第105話 1年
おはようございます。
1年間もの長い間、美代子の姿も声も聞いていない。
触れたいと思っていても触れられない。
会いたいと願っても会えない。
自分が決めた事なのになんて理不尽なのだろうか。
今、美代子がどう思っているか、何を感じているかは美代子にしか解らない。
あの日以来、淳とか向こうの街の友達とは一切連絡を取っていないので美代子の現状は解らない。
俺の事なんか忘れてしまっているのか?
美代子に相応し彼氏でも出来ているのか?
全ては謎で、真実を知ようとも知る事の勇気も俺には無い。
美代子が今、幸せなら…
久しぶりにバイトが休みの日の夜はこうして海を眺めながら美代子の事ばかり考えている。梨絵の前では決して見せる事が出来ない表情で。
この日確認したのは俺はやっぱり美代子が好きだと言うこと。
忘れることが出来ないこと。
美代子に幸せになってほしいこと。
携帯を握り締め美代子から連絡が来ることを期待している。
知りたい。
今、美代子が何をしているのか?
何を感じているのか?
少しの勇気で全て叶うのに今の俺にはそれさえも持ちあせていなかった。
冷たい海を背に家へ向かって歩き出す。
砂浜を歩く度に濡れた足に砂がつく。
一歩一歩砂が絡みつく度に足取りが重くなっていくのが感じる。
それはあの日美代子と別れた日にも感じた重さだった。
家に入りこれも毎日の日課である明日の確認をする。
明日は朝から梨絵の検診があるので、いつもより早めに行かなければいけない。
病院の車が梨絵の家まで迎えに来てくれて、車の乗り降りも車椅子ごと出来るようになっていてる。
便利な世の中になったなと思えばそれほど身体の不自由な人が多くなったのだろうとも思う。
梨絵もその1人だが…
身近にそういう人がいる気持ちがこの1年で分かったような気がした。




