第81話 唇
やっと…長かったです。
俺と美代子の間には殆んど距離は無い。
手を挙げれば触れてしまうほどに。
美代子はいつも俺に満面の笑顔を向けてくれる。
それは小さい頃から変わらずに。
そして俺の言葉を待っている。
一つ大きく息を吐いた俺は
「俺は梨絵が1人でも過ごせるようになるまで傍にいると言った。でも、梨絵に対しては恋愛感情はない。俺は美代子が好きだから」
ここまでは昨日言った事と同じだった。
だけどもう一度ハッキリさせる為には同じ事を言う必要があったからその後に続けた。
「これから先どんな事が合っても俺の傍にいて欲しい。今は傍にいる時間はあまり取れないけど、俺の気持ちは美代子だけだから。…だから付き合うとかもそうなのかもしれないけど…今は梨絵の傍にいなければいけないし…」
美代子は黙ったまま聞いていた。
「…なんか上手く言えないけど……でも、これだけはハッキリ言える。俺は美代子の事が好きだ。小さい頃から変わらないしこれからも変わらない!」
途中、何が言いたかったのか解らなくなったが、最後はハッキリと自分の気持ちを伝えられた。
「うん。私も勝弥君が好きだよ。」
美代子も昨日と同じ事を言う。
だけど、俺の気持ちが違ったせいか昨日とは全然違う感覚に陥る。
昨日聞いた好きと今日聞いた好きは意味は同じでも俺には美代子から初めて告白されたような感じであった。
緊張していた顔が揺るんでくるのが解る。
俺は自分の右手で美代子の左手を取り、引っ張る形で抱き寄せた。
ちょうど俺の胸の辺りに顔を埋める形になった美代子は下から俺を見上げる。
校舎の中から聞こえていた騒がしい声やグランドの砂を巻き上げる風の音も聞こえない。
お互いの心臓の音が聞こえてしまう程、時間が止まっているようだった。
そして一陣の風が頬を当てた時、今まで見つめ合っていた俺と美代子はどちらかともなく顔を近づけ初めて唇を重ねた。
どれくらいの時間が立ったのだろう。
実際は数秒間だったのかもしれないが、初めてキスをした俺にとっては物凄く長い時間に感じた。
上手く出来たのかは解らない。
でも俺と美代子は初めてキスをした。
これからの二人の出発点として…




