第93話 不甲斐なさ
ども! 今日もよろしくお願いします。
あれから昌子さんに送ってもらい家に帰った。
帰り道の車の中では何も話さなかった。
否、喋れなかった。
この後、梨絵の足がどうなるのか解らないと言う医者の言葉を、信じたくない気持ちがお互いにあったからだった。
入院したとなると、俺と昌子さんは殆んど病院に付きっきりになる。
特に昌子さんは仕事もあって大変だろう。
俺も学校があるが、梨絵の為に転校した学校には特別な思いはない。少しは俺も梨絵の役に立ちたい気持ちがある。
全ての原因は俺にあるのだから。
家に入るといつものように美代子が食事の用意をして待っていた。
俺の雰囲気が違ったのか心配そうな声で
「何かあったの?」
と美代子が聞いてきた。
美代子に隠していても明日には解ってしまうので梨絵の事を正直に話した。
俺が全て話すと
「…勝弥君はどうするの?」
俺?
俺はどうしたいのか?
美代子に聞かれても答えられなかった。
昨日までは美代子とやっと結ばれたと思っていたのに……
梨絵の傍に居てあげても俺は美代子の事が好きだと再確認したのに…
もし、梨絵の足が最悪の場合はそれも叶わないのか?
家に帰ってからの俺は昨日とは違って浮かれた気持ちもなく、美代子とは会話も出来ずに眠りについた。
今は梨絵の足が良くなることを願う。
そして明日、昌子さんともう一度担当医に聞いてみよう。
俺には何も出来ないのだから。
霜が降りた次の日の朝、俺は梨絵の家に向かう。
昌子さんにもう一度聞く為だ。
朝練なのか学校へ向かう学生の姿やサラリーマンの人達の姿が何人か見える。
まだ早い時間帯なのでいつもの登校する時間よりは少ないが、それでも寒い手をポケットに突っ込みながら歩いている。
この人達には悩みがあるのだろうか?
と、ふと思う。
色んな人達が居て、色んな世界があって、色んな人生があって、色んな悩みがある。
皆、少なからず悩みはあるだろう。
それをどう解決するのか?
俺はどう解決すればいいのか?
梨絵と美代子に振り回されているのではない。
俺には悩みを解決するほどの勇気と経験が無いからだ。
と、今更ながら自分の不甲斐なさにがっかりしている。




