第98話 心変わり
今日もよろしく!
昼食を食べ終えた俺は、早足で病院に向かう。
外に食べに行った俺が言うのも可笑しいが、梨絵を1人にしたくなかった。
病室に戻ると梨絵はベッドに腰かけ足を擦っていた。
俺の前では余り見せたことが無かった苦痛な顔をしている。
かなり痛そうなのが解る。
俺はどうする事も出来ないもどかしさで自分自身イラついている。
情けなくて悔しい。
…そんな俺は病室に入っても梨絵に声をかける事も出来ずに佇んでいる。
何て声をかければ良いのかも解らない。
ただ、大丈夫か?と言っても大丈夫な訳が無いのに大丈夫と答える子だから。
だから俺はそっと梨絵に近づいて、梨絵の足を擦ってやる。
俺が帰ってきたのに多少は驚いたみたいだが
「ありがとう」
と、さっきとは別人のような笑顔を俺に向ける。
その笑顔が俺にはもどかしく
「梨絵……痛いなら痛いとちゃんと言ってくれ…俺には隠し事しないでほしい……俺は梨絵と変わってあげる事は出来ないけど…梨絵の足になるから……梨絵の言う事は何でも聞くから…」
梨絵の足を擦っていた手を止めて、俺はそう告げた。
すると梨絵は驚いた顔をして
「勝弥君にはちゃんと言うよ。さっきはちょっと痛みがしただけだから。今はもう大丈夫…そんなに思い詰めたような事言わないでよ…」
と、やはり俺が予想していたように梨絵は平然を装っている。
「いい加減にしろ!」
病室だというのも忘れて俺は梨絵に怒鳴ってしまった。
でも今は本当に梨絵の事しか考えていなかった。
普段、温厚な俺が怒鳴った事で梨絵はかなり驚き言葉を失っている。
そんな梨絵に俺は続ける。
「どうして俺に隠すんだよ!俺がどういう気持ちで梨絵に接してるか解るか?俺は本当にお前の事が心配なんだよ!」
梨絵の足の上に置いた手を強め握りこぶしを作る。
「本当に…俺だけにはちゃんと言ってほしい…俺は梨絵の痛みが解るから…」
すると梨絵は目に涙を浮かべ
「ありがとう……でも…私…大丈夫だから………美代ちゃんと……仲良くして………こんな事で…勝弥君を縛りたくない……」
と。
自分の事よりも俺と美代子の事を想っていてくれる梨絵が愛しく見えた。




