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リーベ婆さんのご厚意により、住居を得た俺は旦那さんが使っていた部屋に案内されて落ち着くことが出来た。
この異世界に来て、間もない俺を気遣ってか、リーベ婆さんは夕飯が出来るまで部屋でゆっくりするといいと言って、戻っていったがその際に忘れることなく、旦那さんが書き残した日記も渡されている。
疲労感はあるがそれよりも早く、女神様から貰った《ギフト》の能力が知りたくて日記に目を通す。
◇◇◇
『もし、私と同じようにこの異世界に連れて来られてしまった日本人がいた時の為にここに私の人生と経験した事や役に立ちそうな事を日記に綴る』
『願わくはその者の目にこの日記が届くことを切に願う』
そこには馴れ親しんだ日本語で書かれていた。
◇◇◇
私こと、『ヤマダ タロウ』は××××年×月×日に勇者召喚に巻き込まれて、この異世界へと連れて来られた。
この日記に私は経験した事や私なりに調べて知った事、解った事等を書き記すつもりだ。
出来うるならば、役に立てて貰えると私も報われる。まだ、見ぬ巻き込まれし者よ。
まず、始めに私が調べた事は勇者召喚を実行した国だ。
その国の名はロンダール王国。
そう、私たちが今住んでいる国である。
調べて解った事だがこのロンダール王国は過去にも魔王に対抗する為だと言っては正義の名の元に勇者召喚を繰り返している。
実際に魔王という魔物達の親玉は存在し、過去にもそして、私が生きていた時代にも大きな戦があった。
そこで私が召喚に巻き込まれる原因となった勇者達が活躍をして、なんとか退けたのだがどれだけ倒そうと魔王や魔物達はいなくなることがなく、50年周期で活発になるそうだ。つまりは勇者召喚もその50年周期に合わせて行われている。
私は何とか日本へ戻る方法がないかと自分なりに調べ、供に召喚された勇者にも接触してはみたものの結果は芳しくない。
私では最早、手の打ちようがないがどうしても元の世界へ戻りたいのなら自分で調べてくれ。
ここで語るのはこの程度にしておくがもっと詳しく召喚について知りたいのなら大きな街の図書館に行けば、文献などが残っているだろう。
◇
次は基本でもあるステータスとスキルの関係について、話すとしよう。
ステータスとは自身の身体能力を表す数値であり、スキルは自身の技術力を明確にしたものである。
これは説明されなくても解っているとは思うが長年に及ぶ、冒険者達への聞き取りと身を持って検証した結果から推測出来たことを書いておく。
私が検証したことはずばり、スキルの成長速度とステータスの関係についてだ。
まずはSTR値を伸ばしていけば、『怪力』や『剛力』といったSTRに関わりのあるスキルが取得可能になりやすくなっていく。これは私自身で既に検証済みだ。
ちなみにレアなスキルほど、必要なSTR値は当然高くなっていくので注意が必要だ。
同じようにAGI値を伸ばしていけば、『俊足』や『逃走』といったAGIに関係するスキルを取得可能になりやすくなっていく。
これは冒険者達の間でも常識的な知識である。しかし、私にはここでひとつの疑問が生じた。
先程、述べた『怪力』、『剛力』や『俊足』、『逃走』はそれぞれSTR値とAGI値に依存しているが実際に使用する場合には体力や持久力がものをいうスキルでもある。
ならば自身で試すしかないと俊足を取得し、VIT値にもポイントを振ってみた。
結論から云おう、俊足のスキルレベルを上げたければAGIとVITのステータス値を伸ばして鍛えていければ、スキルレベルはAGI値にしか振らなかった時よりも上がりやすくなるのだ。
もう少し例を上げて説明しよう。
例えば、レベル1で剣術スキルを取得した状態で全てSTR値だけにレベルアップ分のポイントを振ったとしよう。
その場合、剣術スキルレベルはLv:50/100まで上げるのに一般的に約10年はかかると言われているがSTR値の他にDEX値にも振っていた場合、一緒に上げることで半分の約5年で上げることが出来るようになる。
解ってもらえただろうか。技術を要するスキルの成長にはDEX値が重要なのだ。
なので安易に特化型のような尖った育成を行うとスキル成長が緩慢になるのでくれぐれも考えてステータスポイントは振ってくれたまえ。
◇
ステータスとスキルの成長について、書いたのでついでに効率の良いスキルレベルの上げ方も紹介しておこう。
基本的にスキルレベルを上げる方法は2つある。
ひとつは繰り返しスキルを使用して熟練度を貯めてレベルを上げる方法とふたつめはSPを使用して、簡易的に上げる方法だ。
ひとつめは時間と労力がかかり、ふたつめの方法ではレベルに応じたSPが必要になる為、大量のポイントが欠かせない。
しかし、1レベル上がる毎に5SPしか貰えないのですぐに足りなくなってしまうのが問題だ。
だが、SPを獲得する方法が他にもあったら、どうだろうか?
実は冒険者達の間でもほとんど知られていないが覚えたスキルを消去することが出来る。
スキルの消去方法はステータスを開き、念じるだけでスキルを消去出来る。
ただせっかく覚えたスキルを消去して、それに何の意味があるかと思うかもしれないがスキルを消去する際にその時のスキルレベルに応じて、SPが還元されるのだ。
レベルが1なら1SP、10レベルなら10SPといった具合いだ。
しかも一度、取得可能になったスキルは消去した後でも再取得が可能でスキル欄から消えることはない。
つまり、前に書いたがステータスの振り方次第でスキルレベルの上昇を速めて、ある程度上がったスキルを消去することによっては大量にSPを稼げるのだ。
・・・そう、これは裏技である。
~~以下日記内より抜粋~~
次は召喚に巻き込まれた者が読んでいた場合、おそらくもっとも知りたいであろう女神からの《ギフト》についてだ。
我々は巻き込まれた存在な為、勇者達とは違う能力が授けられている。
私が授けられた《ギフト》の名前は『女神の恩情』。
効果のほどは魔物を種類別に1000匹倒すことによって、ステータスポイントが100ポイント貰えて、尚且達成した魔物の特性に合ったスキルをひとつ身に付けることが出来る効果がある。
1000匹倒すことは地味で時間は掛かるが後々、強力なアドバンテージになるはずだ。
そして、この『女神の恩情』の条件を効率的にこなす方法がある。
その方法とは魔物の解体作業だ。
魔物の解体作業は各街にある冒険者ギルドで魔物から素材を回収する為に必ず行われている。
そこで解体業務に勤しめば、安全に自身で魔物を狩るのと同等程度に数がこなせる。
自身の戦闘力に自信がなければ、ぜひ活用してくれたまえ。
◇
それから私が授かった《ギフト》は『女神の恩情』であったが女神様が同じギフトを授けてくれるかはわからないが共に『女神の~』と付く、ギフトを授かった場合はこまめに教会へ赴くといいだろう。
きっと為になるはずだ。
◇
最後に私のこの日記を読んで、少しでも希望を見出だしてもらえたのなら幸いだ。
もし、まだ見ぬ君と出逢えたならば、供に地球の日本のことを語り合いたいものだ。
長くなってしまったが私はこれからも更なる疑問に取り組もうと思う。
それでは・・・。
『ヤマダ タロウの日記2』でまた会おう。