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奈落の迷宮

  二日後の昼。

 『奈落の迷宮』の周囲には街があった。

 『奈落の迷宮』に入る冒険者の為の宿屋や酒屋、武器、防具、魔導具マジックアイテムなどの店が並んでいる。


 街の名前は、『グライア』というらしい。

街には、冒険者が溢れていた。


 全身フルプレート鋼鎧メイルを装備して、斧で武装した者。

 剣、槍、弓で武装した者。魔導師の杖を持っている者。

 一目で冒険者と分かる雰囲気の者が多い。


(こういう所は、前世も現代も変わらないな)


 シオンは懐かしい気持ちになった。前世でも、こういう感じでダンジョンの周囲には小さな街が出来ていた。


 ダンジョンは、魔物を狩り、魔物の素材を回収して金に換えられる。稀少な金属も数多くあり、一攫千金を狙う冒険者や商人が群がるのだ。


 シオンは、街で中の上のクラスの宿屋に行き、箱馬車を預けた。

 そして、すぐにダンジョンにむかった。

 奈落の迷宮と呼ばれるダンジョンは、街の北部にあった。

 ダンジョンとは、魔素が濃く、魔物が多く住む場所の総称である。


 その形態は千差万別であり、突如として発生する自然現象だ。

 ダンジョンが発生する理由や原理はまだ解明されていない。

 ダンジョンの内部は亜空間となっており、内部は広大無辺の空間である場合が多い。


 シオン達が、ダンジョンの入り口の前まで付くと門があり、門衛がいた。冒険者たちから、ダンジョンに入る際の料金を徴収し、身分証明書を確認するのだ。門ではダンジョンの地図も売っていた。


 シオンは財布を取り出した。そして、門衛に銅貨30枚を渡した。一人銅貨十枚。シオン、クレア、ペイモンの三人がダンジョンに行くので銅貨三十枚になる。そして、銅貨五十枚で地図を買い、身分証明書として冒険者カードを提示して門を通過する。


 シオンの他にも冒険者たちが、30名ほどいた。

 シオンたちは順番通りに歩く。

 やがて、ダンジョンの入り口が見えてきた。


「これが、ダンジョンですか……」

「大きい穴なのです」


 クレアとペイモンの声には畏怖の響きがあった。


 直径一キロほどの黒い穴。そして、内部には階段があり、地下へと続いている。まるで地獄の穴のようだ。


シオンはクレアとペイモンが、緊張しているのを察すると、微笑を二人にむけ、


「さて、はじめてのダンジョンだ。楽しく遊ぶとしよう」


 と告げた。

 黒髪碧眼の少年の声にクレアとペイモンの緊張がとけた。


「はい」

「はいなのです」


 クレアとペイモンは元気よく声を出すとシオンとともにダンジョンに潜った。







階段を降りるとやがて陽光が途絶えた。そして、ダンジョンに自生している苔が発光し、妖しい光が照明の代わりとなる。


 シオン達は円形の巨大な広間に到達した。


冒険者たちが、たむろしており、武器防具を点検したり、仲間内で作戦を練っている。


 シオンが素速く視線を巡らした。


 広間の奥にいくつもの洞窟がある。


 枝分かれした道がいくつもあるのだろう。


 シオン達は立ち止まると、先程買った地図を見た。


 地図によると、この奈落の迷宮の最深部も全容も明らかになっていないそうだ。過去に最も深く潜った冒険者は、十五層まで到達したそうだ。


 一層から、十層までが、C級からF級の魔物が多く住むエリア。


 十層以下は、A級からB級の魔物が多数生息しているらしい。


『クレア、ペイモン』


 シオンが、念話テレパティアで言う。


『はい』

『はいなのです』


 クレアとペイモンも念話テレパティアで答える。


『作戦を告げる。俺たちはB級冒険者だ。よって、A級以上の魔物を狩ると目立ちすぎる。ある程度深い階層に行ったら、隠蔽魔法で姿を隠して行動する』


『はい』

『了解なのです』


クレアとペイモンが答える。


『B級冒険者として活躍する必要があるので、B級冒険者に相応しい魔物を倒して素材を回収して、冒険者ギルドに売るぞ』


 ダンジョンに潜るたけでは冒険者としての実績にならない。魔物を倒した証として魔物の素材を冒険者ギルドで売れば記録が残るので、実績として評価される。


 冒険者として活躍すれば祖父とビアンカが、喜ぶだろう。


『では下の階層に行くぞ』


 シオンが歩き出し、クレアとペイモンが続いた。







下の階層に降りる手段は階段と転移魔法陣の二つがある。


 シオンは転移魔法陣を選んだ。


 転移魔法陣の上に乗ると地下の階層に転移できるのだ。


 シオンたちは、一人ずつ魔法陣に乗って地下に降りた。


 岩肌が剥き出しの洞窟だった。


 シオン達は、岩の回廊を歩く。


 シオンが、探知魔法で周囲を探知すると、魔物の反応があった。


 シオンが碧眼を前方にむける。クレアとペイモンも前方を見た。


 巨大なムカデが、砂場の床を這っていた。


巨大ジャイアントムカデ(セントピート)〉である。


 巨大ムカデは、不気味な動きでシオン達を威嚇し、突如襲いかかってきた。


 シオンが、魔法を発動した。


〈火球〉の魔法が、巨大ムカデに炸裂し、燃えさかる。


 巨大ムカデは、一瞬で絶命した。


「素材を回収するにしても、もう少し高価なものにしよう。巨大ムカデは、買取価格が低すぎる」


 冒険者ギルドで買った魔物図鑑によると巨大ムカデの肝臓が売れるそうだ。だが、買取価格は銅貨五枚。これではヤル気が出ない。


「了解致しました。全てシオン様のご命令通りに」

「ムカデは気持ち悪いのです」


 クレアとペイモンが、黒焦げになった巨大ムカデを見ながら言う。


シオン達が進むにつれて魔物が数多く増え、シオン達に襲いかかってきたが、どれも買取価格の安い雑魚な魔物ばかりだった。


 シオンは肩をすくめて、もっと深い階層に行く事を決めた。

 





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