第107話 雲
おはようございます。評価、感想よろしく!
病院の車が家に着き梨絵と一緒に乗り込んだ。
車の中から外を見上げると今にも雪が降りそうな薄暗い雲が架かっていた。
この街は比較的暖かい地域な為、雪が降っても積もる事は少ない。
しかし今日の天候は大雪を降らせるかのような厳しい寒さと雪雲で覆っていた。
病院に着くと看護婦さんに案内されていつもの検診とリハビリを受ける。
もう何度も通っているこの病院では看護婦さんや担当医師意外の医者とも面識は深くなっている。
当然のことながら俺と梨絵の関係はこの病院ではちょっとした噂になっている。
梨絵の傍にいる為に学校を辞めた俺の事を美談として病院中に伝わっている。
だからここの病院の医者達は俺達の事を本当に良くしてくれていた。
梨絵の診察中などで待ってる間、休憩中の看護婦さんが一緒にお茶しようと誘ってくれたり、身内では無い俺が梨絵の診察に一緒に入らせてくれたりと都会の病院では考えられない事をしてくれていた。
その行為自体は法に触れるのかもしれないが、俺にはここの人達の優しさが十分に伝わってきた。
もし梨絵が事故に会わなかったら感じる事の出来なかった優しさ。
俺はこの優しさに触れた時、美代子と別れてから身体中に溜まっていた醜心が離れて行くのが感じた。そして人と人はこうやって繋がって行くのだと再確認をした。
リハビリが終わると何時もは散歩の意味も込めて俺が車椅子を押しながら帰るのだが、今日の天候だといつ雪が降ってくるか解らないので病院の車に甘えようと提案すると
「…やだ。雪の中で歩きたい…」
滅多に降らない雪を身体で感じたい梨絵の言うことを聞いてあげたいが、もし大雪になった場合、俺1人では車椅子を押せない。
ましてや梨絵の身体は1年前に比べれば体力的にも相当弱くなっている。
そんな時に風邪など引かれたら。
思ってはいた。
感じてはいた。
梨絵が俺の言うことなど素直には聞かないってことは。
俺は深い溜め息を尽きながら病院の外に出て、昼間だというのに真っ暗くなっている空を見上げながら、いつもよりも強めに車椅子を押し始めた。
前には同じように空を見上げ、早く雪が降って来ないかなと楽しそうに笑う梨絵がいる。




