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正妻候補

「素敵な物語でした」


 クレアは目を閉じて涙を指でぬぐった。


「二人の姫君が可哀想なのです……」


 ペイモンが、目を手でおおう。

 シオンは椅子の背にもたれ、


歌劇オペラは素晴らしいな)


 と素直に感動した。

 前世でも歌劇はあったが、皇族や王族との接待で観る事が多く、まっったく楽しくなかった。


 劇が進行している途中で、王族と陰謀を阻止する話や、外交問題を話し合っているのだから劇を楽しめるわけがない。


 純粋に歌劇を楽しむとこんなに感動できるものなのか。

 世の中、まだまだ楽しい事がたくさんあるものなんだなぁ……。

 

 


 

 



感動の余韻を残したまま、シオン達は宿屋に戻った。


 風呂に入り、巨大な天蓋付きのベッドに寝転がるとシオン、クレア、ペイモンは、歌劇オペラの感想を言い合った。


 俳優の演技、音楽、ストーリー、一番感動した場面など。

 こういう話がとても楽しく盛り上がった。


「ペイモンは、『ローランの火竜退治』で最後に御姫様と結婚した所が一番お気に入りなのです」 


ペイモンがウットリとした顔で言った。


「素敵ですよね。花嫁衣装が最高でした」


 クレアも頬をほんのりと染めて憧れる。


「女の子は花嫁衣装とか花嫁が好きだよな~」


 シオンが、碧眼に微笑をゆらした。


「当然なのです。花嫁は女の子の夢なのです!」


 ペイモンが、いつになく真摯な口調で言う。


「花嫁さんが嫌いな女性なんていません」


 クレアが、シオンに顔を近づけて力説した。


「そういうものか。まあ、男の俺には理解が難しいがな」


 シオンが、肩を竦める。

クレアとペイモンが、暫し沈黙した。そして、クレアとペイモンは、互いに視線を交差させる。

 やがて、クレアが夢幻的な美貌をシオンにむけた。


「その……、シオン様。質問しても宜しいでしょうか?」


 クレアが、ベッドの上に正座する。


「どうした? なんでも言ってみろ」


 シオンが、掌で自身の黒髪を撫でつけた。


「花嫁の話が出ましたが……、その……シオン様は、ご結婚についてはどうお考えでしょうか?」


 クレアが目を伏せ、頬を染めて、モジモジと指をいじりながら言う。


「結婚?」


 シオンは、クレアの問いに意表を突かれ、形の良い顎を手でさわった。


「はい。申すも畏れ多いのですが、一応、私とペイモンは、シオン様の……その、婚約者でございまして……」

「そ、そうだな」


 シオンは、そう答えた後、少し照れくさくなり視線を逸らした。


「ですので、シオン様には是非とも、私とペイモンとの結婚を真剣に考えて頂きたく……」 


 クレアが、端麗な顔を耳まで真っ赤にする。

 ペイモンも、指をモジモジとさせ、頬をゆるめて顔を赤らめた。


「結婚か……」


 シオンは、ふと冷静になって考える。


(クレアとペイモンが、俺の婚約者だと言うことは理解しているが……)


 何せ、物心ついてから祖父エルヴィンとビアンカに、毎日のように言われ続けてきたことなので理解はしている。


 しかし、クレアとペイモンとは妹のように接してきた。

今でも手のかかる『可愛い妹たち』という感覚が抜けない。


 恋愛対象や結婚相手として見れるかというと、いきなりそういう対象にするのは難がある。


 もちろん、クレアとペイモンが嫌いなわけではないし、クレアとペイモンに魅力を感じないわけではない。


 クレアは、エルフ特有の神秘的なまでの美貌の持ち主である。

 ペイモンも、愛らしい魅力的な女の子だ。


 だが、まだクレアもペイモンも13歳だし、なんとなくそういう対象にする事に違和感を感じるのだ。


 シオンが、思い悩んでいると、クレアが口を開いた。


「出来ればシオン様におかれましては、なるべく早く私とペイモンを正妻として認識して頂きとう存じます。それと、旅の途上で正妻候補をあと数人、探して頂きたいのです。これはエルヴィン様の切なる願いでもあります」


クレアが言い終わると、シオンは小首を傾げた。


「『エルヴィン様の切なる願い』? お爺さまの名が何故出る?」


 シオンがベッドの上で胡座をかいて尋ねる。


「それはですね」


 とクレアが説明を始めた。

 

 



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