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オペラハウス

 美味い! 砂糖とカリカリした小麦粉の味がミックスされている。

 ちょうど良い温かさで、口の中がやんわりと熱くなる。


 砂糖は甜菜糖だろう。上品で質の良い甘味だ。

 無農薬の砂糖は、甘味に品がある。


 シオンが、銀髪金瞳のエルフと、亜麻色の髪の少女に視線を投じる。

 クレアは、無言で上品に食べ、砂糖が口の周りつくと舌でペロリと舐めて食べている。その所作には、官能的な優美さがあった。


 ペイモンは、可愛い顔で大口を開けて、ガツガツと大型犬のように豪快に食べている。


 宗教画の天使のような容貌のクレア。

 ペイモンの健康的で愛らしい美貌。


 どちらも甲乙つけがたい程、魅力的だが、同じ美少女でもこうも違うのか、シオンはなんだか不思議に思った。


 クレアは時折、ペイモンの口についたドーナツの食べカスを指でとって食べてあげている。姉と妹を通り越して、親子に見えてきた。


 楽しいもんだ。

 2人の仕草をみているだけで飽きない。

 食べ終わって、城塞都市ライオスの景観を観ながら3人で歩く。


(本当に建物のセンスが良いな)


 とシオンは思った。

 都市計画がしっかりとしているせいだろう。

 余程、この街を設計した人間は、芸術的センスに優れていたようだ。 感心してしまう。


「街の景観を観るだけで、楽しいですね」

「おとぎ話みたいに素敵な街なのです」


 クレアとペイモンが、シオンの両隣で感心する。

 市街地を歩くのを楽しんでいるのは、シオン達だけではなかった。


 親子連れ、そして、恋人同士が手を繋いだり、腕を組んで歩いている。 クレアとペイモンが、恋人同士が腕を繋いで歩いているをチラチラと見た。


 クレアとペイモンは互いに視線をかわした。

 そして、クレアが無言で、シオンの右腕をとる。

 遅れてペイモンも、シオンの左腕をとって組んだ。

 突然、クレアとペイモンに腕を組まれたシオンは、軽く小首を傾げた。


「どうした?」


 シオンが、銀髪金瞳のエルフと、亜麻色の髪の少女に問う。銀髪金瞳のエルフと亜麻色の髪の少女の胸の感触が腕にあたり、なんとなくこそばゆい。


「その……、シオン様が宜しければ暫くこのままにして頂きたいのですが……」


 クレアが、頬を染めて俯き加減に言う。


「ペイモンもこうしていたいのです」


 ペイモンが、健康的な笑顔をシオンにむける。


「ま、良いけど」


 シオンは、軽く肩を竦めた。 

 クレアとペイモンは嬉しそうに頬を緩ませた。



◆◆◆◆  

  


 中央市街地で昼食と夕食を済ませた後、シオン達は宿屋に戻った。

 そして、歌劇場に行くために着替える。

 現在は軽装で動きやすい衣装をしている。


 冒険者として活動するには適しているが、歌劇場に行くなら相応の格好で行く必要がある。

 人間は、外見で判断される。場所に応じて服を変えるのは、己の身を守るために必要な事だ。

シオンたちは歌劇場に行くのに相応しい瀟洒な衣服に着替えた。


 シオンは、軍服に似た服だった。

 蒼色を基調として金の飾緒しょくじょがついている。


クレアは白を基調として、黄金の装飾がなされたワンピースドレス。


 ペイモンは、亜麻色を基調として、翠緑色エメラルドグリーンで装飾されたワンピースドレス。


 どれも、実家のヴァーミリオン伯爵家でペイモンが作った衣装である。


(見事な作りだな。ペイモンの才能は底知れない)


 シオンは感歎した。


 生まれついての才能というのは本当にあるのだと言うことがよく分かる。


「今回の服も素晴らしい。礼を言うぞペイモン」

「ペイモン、いつも素敵な服をありがとうございます」


 シオンとクレアがペイモンにお礼を言う。


「照れてしまうのですぅ~」


 ペイモンは頬をポリポリとかいた。 


 三人は歌劇場に向かった。


 席は特等席であるため、歌劇場に着くとすぐに案内嬢が、シオンたちを案内した。


「さすがに豪華だな」


 シオンが感心した。


 特等席は三階に相当する高さから舞台を見下ろせる位置にあった。


 個室になっており、分厚いカーテンと絨毯がある。


 赤いクッションが、背もたれと座についており座り心地が良い。


これなら、長時間座っていられる。


「ふかふかなのです」


 ペイモンが嬉しそうに椅子の上で尻を上げ下げする。


「舞台も客席も見下ろせます」


 クレアは特等席から身を乗り出して、舞台と客席を交互に黄金の瞳で眺める。


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