第104話 巡る
ちょっと飛びます。
この場所から始まった恋はここで終わった。
季節は過ぎてまた寒い冬の季節となった。
あの日から1年が過ぎ俺は今、小さい頃から変わらない砂浜に降り立っている。
当たり前の事だが隣に美代子は居ない。
俺の為に転校してきてくれた美代子は俺のせいでまた元の学校に戻って行った。
あの後、何か言いたそうな美代子の言葉を俺は遮断した。
自分なりにケジメを付けたつもりだったが1日足りとも忘れる事は出来なかった。
今もこうして思い出しているのだから。
梨絵と居るときには表情を悟られないようにしているが1人の時は寂しさが溢れ出てくる。
どうしようもないほどの愛しさが。
波は同じペースで砂浜に何度も何度も打ち付けてくるが、あの日海に返した貝殻は2度と帰ってくることは出来ない。
それは俺と美代子の関係を写しているかのように。
後悔と言う言葉が使えるなら使いたい。
それほど美代子の事を愛していたと確認するには十分な時間だった。
あれから梨絵の足は悪くなる一方で今では車椅子の生活を余儀なくされていた。
どうにか切断は免れたているが殆んど動かせない状況になっている為、少しでも筋肉などをほぐさないと切断する事になっていた。
痛み止めの薬も手離せず家や街中では不自由な生活を強いられている。
俺は学校を辞め夜のアルバイトをして昼間は梨絵と居る生活を送っていた。
そんな俺にこの街で唯一の友達である友美やヒロは何も言わない。
否、美代子がここを離れる時は物凄い勢いで怒られたが、勝弥の好きにしなと言われた今では昔から変わらない俺の親友達だった。
高校2年となった友美達の生活も変わらない。
唯一上げるとするとこの間の進路調査でヒロは漁師、友美は花嫁修行を出したそうだ。
この二人には些細な喧嘩などしても変わる事の無い永遠の愛がある。
俺には、俺達には叶えられなかった約束が。
いつのまにか潮が満ちてきて波打ち際に居た俺の足を濡らし始めた。
冷たい海水が足から全身に巡って寒さが身にしみる。
真冬の北風のせいでは無い。
それは隣に美代子が居ない寂しさからくる寒さだった。




