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〈冒険神〉エクトラ

 エクトラが胸を張った。


「われは〈冒険神〉エクトラ、天頂より灯もて導く冒険者の守護神! わが神名の下に、第一たる祝福をアンリ・ギルマスへ授けん!」


 俺の右手に、松明を象った紋章が浮かび上がった。

 祝福印。神に祝福を受けた者の証だ。

 神との相性が良く、かつ神の側に十分な力があれば、〈ギフト〉と呼ばれる特殊能力を発現することもある。


「わが剣と印にかけて、祝福にふさわしき生涯を誓う。神殿巫女アンリ・ギルマスの名は、〈冒険神〉エクトラに捧げられたことを宣する」


 周囲からの冷たい視線を感じる。

 人間関係や政治をまるっと無視していた俺が、いきなりポッと出てきて成果を持っていくのだから、腹立たしく思うのも当然だろう。


「ねーアンリ、わがはいカッコよかったか!?」

「そうだな」

「へへーん、神様だからなー!」


 それから残った儀式のもろもろを執り行い、〈降臨の儀〉を終える。

 そういうことで、俺は〈冒険神〉エクトラに仕えることになった。



- - -



「おにく……うま……」

「本当に生でいいのか?」

「生がいいのだ! あと、これ血の味がしなくて物足りないのだ!」

「……伝えておく」


 がしがし肉を食い散らかすエクトラを横目に、スケジュール表を確かめる。

 彼女は信者のいない木っ端の神だ。出席するべき行事はほとんどない。

 その時間の余裕を使い、なんとか信者を獲得しなければ。

 信仰なしに生きられる神はいない。


「今の時代に、”冒険者”への祝福か……」


 誰だって、自分にとって役立つ祝福をくれる神を信じるものだ。

 エクトラの祝福はいくつも効果があるが、メインは魔物相手の戦闘力増強らしい。

 ……問題は、この大陸に魔物がほとんど残されていないことだ。


「どうして冒険者は居なくなったのだ?」

「冒険者が増えすぎて、陸上の魔物が狩り尽くされた。海の魔物は手つかずだが、人間が水中で戦うのは無理があるからな。それじゃ冒険者は成り立たない」

「じゃ、じゃあ……わがはい、消えるしかないの……?」

「希望はある。最近になって、遠洋への航海が出来るようになったんだ」


 造船と魔法の技術が発展し、遠洋の危険な魔物にも対処可能になったおかげだ。

 魔物によって大陸に縛り付けられていた人類は、海の向こうへ渡れるようになった。

 今はまさに大航海時代の最中なのだ。


「海向こうの島や大陸なら、まだまだ危険な魔物が居るらしい。そういう場所でなら、冒険者の神にも需要がある。問題は、”冒険者”という存在を作れるかどうか……」


 ああいう開拓は、多少なり兵士としての訓練を受けた集団がやるものだ。

 彼らは冒険者の神より軍神を信じるだろう。向こうの方が神としての力も強い。


「どうしたものか……」

「心配はいらないぞ! アンリなら何とかするのだ! わがはいの下僕だからな!」

「下僕じゃない」

「そうだったのだー!」


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