読書好き、姫樹
(最近、虫増えたなあ)
歩道を歩いている天満姫樹は、大の虫嫌いである。
バッタやセミならまだいけるのだが、クモやハエなどは見ただけで発狂してしまうほど。
身長が5年生にして160を上回っているのに、バスケやバレーボールには興味を示さない。
そもそも、姫樹は運動全般が苦手だ。
懸垂も腕に力を入れるだけで終わってしまうし、基本中の基本である逆上がりすらできない。
(ま、逆上がりができたって、社会に出たら何の役にも立たないだろうし・・・)
姫樹の将来の夢は小説家なので、想像力と発想力さえあればできる仕事だ。
算数では、小数点の付け忘れなどで100点を逃してしまう。
が、国語のテストだけは毎回100点を取れるのだ。
文系である姫樹は、少し時間があれば本を読む。
算数の授業中もボーッとし、先生から注意されれば「私がボーッとしていたという証拠は?」ととぼける。
「なら、この問題の答えは?」と先生が計算の問題を指差すと、こっそり電卓で計算し、即答する。
荒々しく、喧嘩になるとすぐ暴力で解決しようとする。
まあ、姫樹の悪いエピソードを晒すのはここまでにしておこう。
姫樹は市立図書館に入った。
(今日はどの本を読もうかなあ)
伝記や推理モノ、恋愛モノなどは全て読みつくしてしまった。
でも、エッセイなどのノンフィクションでも、姫樹は満足なのだ。
(料理の本でも読もうか)
姫樹は、料理のレシピが書かれてある雑誌を手に取った。
(家庭科の授業が始まったばかりだし、丁度いいだろう)
姫樹は、小学5年生になるずっと前から、料理が好きだった。
(一番うまくできたのはスパゲッティかな)
最初のページを開いた姫樹は、驚いた。
(何だよ、この落書き)
『本なんか、読んでも意味が無い。本読んでる奴って、夢見がちな奴だけ。今の時代に本なんて必要ねえ。』
読書好きには言ってはいけない言葉だ。
(馬鹿な男子が落書きしたんだろう)
平静を装っているが、頭には血が上っていた。
(ちくしょう、字から読み取ると、松永の野郎が落書きしやがったな)
落書きされた本を棚にしまうと、姫樹は家に帰った。
(松永の野郎、許さねえぞ)
怒りの余り、姫樹は拳で机を殴った。
「どうしたの?」
心配そうに、姫樹の母は聞く。
「ほっとけよ、誰もお前に話しかけてねえんだからよ。」
「何よ、親に向かってその言い方。謝りなさい!」
「好きでお前の子になったんじゃねえんだよ。お前さあ、テストで70点取ったぐらいで叱るのおかしいぞ。クラスメートの美紀は50点で黒毛和牛だぞ、おい。」
「よそはよそ、うちはうち!」
「黙れよ。よそはよそなら、どうして私とよその子の成績を比べるんだよ?よそはよそ、うちはうちだろ。」
「それは別よ。」
「別じゃねえよ、バーカ。」
「姫樹っ、いい加減にしなさい!」
「もう話すな、お前は草でも食ってろ。私のことを理解してねえ癖に、説教するとかマジひでえな!」
姫樹は早足で2階に上がった。
(松永の野郎とタイマンしてやる!)
姫樹の口の悪さ、お許しください。
そういうキャラ設定なので。