第89話 異変
勝弥視点に戻ります。
梨絵の手を引きながら学校まで向かった。
運よくHRには間に合い何とか遅刻は免れた。
冬に入った季節は制服だけだと肌寒い。
それは教室に入っても同じで、多少の暖房が入っていても冷たさを感じる。
多分、温かくすると眠気を襲ってくるのを避ける為だろう。
そんな事はお構い無しで暑くても寒くても学校の授業中には睡魔が襲ってくるのが当たり前だ。
だから何時ものように机に覆いさる。
軽い眠りにつく俺は朝の出来事を思い出す。
昨日は俺にとって人生で最高の日だったが、そのせいで梨絵の異変には気付かなかった。
引きずるように歩いていた足は当事者でない俺から見てもかなり痛そうなのが分かる。
当然、事故の後遺症だろう。
本来なら俺が気付いてあげるべきはずなのに…
有頂天な俺には無理な話しだった。
学校が終わって帰り道、また足を引きずっている梨絵に
「病院…行くか?」
と聞いてみた。
聞く前に連れて行く事は可能だが、自己主張が強い梨絵を強引に連れて行く事は出来ない。
「大丈夫だよ…」
少し息を乱しながら答える。
今は帰りの途中なので、朝と違って急ぐ必要はない。
でも辛そうに歩く梨絵を1人で歩かせる訳にも行かないので手を繋いでいる。
大丈夫と答える梨絵を心配しながら梨絵の家に向かう。
はっきり言えば大丈夫な訳がない。
歩くのも辛いはずだ。
でも、今の俺は梨絵の言葉を信じるしかない。
梨絵の身内でも彼氏でもないのだから。
梨絵の家に着いてリビングにあるソファーに座らせる。
冷蔵庫にあったオレンジジュースをコップに注ぎ梨絵に手渡す。
「ありがとう」
と梨絵は言ってジュースを一気に飲み干した。
足の痛みからくる疲れだろう、喉も渇いていたみたいだった。
ふと、足がどういう状況なのか気になった。
事故で入院した時は昌子さんが足をマッサージしていた。
俺の担当は腕だったが。
今は昌子さんが仕事でいない。
梨絵が良いなら俺が…
「足どうなんだよ?マッサージするか?」
俺はイヤらしさとかの意味では無く、純粋に良くしてあげたい気持ちだけで聞いてみた。
「……太いからヤダ」
痛いからとか恥ずかしいからとかでは無く、太いからと返事が帰ってくるとは思わなかった。
「……」
少し固まった俺はまた口を開く。




