第52話 夏の終わり
評価よろしく!
病室で三人佇んでいると
笠原が
静かに
目を開けた
俺達を見て、必死に口を動かしている
何を言っているのか解らないが
俺は笠原の手を握り
「ありがとう」
と声をかけた。
助けてくれてありがとう
生きていてくれてありがとう
目を開けてくれてありがとう
すべての想いをこめて……
彼女は黙って頷いてくれた。
しばらくすると笠原のお母さんも来て、彼女と少し話ししている。
話しといっても彼女は器機に邪魔されて話しすることは出来ないので頷くだけだが、理解は出来るようだった。
先生が言うには、目を覚ましたが色々検査してみなければ解らないと言う。
しかし、彼女が目を覚ましたのは事実であり、彼女が生きているのは紛れもない真実であった。
その後の……過程は関係ない。ただ、先にあるのは結果だけである。
受け取めるのは彼女自身で支えるのは俺。
それ以下でもそれ以上でもない。
この時の俺はそう考えていた。
笠原が目を覚ましてから1週間が過ぎた。
彼女の回復は思ったより早く、心配された傷害も見られなかった。
ただ、話しする時は軽い言語傷害が見られる。はっきりとは聞き取れない程度ではあるが、問題はない。
そんな彼女とは久しぶりに会ったあの日と同じように戯いもない話しをしているが、俺はまだ聞けないでいる。
どうして俺の事を助けてくれたのか……
彼女が取った行動からして俺は大体理解出来る。
もし、自分の大切な人が同じようになっていたら…
俺が美代子で、笠原が俺だったら……
俺も同じような行動を取っていただろう。
だから聞けないでいる。
もし、笠原がまだ俺の事好きだと言っても……
俺は彼女を支えると心に決めている。
しかし、支える事と愛することは違う。
笠原の事を好きになれない俺が彼女を支えられるのだろうか?
俺は笠原を好きになれるのだろうか?
美代子以上に………
暑かった夏休みも終わりを向かえようとしていた。




