第103話 別れ
では、どうぞ!
俺が何か言いたそうな顔をしていたのか、美代子は俺に話しがあるんでしょ?と訪ねてきた。
どう切り出そうか悩んでいた俺にとっては好都合で短く返事した後、俺達は砂浜に降りて行った。
真冬となった季節は潮の香りの強さより凍えるような北風の方が強い。
辺りを見渡すと騒がしい夏の夜の浜辺とは違い俺達以外の人影は見あたらなかった。
この浜辺には思い出がいっぱいつまっている。
その全てを今にも壊そうとしていた。
波の音しか聞こえない波打ち際で俺はゆっくり口を開く。
「…今更だけど…やっぱり俺は梨絵の傍にいなければいけないんだ。多分…梨絵の足は相当悪い…元々の原因が俺だからとかではなくて…このまま美代子と一緒に居る訳にはいかない…」
相変わらず上手く言えない俺は美代子にはっきりとは伝えられなかった。
そんな口ベタな俺の言いたい事がある程度は伝わったのか
「この間も聞いたけど勝弥君はどうしたいの?勝弥君次第なんだよ?」
そうなんだ。俺次第なんだ。
ハッキリと言わないとまた同じ事の繰り返しだ。
「……俺は………俺は梨絵を守って行く。だから美代子とは一緒に居られない!」
冷たい風が吹くなか今度はハッキリと伝えた。
「それって、私と別れる…って事?」
俺達の関係は付き合っていたのかいないのか解らなかったがキスもしたのだから一応付き合っていたのかな?
だとしたらこれからの為にも…
「あぁ…」
また短い返事を返した俺は美代子の顔を見上げる。
泣き出すのかと思っていたら何か想いついたような顔をして
「だから昨日言ったでしょ?梨絵ちゃんが治るまで傍に居ても良いし、私も傍に居るよって…だから…」
「それじゃ、ダメなんだよ!」
美代子の話しを中断させて俺は大声を張り上げた。
「…それじゃ何も変わらない……俺達は一緒に居ちゃダメ…なんだよ」
「………ここで始まったんだから……ここで終わりにしよう」
今度は波の音に書き消される程の声で美代子にハッキリと伝えた。
それは静かな海に二人の哀しい呼吸音が重なりあった時だった。




