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討伐完了

 クレアとペイモンは屍肉騎士三十体を相手に善戦していた。 


 クレアは〈風霊の加護〉の弓で屍肉騎士を射倒し、ペイモンはアダマンタイトの細剣レイピアで屍肉騎士を次々と両断していく。


 瞬く間に、屍肉騎士十五体を仕留めた。


(心配はいらないな)


 シオンは一応、クレアとペイモンが苦戦するようなら援護するつもりでいた。だが、この調子なら楽勝だろう。


 俺の援護は必要ない。

牛頭怪物ミノタウロスが怒気の唸り声を上げた。


 牛頭怪物ミノタウロスは、自分との勝負によそ見をして、あまつさえも余裕でいるシオンに激怒していたのだ。


「悪いな。確かに一騎打ちの最中によそ見は無礼だ」


 シオンは謝罪した。

 そして、全身の魔力を斬撃に込める。

 シオンの長剣が、閃光のような速さで横薙ぎに一閃された。

 牛頭怪物ミノタウロスの首が切り飛ばされた。


 宙空に血の尾をひいて、〈牛頭怪物ミノタウロス〉の頭部が舞う。 四秒後、牛頭怪物ミノタウロスの巨大な首が地面のドサリと落ちた。


 牛頭怪物ミノタウロスは自分がいつ死んだか、理解さえできずに絶命した。 

 ほぼ同時に、


「やりました!」

「勝ったのです!」


 と、クレアとペイモンが喝采をあげた。

 クレアとペイモンは二人だけで屍肉騎士三十体を倒したのだ。

クレアとペイモンは互いに抱きしめ合って喜んでいる。

 シオンは丘の上から、その光景を見て、


「討伐完了」


 と呟いた。



シオンは、牛頭怪物ミノタウロスの戦斧と鎧兜。

 そして、魔晶石を収集して〈収納魔法〉に入れた。


 シオン、クレア、ペイモンは、その後、広間を歩いた。

 やがて、シオンが広間の奥で洞窟のような場所を見つけた。


「洞窟ですか……」

「真っ暗なのです」


 クレアとペイモンが、洞窟をのぞき込む。

 シオンが無言で、照明魔法を発動する。

 小さな光球が浮かび、洞窟の奥が照らされた。

 洞窟を進むと、人骨が所々に見えてきた。


「人の骨……」

「どうして、こんな深い階層にあるのですか?」


 クレアとペイモンが、疑問に思う。

 こんな深い階層にシオンたち以外の人間がこれるとは思えない。


牛頭怪物ミノタウロスが、配下の魔物に命じて、上の階層を徘徊する人間を捕らえて拉致してきたのさ」


そして、この洞窟で人間を喰ったのだ。

 やがて、洞窟の奥に金色の光りが浮かんだ。


「金貨……」

「お宝なのです」


 クレアとペイモンが驚いた。

 洞窟の奥の部屋に金銀財宝が積まれていたのだ。


 金貨、銀貨、宝石などが小山のようになっている。


牛頭怪物ミノタウロスは、金銀財宝を集める性癖があるんだ」


 これも牛頭怪物ミノタウロスが配下の魔物に命じて集めたものだ。

 シオンはザクザクと金貨を踏み越えて歩いた。

 そして、金貨の中に埋もれていた本を手に取った。


「本……ですか?」


 クレアが、興味津々といった感じて尋ねる。


「ああ、牛頭怪物ミノタウロスは知性がある。そして、何故か文字のあるモノを財宝と同じくらい好んで蒐集するんだ」


 シオンはクレアとペイモンに、本や石版などがないか調べるように命じた。

 3時間ほどで、78冊の本と、36個の石版、89枚の羊皮紙の束を見つけた。


「なんだか、迷宮守護者退治よりも、本探しの方が疲れるのですぅ~」


 ペイモンが、ふうぅ~、と息を吐いて額に浮かぶ汗を手でふいた。


「洞窟内にある本や石版などはこれで全部だと思います」


 クレアが断言した。クレアは掃除や捜し物が得意なタイプで、その事にいささか自信があった。

シオンは一つ頷くと、拾った本や石版をみた。

 装丁が豪華な本を開き、文字を読む。


 どうやら、地理学に関する本のようだ。

 稀少な文献である。


 次に石版を読む。

 こちらは魔法に関する石版のようだ。暗号で書かれている。


 シオンはスラスラと暗号文をといた。

 前世では国家機密文書の暗号文をよく取り扱っていた。

 この程度の暗号文なら簡単に解読できる。

 雷系魔法の呪文が書いてあった。

 魔法の呪文自体は、シオンには不必要なものだが、石版は稀少な資料である。蒐集する価値がある。

 シオンは満足そうに瞳を細めた。そして、クレアとペイモンを見て、


「とりあえず、終わりだ。ダンジョンを出よう。喜べ。俺たちは史上初めて、このダンジョンを攻略したぞ」


 と宣言した。 

 クレアとペイモンが誇らしげな笑みを浮かべた。

  



◆◆◆◆




 牛頭怪物ミノタウロスの集めた金銀財宝と、書籍類をすべて収納魔法で収集すると、シオン達はダンジョンを出た。


 そして、宿屋に戻り軽い夕食を食べた後、すぐに寝た。


 かなり動いたので三人とも夢もみないで熟睡した。


 翌朝、グライアの街の冒険者ギルドに行き、ダンジョンで倒しB級の魔物の素材を売った。


 冒険者カードに実績として記録してもらった。

 そして、シオンは祖父エルヴィンとビアンカに手紙を書いた。


 祖父もビアンカもあれで中々、心配性だ。こまめに手紙を送らないと心配するだろう。

 手紙の内容は、


『俺は元気にやっています。ご心配なく』


 という感じの他愛もないものだが、こういう事が意外に大事なのだ。


 クレアとペイモンも、ビアンカと仲の良かった使用人たちに手紙を書いた。シオンたちは手紙を冒険者ギルドに預け後、冒険者ギルドを辞した。


 シオンはグライアの街を少し観光してみた。 

 だが、思った通り、観光しても面白くなかった。


 観光名所と呼べる場所がないのだ。

 グライアの街は、ダンジョンを探索する冒険者たちの街だ。

 飲食店、酒場、娼館、宿屋、武器屋などは多数あるが、観光に適した街ではない。

 シオンたちは朝食を兼ねた昼食を取ると、宿屋に戻った。

 シオンは、宿屋の部屋の椅子に座ると、クレアとペイモンに告げた。


「城塞都市ライオスに戻ろう。ライオスなら少なくともここよりは観光に向いている」

「承知致しました」

「シオン様の仰せの通りにするのです」


 クレアとペイモンは即座に出立の準備に取り掛かった。

  






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