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初めて、ゴールドスライムを倒した次の日。
昨日は結局、パープルスライムもブラックスライムもホワイトスライムともに1000匹討伐には至らなかったがレアなスライムを偶然にも倒してしまう快挙を遂げた。
ゴールドスライムの魔石は大変貴重な光属性で売るとなかなかの高値がつくとリーベ婆さんから聞いたが生憎、お金に困るまでは売る気はないが売り値が気になるのでこれまでの狩りで貯まった魔石を売り払うついでに村に仕入れに来ていた商人に聞いてみた。
青、赤、黄、緑色の魔石は1つ10Gでの買い取りだったがゴールドスライムの魔石を出した瞬間、商人は目玉が飛び出そうな顔をして、唾とともに勢いよく10000Gで売ってくれと言ってきた。
あまりに必死でさっきまでの態度と明らかな違いにちゃんとした場所で売れば、もっと高く売れるんだろうなと素人の俺でもわかってしまった。
そんな貴重な魔石だが光魔法を覚えられるかもと試してみたが案の定、俺には光属性の適性がなく、魔法の袋の肥やしになりそうだ。
まあ、いつか役に立つかもしれないので御守り替わりに持っておくことにする。
昨夜は嬉しくて、リーベ婆さんを自慢話に付き合わせてしまい迷惑そうな顔をされたが以前の長話のことを考えれば、お互い様だろう。
それよりも急遽、手に入った20ポイントものスキルポイントの使い道に苦慮し、さらに取得可能なスキルが増えていた為により俺を悩ますことになった。
現在、取得可能なスキルは以下だ。
『生活魔法』、『風魔法』、『採取』、『解体』、『索敵』、『隠密』、『回避』、『短剣術』、『投擲術』、『体術』の全部で10個だった。
苦心の末、風魔法を我慢して『投擲術』を取得することにした。
『投擲術』の文字を見た瞬間にこれは同じ方法でゴールドスライムが狩れるなと思ってしまったのだ。
そう、ゴールドスライムさえ倒せれば、またレベルが大幅に上がってすぐにスキルポイントが貯まるだろうという浅はかな下心に勝てなかったのだ。
この采配が吉と出るか凶と出るかは今日の狩りにかかっている。
ちなみに『隠密』スキルを覚えたのは昨日、ブリジットのパンツを見た後に全力で気配を消して隠れたからではないかと思っている。
さて、森へ向かうとしよう。
森に向かう途中、道端に落ちている石を拾い、魔法の袋へ収納する。
勿論、拾っている石は投擲用だ。
その際、ほどよい大きさで投げやすい形の石をチョイスするのがポイントだ。
とりあえず、10個程確保するとすでに森の手前まで来ていた。
森に入り、仕事を開始する。
普段通り、薬草採取をしながらもゴールドスライムが気になり、索敵に意識のほとんどを向けている為か、薬草採取に身が入らない。
それでも手ぶらで帰る訳にはいかないので足と手だけは動かして、手当たり次第に採取を行う。
「来たっ!」
索敵に反応があるや採取の手を止めて駆け出し、スライムの姿を確認する。
「ホワイトかよ・・・」
目当てのスライムではなかったが目的のスライムには違いないので狩っておくがせっかくなので投擲の練習をする。
魔法の袋に手を突っ込み、拾ってきた石を取り出す。
距離は3メートル。初心者の俺にはちょうど良い距離だ。
セットポジションに入り、振りかぶるとホワイトスライムに向けて、全力で石を投げつける。
投げた石は弧を描くことなく、地面にめり込んだ。
「・・・」
今のは単なるウォーミングアップだ。
俺はもうひとつ石を取り出すとセットポジションに入り、振りかぶりホワイトスライムに向けて、全力で石を投げつける。
石は勢いを殺すことなく、ホワイトスライムを突き抜けて魔石と共に森のどこかへといってしまった。
「これがオーバーキルってやつだな」
魔石まで何処かへいってしまうとは流石にやり過ぎたと思った。
「次からはもう少し手加減しないとな」
再び薬草採取に戻り、次の獲物が来るのを待つ。
その後、拾った石の数が半分になったところで体内時計が正午を知らせてきたがまだゴールドスライムには出逢えていない。
それにしても昨日に取得したばかりとはいえ、投擲の命中率が悪い。もともと、投擲の才能がないことはわかっていたが自分で思っていた以上の才能の無さだった。
これではせっかく投擲術を取得したのにスキルポイントが無駄になってしまう。
無駄にしない為には練習という名の努力しかないだろう。
幸い今日の分の薬草はすでに充分集まっている。
なので午後からは投擲術の練習をして、レベルを上げることに専念しよう。
そうと決めれば、後は実行するのみ。
近くにあった木を的にして、黙々と石を投げ出した。
この日も紫、黒、白色スライムの討伐数が1000匹を超えることはなく、シルバースライムにもゴールドスライムにも出逢うことはなかったが帰る頃には投擲術のレベルは7まで上がった。