第60話 理由
久しぶりに美代子視点です。
あの日…
あの告白した日から……
勝弥君とは会っていない。
帰ってからお母さんの
「どうしたの?」という質問にはずっと答えられなかった。
家にずっと引き込もっていたらいつの間にか夏休みも終わろうとしていた。
何回か緑や淳が来たけど、私には物足りなかった。
勝弥君がいないだけで……
冴えない気分のままいつものように淳の家に行く。
勝弥君と会ったらどんな顔をして接すればいいのか解らないし会話も出来るか解らなかった。
淳の家に着くとそこには緑しかいなかった。
淳が
「昨日話ししようと思ったんだけど……勝弥…転校したから…」
私が
「えっ!?」
と聞き返すと
「詳しいことは帰ったら教える」
淳が言った言葉の理解が出来ないまま私達は学校へ向かった。
LHRでも担任の先生から
「立川は転校した」と簡単に説明しただけだった。
中学とは違って高校に入ると辞めちゃう子も多くいる為、先生達もクラスの子もあまり感心がなかった。
それだけ高校のクラスがまとまっていないとも言うけど。
私は勝弥君と一緒に高校生活を歩みたかったからこの高校を選んだのに…
哀しみと怒りが交じっているように感じた。
学校が終わって三人で淳の家に向かう。
淳から勝弥君が転校した理由を聞く為に。
緑は淳から聞いていたらしいが私には教えてくれなかった。
親友に隠し事するってどういうこと?と思っていたら、学校が始まってから私に教えてくれと勝弥君が淳に口止めしていたと。
それにあの頃の私は何も考えられなかったし、見ていられなかったとも。
「何から話すか?」
淳が考えながら私に言う。
私はすべて知りたかった
だから
「全部。…淳が知っている勝弥君のことすべて!」
と言った。
淳は勝弥君から聞いた事を思い出すかのように、ゆっくり口を開いた。
「あの日…勝弥が携帯を買いに行った日、途中で小学校時代のクラスメイトに会ったらしい。…そこでしばらくその子と話ししたりしていたら、勝弥が車に轢かれそうになった。だけどその子が助けてくれたお陰で勝弥は無傷に済んだらしいが、その子は逆に怪我をして、後遺症もある…と。だからその子の傍にいる為に転校するって……こんな感じが理由」
私は理由を聞いて愕然とした。
どんな理由が有っても勝弥君は私の傍にいてほしい。
勝弥君がどんな答えを出しても私は勝弥の傍にいる。
私は勝弥の傍にいる自分しか見えなかった。




