第99話 もし…
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こんな時にでも俺達の事を想っていてくれる梨絵が可愛いらしい。
梨絵の前で片膝付いていた俺は、静かに立ち上がりそのまま前から梨絵を抱き締めた。
そして
「俺と美代子の事は梨絵には関係ないから…梨絵は…今は足が治る事だけ考えていてくれればいい…きっと…必ず良くなるから」
と言い、梨絵の背中に回した手を少し強めた。
しばらく呆然としていた梨絵は
「うん。ありがとう」
と言った梨絵は俺の背中に手を回し顔を胸に埋めた。
時折梨絵の頭が上下している。
多分、泣いているのだろう。
俺は梨絵の顔を少し上に持ち上げ、梨絵と視線を合わした。
やはり目には大粒の涙を溜めている。
そっと涙を拭いた俺は
「落ち着いたか?」
梨絵に聞くと
「もう少し…いい?」
と、少し俺に微笑み返してまた胸に顔を埋める。
どれくらいの時間、抱き締めあっていただろう。
異性と抱き締め合うと本来ならイヤらしさを感じるが、今は全くそんな気持ちは無い。
ただ純粋に梨絵を守りたい気持ちでしか無かった。
しばらくすると梨絵は顔を上げて
「一つだけ聞いてもいい?」
俺に質問する。
何の事か全く検討が付かなかった俺は
「いいよ」
と簡単に答える。
俺を見上げる格好になっている梨絵は
「もし……もし、私が事故に合っていなかったら勝弥君はどうしてた?」
「どうしてたって…俺が事故に合ってたんじゃないの?」
梨絵の質問の意味が解らない。
梨絵は俺を庇って事故に合ったのだから、俺を庇わなければ事故に合っていないのは誰に聞いても解っている事だ。
「そうじゃなくて……あの時、私も勝弥君も事故が無かったら…勝弥君は今頃どうしてたのかな?って…」
やっと質問の意味が解った俺は
「………」
答えられなかった。
もし、事故が無かったら俺は此所には居ない。
否、この街には居ない。
多分……
前の学校で淳や美代子なんかと仲良く過ごしていたハズだ。
梨絵の事も特に気にしていなかったハズだ。
ただ、昔の同級生に会ったぐらいでしか。
何も答えられない俺に梨絵は
「変な事言うけど…私やっぱり事故に合って良かったのかもね」
と笑いながら俺に言った。




