやすいのだ。


 そして、それこそが、シオンがここに野営しようと決めた理由の一つだ。


 クレアとペイモンに、死霊系の魔物との戦闘経験を積ませるのが目的である。


死霊司祭は死霊たちを従えて、シオンたちを半包囲した。


「死霊系の魔物は数多いが〈死霊レイス司祭ブリースト〉は実体がほぼなく、攻撃しにくい。クレア、ペイモン。お前たち二人だけで戦ってみろ」 


 シオンが、クレアとペイモンに命じる。

 クレアとペイモンは無言で頷いて、前に出る。

 死霊司祭の髑髏の眼窩の奥には赤い光が宿っていた。


 その眼のような赤い光が狡猾に光る。


 やがて、死霊司祭は後退して死霊たちの背後に隠れ、死霊たちに指令を下した。


 百体の死霊たちが、一斉にクレアとペイモンに襲いかかる。


 死霊たちは氷の魔法を発動した。


氷精アイスアロー〉の魔法を唱えて、クレアとペイモンめがけて撃ち放つ。


 五百を超える槍のように尖った氷が、クレアとペイモンめがけて宙空を走る。


 ペイモンが、クレアをかばうように前に出て、〈結界魔法〉を無詠唱で発動させた。


 ペイモンが、得手とする結界魔法は攻防ともに使える汎用性の高い魔法である。


 瞬く間にペイモンの結界が展開し、宙空に翠緑色エメラルドグリーンの円形の盾が出来た。


 死霊たちの放った氷の矢が、ペイモンの結界魔法の盾に衝突して、宙空で爆ぜる。


 氷を打ち砕く破裂音が連続して響き、氷の矢が破壊されて霧散した。


 クレアが、ペイモンの結界魔法の盾を飛び越えて、死霊たちに躍りかかった。






閲覧ありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」と少しでも感じたら、ブクマ登録ならびに評価をして頂けると嬉しいです。ヤル気がでます。

下の画面の☆☆☆☆☆で、ポイントをつけて評価を出来ます。

宜しくお願い申し上げます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ