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城塞都市ライオス

誤字脱字がありましたら、訂正を宜しくお願い申し上げます。


八日後の早朝。

 シオンたちは、目的地である城塞都市ライオスに到着した。


 城塞都市ライオスは、人口7万人の中規模都市だ。

 『城塞都市』という名前からも分かるように周囲を城壁で囲んで防衛力を強化している。

 中央部には丘があり、この城塞都市を治めるライオス侯爵の住む城がそびえている。


「大きな城壁ですぅ~」


 ペイモンが、子犬のように身を乗り出す。巨大な城壁など見たことがない為、興奮している。


「本当に城壁で囲まれているのですね」


 クレアが、黄金の瞳に感心した表情を浮かべる。クレアもこんな大きな都市に来るのは初めてである。

 シオンは、瞳に微笑を揺らしながら馬を操った。


 城塞都市ライオスに入るには、通用門から入らなくてはならない。

 既に大勢が列をなしており、シオンは器用に箱馬車を操縦して列の最後尾に並んだ。

 順番が来ると、門番の兵士が、シオンに話しかけてきた。


「名前を伺って宜しいですか?」


 門番の兵士が、慇懃な口調で問う。シオンの物腰と雰囲気、そして高価そうな衣服と箱馬車を見て、それなりに身分が高い人物だろうと推察したのだ。


「シオン=ヴァーミリオン。ヴァーミリオン伯爵家当主エルヴィンの息子だ」


 シオンが穏やかな口調でいう。


「失礼ではございますが、身分を証明できるものはございますか?」


 門番兵が、やや緊張した顔をして問う。


「このネックレスで良いか?」


 シオンが胸元から、ネックレスを取りだした。

 ネックレスにはヴァーミリオン伯爵家の紋章である有翼獅子グリフォンの紋章が刻まれている。


 貴族は自分の紋章がついたネックレス、指輪、腕輪などを保有して、身分証代わりにするのだ。


「一応、本物かどうかの検査をさせて下さい」

「分かった」


 シオンが、ネックレスを門番の兵士にわたす。

 門番兵は兵士の詰め所に行き、すぐに戻ってきた。魔導具マジックアイテムで真贋を確認したのだろう。恭しい態度でシオンにネックレスを返す。


「シオン様。大変、失礼致しました。どうぞ、お通り下さいませ」


 門番兵が頭を下げ、同時に後ろにいる数名の兵士達も頭をたれる。

 シオンは手綱をあやつり、箱馬車を前進させた。








シオンが巨大な門をぬけて、城塞都市ライオスの大通りに馬車をすすませる。

 石畳の大通りは、人波であふれていた。

 人口7万人の都市だけあり、往来は活気に満ちている。


 露天や店が立ち並び、馬車が行きかっている。

 人間族に混じり、エルフやドワーフ、獣人などの亜人が、大通りを歩いている。


 人々の話し声、露天の商人の掛け声、馬車や馬の音、人間の足音が入り交じり、都市の生気があふれていた。


「凄い……」


 いつも冷静なクレアが、驚きを隠さなかった。


「今日はお祭りなのですか~?」


 ペイモンが、翠緑色エメラルドグリーンの瞳を丸くしている。

 クレアもペイモンも、こんな大勢の人を見るのは初めてである。ほとんど異国を見るような眼で、溢れる群衆を眺めていた。


「これがこの都市まちでは普通だよ」


 シオンが、両隣に座るクレアとペイモンに微笑ましい視線をおくる。


「取り敢えず宿屋の確保からだな」

「はい」

「了解なのです」 


 クレアとペイモンが、ほぼ同時にこたえた。



 


 宿屋は城塞都市ライオスの中央市街地にある中の上クラスの宿屋にした。金は結構ある。孫に甘い祖父エルヴィンから選別を貰ったし、魔人族フリードリッヒの秘密基地から収穫した財貨もある。


 本当は、街一番の高級な宿屋に泊まる事も可能だが、なんとなく旅のはじめから散財はしたくはない。

 宿屋は木造で、白いペンキで外装されていた。中々、小洒落ているセンスのいい外観だ。地球でいうと北欧風にちかい。


 シオンは箱馬車から、手提げの鞄を一つ持って箱馬車をおりた。クレアとペイモンも箱馬車からおりる。

 宿屋の店員に箱馬車を預けると、シオンたちは各々、手提げの鞄を一つもって部屋にいった。


「結構広い部屋ですね」


 クレアが、黄金の瞳で部屋を見渡した。

 部屋は5人は泊まれる広さがある。

 ベッドは三つ。清潔で良く掃除が行き届いている。

 シオンが、椅子に座るとクレアとペイモンも椅子に座り、三人でテーブルをかこんだ。


「さて、ちゃんとあるかな?」


 シオンが、鞄から書状を取りだした。

 祖父エルヴィンが書いた書状である。封蝋ふうろうがなされており、ヴァーミリオン伯爵家の有翼獅子グリフォン印璽いんじが施されている。


 この城塞都市ライオスの領主。ライオス侯爵への書状だ。

 シオンはヴァーミリオン伯爵家当主の孫である。同じ貴族でもあり、爵位が上のライオス侯爵に一言挨拶をする必要があるのだ。

 エルヴィンの書状の内容は、


『滞在中、私の孫であるシオンをよろしく頼む』


 という感じの他愛のないものだが、こういう些細な社交辞令が貴族間では大事なのだ。

 

「では、これからの計画をたてよう。まずはライオス侯爵に挨拶に行く。その後は冒険者ギルドに行く。その後、かるく観光したいと考えているが、何かしたいことはあるか?」


 シオンが、クレアとペイモンに尋ねる。


「シオン様のお望みのままに」

「美味しいご飯を食べたいのです!」


 クレアとペイモンが同時に言う。


「ペイモン、ご主人様であるシオン様のお望みを聞くのが、私達、近衛侍女の本分ですよ?」


 銀髪金瞳のエルフの少女が、ペイモンを諭すように言う。


「かまわないよ。俺も美味い食事をするのが、大好きだ」

「やったのです!」


 ペイモンが、両手で可愛らしく拳を固めて喜びをあらわす。


「もう、ペイモンたら……」


 クレアが困ったような、そして、可愛い妹を見るような表情でペイモンを見やる。


「では、ライオス侯爵への挨拶をする。美味しい昼食を食べる。その後、冒険者ギルドで冒険者の登録をする。まあ、このくらいかな? あとは時間があれば冒険をするなり、観光してまわればいい。適当にいこう」

「あの……、シオン様。恐れ多いのですが、もう少し計画をきちんと立てた方が宜しいのでは?」


 几帳面な性格のクレアが、シオンに問う。


「な~に、適当に生きるのも人生では大事なことさ。ゆとりがなければ人生はつまらないぞ」


 シオンが、クレアの美しい銀髪を撫でた。銀色の髪がゆれて、銀光を発する。


「はい……。その……シオン様が、そう仰るなら……」


 クレアはシオンに頭を撫でられてモジモジとし、嬉しそうに頬を染めた。





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