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スライム狩りに夢中になり、薬草の採取を忘れるという失態を冒した明くる日。
いつものように目を覚ました俺はベットから起き出して、清々しい朝の空気を取り込むべく、窓辺に立つ。
最近は異世界へ来た頃よりも日の出が早くなってきており、季節が変わり始めたことを実感する。
部屋へ空気を取り込みつつ、寝起きの身体を伸ばしているとご機嫌にスキップを踏み、出勤してくるブリジットが視界に入る。
「あっ!転けた」
どうやらブリジットは足下に落ちていた小石を踏み、バランスを崩したようで手を地面に着いている。
そして、履いていたスカートの後ろは盛大に捲り上がり、白のカボチャパンツが丸見えになっていた。
ブリジットは恥ずかしかったようで辺りを見渡し、誰にも見られていないか確認している。
俺はサッ!と窓から身を隠す。
見る気はなかったがたまたま見えてしまったものは仕方がない。
それでもブリジットに見たことがバレれば、面倒なことにしかならないので壁に背を向けて息を潜め、気配を絶つ。
ゆっくりと100数えてからなに食わぬ顔でもう一度、窓から外を見る。
流石にそこにはブリジットの姿はもうなかったが朝からまさかのラッキースケベに戸惑ってしまう。
これも昨夜、LUK値にポイントを振った影響なのだろうか。・・・謎は深まる。
考えていても何も進まないので気を取り直して朝の準備を始めた。
◇
さて、今日も森に着いた俺は薬草採取を忘れないようにリーベ婆さんから念を押されつつも残り3種類のスライムも1000匹討伐を目指す。
昨日までの成果で俺のステータスはいい感じに伸びている。
名前:今井 りく
種族:人族
Lv:6
SP:0
ステータスポイント:0
STR:80
VIT:70
INT:100
MND:70
DEX:100
AGI:100
LUK:85
《スキル》
生活魔法Lv12/100
索敵Lv10/100
短剣Lv1/100
風属性耐性Lv1/10
水属性耐性Lv1/10
火属性耐性Lv1/10
土属性耐性Lv1/10
《ギフト》
女神の恩情
《称号》
スライムキラー【極】
本当は早く風魔法スキルを取得したいのだが我慢出来ずに新たに短剣術のスキルを取得してしまった。
後悔はしていない。
頑張れば、今日中に1種類くらいならまた1000匹討伐が達成出来そうなので気合いを入れて、採取&狩りに精を出す。
しかし、こういう時に限ってお目当てのスライムが出ない。
ひょっとしたら、エンカウントにも欲望センサーが付いているのかもしれない。
仕方なく薬草採取を頑張り、索敵スキルに新たな反応があるたびに確認をおこない、始末していく。
この森でスライム狩りを始めて、何度目の遭遇だろうか。索敵に反応があったので確認へ行ってみれば、金色に輝くスライム。
俺命名、「ゴールドスライム」が現れた。
距離は10メートルはあると思う。
いつもなら後一歩でも近付けば、ゴールドスライムの警戒エリアに入り、逃げられてしまう。
自分でもこの時、なぜこんな行動をとったのかわからなかったが何年経とうがこの時の自分を褒めてやりたい。
俺は近付けば、また逃げられるからと思い、足下に落ちていたいた石を拾い上げるとゴールドスライムに向かって投げつけた。
ステータスが上がり、プロからスカウトがくるレベルの豪球が真っ直ぐゴールドスライムに直撃し鈍い金属音を響かせる。
ガキンッ!!
「おっ!?当たった!」
投げておきながらコントロールには自信がなかったので当たったことに驚く。
石が直撃したゴールドスライムはその衝撃で転がり、木の幹にぶつかり止まる。
その光景を見つめながらふと違和感に気付く。
そうゴールドスライムが逃げ出さないのだ。
俺は考えるよりも先に駆け出し、まだ一度も使ったことのないダガーを抜き放った。
5歩で駆けつけて、ゴールドスライムの元へたどり着いてもまだ動かない。
俺の心がチャンスだと叫ぶ。
何も持たない左手でゴールドスライムを鷲掴みにすると焦るように逆手に持ったダガーで突いて突いて突きまくる。
ガンガンガンガンッ!
ガンガンガンガンッ!
ガンガンガンガンッ!
やはり、いくらチャンスだろうが俺の攻撃力ではダメなのかと思い始めた頃、ダガーの刃先がスライムに突き刺さった。
そして、左手の中のゴールドスライムは力が抜けるように溶け出して、魔石だけが手の平に残った。
「アハッ!」
自然とキモイ声が出てしまったが興奮で気付かなかった。
どれくらい経ったのだろうか。達成感に浸り、ずっとゴールドスライムの魔石を眺めていた。
「あっ!そうだ!ステータス」
我に帰った俺は早速、ステータスの確認を始めた。
名前:今井 りく
種族:人族
Lv:10
SP:20
ステータスポイント:40
STR:80
VIT:70
INT:100
MND:70
DEX:100
AGI:100
LUK:85
《スキル》
生活魔法Lv12/100
索敵Lv10/100
短剣Lv1/100
風属性耐性Lv1/10
水属性耐性Lv1/10
火属性耐性Lv1/10
土属性耐性Lv1/10
《ギフト》
女神の恩情
《称号》
スライムキラー【極】
ヤバイッ!レベルが一気に4つも上がっている。
「ゴ」
「ゴールド」
「ゴールドォスライム、サイコォー!!フォー!!」
俺の叫びは森に響き渡った。
後にわかったことだが称号のスライムキラーが有利に働き、今回はたまたま上手くいった結果であった。