表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/50

仮面

 シオンは感知魔法で周辺に人がいない事を確認すると、変装用の仮面と衣装を身につけるようにクレアとペイモンに告げた。


 シオンが用心のために〈隠蔽魔法〉を発動する。 

 シオン達は、光を屈折させて透明人間状態になり、気配すらも隠して着替える。

 シオン、クレア、ペイモンは変装用の仮面と衣装に着替えた。

 シオンは純白を基調として銀で装飾された仮面。そして、黒を基調として銀色で装飾された衣装。


 クレアは、黄金の仮面。銀色と赤色の衣装。

 ペイモンは、亜麻色の仮面。翠緑色エメラルドグリーンの衣装。

デザインは、ペイモンである。


「これなら、誰にも正体がバレませんね」


 クレアが、楽しそうにクルリとターンして、自分の衣装を見る。ペイモンのデザインは素晴らしく、衣装が美しいので気に入ったようだ。こういう所はちゃんと女の子だな、シオンは思う。


「ペイモンは、本当に服飾の才能がありますね」

「ペイモンのお陰で良い衣装ができた。礼を言う」


クレアとシオンが、ペイモンに礼を言う。


「褒められると照れるのです」


 ペイモンは、頬を染めてモジモジと照れた。


(ここまで顔と体型を隠せば、正体がバレる事はないだろう)


 とシオンは考える。

 シオン達の超人的な戦闘能力が世間にバレたら、どうなるかは目に見えている。権力者達が、一斉にシオン達を招聘するだろう。


 そして、シオンたちを臣下として手駒にする。

 前世と同じく権力者達と断ち切れないしがらみが幾つもできて、おちおち旅行も出来なくなる。

 だから、戦闘能力を発揮する時はなるべく正体を隠すのだ。

 仮に権力者と交友する時が来たら、強さだけは秘密にしておく。それが、シオンの基本方針である。


 変装用の衣装がなくても隠蔽魔法で一応、姿を消すことはできる。だが、〈隠蔽魔法〉は一定の条件下で、発動できなくなる場合がある。

 戦闘中などは、隠蔽魔法を長時間維持するのは難しい時があるのだ。

 変装用の衣装は必須だ。


(しかし、本当にこれは良いな)


 とシオンはペイモンがデザインした衣装を見やる。

 年甲斐もなく胸が躍る。変身ごっこは、男の子の夢だ。

 仮面をカブるというのも、胸が熱くなる。

ふと、そう思惟するシオンは自分の精神に気付いた。


(俺は、なんだか前世よりも、精神年齢が幼稚になっているな……) 


 前世では三百歳まで生きて大往生したので、精神年齢は高いつもりだった。だが、精神年齢は肉体に引っ張られる。


 今現在、俺は十五歳の肉体で生きているから、少しばかり子供っぽい精神性が宿っているようだ。


(ま、それも悪くない。せいぜい仮装を楽しむとしよう)


『クレア、ペイモン。これから、ダンジョンの奥深くに潜る。そして、A級以上の魔物を狩る。同時に、ダンジョンの鉱脈を見つけて、稀少金属を採取し、武器を作るぞ』


シオンが念話テレパティアで、二人に話した。


『了解致しました』


 クレアが、答える。


『楽しみなのです』


 ペイモンが、ワクワクとした声を響かせる。 





 


 シオン達は、『奈落の迷宮』を疾風のような速度で駆けた。

 身体能力強化の魔法で、圧倒的な速度を出して、ダンジョンを走る。

 シオンは油断なく、感知魔法で人と魔物の双方を感知しながら進む。


やがて、シオン達は『奈落の迷宮』の現段階での最深部である十五層に到達した。


 ここから先の階層は、前人未踏の領域である。

 シオンが感知魔法で探ると人間の気配はなかった。どうやら、A級以上の魔物が、多数生息するこの階層はあまり冒険者が来ないようだ。


 シオン達は、A級以上の魔物の群れを鎧袖一触で蹴散らしながら進む。 やがて、十六階層に繋がる階段を見つけた。

 シオンを先頭にして、ダンジョンを降りていく。

 十五層から、十六層に一つだけ深い層に潜っただけだが、雰囲気が一変していた。

 立ち込める魔素が、格段と邪悪なものへと変貌している。


 十六層も岩と砂地でできた空間だった。

 トンネルのように幾つも道が枝分かれしている。

 その中の一つを無造作に選んで進む。

 通路は広く、幅は二十メートルはある。


 この階層にも、発光する苔が天井や壁に自生しているため、照明なしでも十分視界がとおる。

 やがて、シオンは感知魔法で、魔物を発見した。

 形状を探ると犬に似ている。


『魔物だ。〈双頭犬オルトロス〉が来るぞ。数は三匹』


 シオンは、前世の経験から得た直感で魔物を予想した。

 シオンの予想通り、双頭犬オルトロスが三匹、通路の影から姿を現す。

 虎よりも二回り大きい巨大な黒い犬型の魔物が、唸り声をあげる。

 オルトロスは、二つの犬の首を持ち、尻尾が蛇の獣型の魔物である。

 三匹のオルトロスは、赤い瞳に凶悪な光りを宿し、シオン達に殺意をむける。

 オルトロスの口が開き、巨大な牙が剥き出しになる。


「一人一体ずつ倒すぞ」


シオンが、剣も抜かずに気楽に言う。


「了解致しました」

「承知なのです」


 クレアとペイモンも、余裕な顔つきで答える。

 オルトロスはそれが、気に食わないのか咆吼をあげた。

 そして、シオンたち目掛けて、襲いかかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ