第64話 狭間
おはようございます。ではどうぞ!
黒板の前に立っている彼女は紛れもなく美代子だった。
久しぶりに見た美代子は髪を少し切っていたが、他は何処も変わらないままの姿で立っている。
周りを見渡すと男共は目がハートになっているし、女共は尊敬の眼差しで見ている。
無理もない。
美代子はへたなアイドルより可愛いと思うし、実際スカウトもよくされる程のレベルだ。
そんな彼女に自己紹介を担任が託す。
「愛川美代子です。色々あってこの街に来ました。幼稚園までこの街に居たので知っている人もいるかなと思います。よろしくお願いします。」
軽く頭を下げた美代子は廊下側の席に着く俺を見て微笑んだ。
その微笑みに勘違いした男共が
「お〜…俺に………」
そんな勘違い野郎はスルーして美代子は窓際に用意された席に着いた。
何故ここに?
考えるまでもない。
美代子はたぶん………
俺の為………?
休み時間にでも確認しようと考えていた。
甘かった……
今は一時間目が終わった休憩時間だが、終わると同時に美代子の周りには人だかりが出来ている。
男女の比率は半分ぐらいだが、人だかりで美代子の姿が確認出来ない程である。
教室の入り口である扉の前と廊下の窓際にも美代子を一目見ようと人だかり。
同学年の殆んどがこのクラスに集まっている程だった。
俺が転校してきた時はこんな事無かったよな?
今だにクラスに友達がいない俺は美代子に軽い?嫉妬を覚える。
クラスのヤツらと仲良くなりたい訳でもないが……
休み時間の度に美代子は身動き出来ないでいたので、昼休みにでも…と考えていた俺は美代子にメールした。
【色々聞きたい事があるから昼休み食堂で】
と。
質問攻めにあっている美代子からメールが帰ってきたのは授業が始まってすぐだった。
【解った】
俺と一緒でメールでは話したくないのか返信はシンプルに一言だった。
そして午前中の授業は美代子の事を考えてばかりいて殆んど身に入っていない。
多分、美代子が転校してきた理由は俺と一緒にいたい為…だと思う。
自惚れではない。
美代子は俺の事を好きだと言った。
約束も思い出した。
だから美代子はここに来たのだろう。
嬉しい気持ちが強いが、今の俺は美代子の気持ちに答えることは出来ない。
……………梨絵との約束があるから。




