新しい武器
シオンは、クレアのために弓、短剣。
ペイモンのために細剣を作り上げた。
そして、シオンの長剣同様に、土魔法で鋼鉄製に見せ掛ける塗装をした。
クレアは弓と短剣を受け取り、ペイモンは細剣を受け取ると各自で試しに使ってみた。
「思ったよりも軽いのですね」
クレアはアダマンタイトの弓を持ちながら言う。鉄よりも軽いので扱いやすい。
「すごい切れ味なのです」
ペイモンは細剣で岩壁を切り裂き、その威力に驚いた。
ペイモンが、細剣で斬撃すると、岩壁が簡単に切り裂かれる。斬る際に抵抗を殆ど感じない。
細剣で岩壁を刺突すると、根元まで細剣が軽々と突き刺さる。
バターを斬るよりも楽に岩壁を斬ったり、突いたりできるのだ。
クレアは弓に弦をつけて、矢をつがえた。
シオンは弓に〈風霊の加護〉を魔法付与した。これにより、この弓で攻撃する際、風を司るの大精霊シルフの加護を受ける事ができる。
風の大精霊シルフの加護により矢の威力が増すのだ。
クレアは、矢を百メートル先にある岩柱にむけて放った。
同時に風霊の加護が、発動して矢の速度、威力、命中精度が向上する。 矢が閃光のような速度で飛び、岩柱に激突した。岩柱が爆破されたように吹き飛び、矢が貫通し、背後の岩壁に突き刺さる。
「軽くうったのですが……」
クレアはシオンの作った弓の威力に茫然とした。
付与魔法は術士のレベルに大きく左様される。
シオンのような最強の魔導師が付与すると、その効果は想像を絶するものとなる。
また、クレアの弓は弭槍となっている。
弭槍とは弓の両端に刃がついており、接近戦では斬撃することができるのだ。もちろん両端の刃もアダマンタイト製なので、攻撃力は非常に高い。
アダマンタイトは、精錬する術士の技量で、柔軟性をもたせる事も可能なので、クレアの弓は柔軟性と強靱さを併せ持つ一品となっている。
クレアは弓を何度も引いて試した。
しなやかに伸びて、しかも軽い。そして、刃は信じがたい程に強烈な切れ味をもっている。
「たまりません……」
弓が好きなクレアは、シオンがくれた弓にうっとりとした声をあげた。 良い武器や道具は人の心を魅了するのだ。
シオンは、他にも大剣、長剣を数本、槍、戦斧などをアダマンタイトで作り上げた。
武器の後は防具をつくり、鎧、胸当て、脛当て、盾をつくる。
武器も防具も見た目は鉄製に見えるように土魔王で塗装する。
シオンは鎧と脛当て。クレアとペイモンは胸当て、脛当てを装備する。
「武器や、防具の装飾はあとでペイモンに任せる。なるべく格好良くしてくれ」
「了解なのです」
ペイモンが張り切って答える。
シオンは作り上げた武器、防具とアダマンタイトの結晶を収納魔法でしまい込んだ。
その後、シオンは移動し金鉱を発見して、大量の黄金を手に入れた後、ダンジョンから出る事を宣言した。
ダンジョンの十二層で仮装用衣装をぬいでダンジョンを出る。
当初の予定通り、誰にも気付かれずにすんだ。
アダマンタイトの結晶などを持っているのを知られたら大騒ぎになる。
シオンたちはグライア街にある冒険者ギルドにむかった。
城塞都市ライオスの冒険者ギルドと比べると建物は小さいが、グライアの冒険者ギルドも、清潔で落ち着いた雰囲気だった。
「この街の冒険者ギルドも、なんだかちゃんとした感じですね」
「小説みたいに怖い人がいないのです」
クレアとペイモンが、やや不思議そうに言う。
小説や一般に流布されている冒険者ギルドとは、荒くれ者が昼間から酒を飲み、冒険者ギルド内で喧嘩をするというイメージがある。
「酒場がギルドにないからかもな。酒が入ると暴れる人間が多くなるものだ」
シオンが、ギルド内を見渡しながら言う。
だが、この方が冒険者ギルドの経営という観点からは良いだろう、とシオンは思う。
冒険者ギルドが荒くれ者揃いで、日々喧嘩沙汰が絶えない状態だと、冒険者以外の人間が入りにくい。
冒険者ギルドには、依頼をしにくる一般市民や、商人、役人も来るのだ。冒険者ギルドが、あまりに殺伐として治安が悪いと人の出入りが悪くなる。そうなれば、当然、冒険者ギルドの経営面にも影響がでる。
冒険者ギルドの経営陣は、それを考慮してるのかもしれない。
シオンは受付に行き、冒険者カードを受付嬢に見せた。
そして、B級以下の魔物の素材の買取をお願いした。
収納魔法を見られないように、素材はちゃんと革袋にいれてある。実際に回収した素材の百分の一ほどの量を受付嬢にわたす。
「確かに受領致しました。査定を行いますのでお待ちください」
受付嬢が一礼する。
30分後。査定が終わった。
報酬は、銀貨三十七枚、銅貨七八〇枚だった。
そして、冒険者ギルドに魔物討伐を実績として記録された。
(これで修行をちゃんとしていると祖父とビアンカに報告できる)
シオンは安堵すると、手紙を書くことにした。
クレアとペイモンにも手紙を書くように命じる。
祖父もビアンカも、便りが届けば安心するだろう。
冒険者ギルドでは郵便業務も行っている為、シオン達は手紙を冒険者ギルドに預けて、ヴァーミリオン伯爵家に郵送するように頼んだ。




