2.好奇心の代償
夜になった。
俺は少し必要なものが出来たため、近所のコンビニに向かっている。
近所とはいっても、アパートからはそれなりに距離があった。坂を下って、ちょっとした雑木林を抜けて、角を曲がったところにようやくある。
需要と供給の問題とはいえ、もう少し近くにあってほしいものだ。
「……とは思っても、仕方ないんだけど」
やれやれ、と。
ため息をつきながら薄暗い道を歩く。
薄い雲がかかり、月明かりが朧気に照らし出すそんな中。俺はようやく雑木林に辿り着いて、そこを通り抜けようと足を踏み入れた。
その時だ。
なにか、違和感があった。
「ん、なんの音だ……?」
視界が判然としないために鋭敏になった聴覚に、なにかが届く。
それは生い茂った木々の中から。水の滴るような、それでいて生々しさを感じる、そんな音だった。若干の薄気味悪さを覚え、俺は少し足早にそこを抜け出す。
そして、コンビニの前まできて振り返った。
なんだったのだろうか……。
「まぁ、いいか。とりあえず買い物……」
そう考え直して、俺は手早く用事を済ませる。
だけど、そうすると自然に雑木林を通るのが早まるわけであり、俺は小さくうめき声を発しながらその手前で足を止めた。
どうするべきだろうか。
ここを通らなくても、アパートには帰れる。
でもその代わり、時間が倍以上必要となるのだった。
「いや。うん……田舎だし、なんか動物がいたんだ。そうに違いない」
しばしの沈黙の後に、俺はそう結論付ける。
大丈夫だと、そう自分に言い聞かせて。
俺は雑木林へと――。
「………………」
好奇心だった。
不意に足を止めて、俺は音の聞こえた方向へと目をやる。
そして、おもむろに歩をそちらへ。心臓が早鐘のように鳴っているが、それでも足は止まらなかった。引き返すべきだと、そんな警鐘が頭の中にも響く。
それでも進んでしまったのは、やはり好奇心以外の何ものでもない。
恐怖心とない交ぜになったそれに、唾を呑み込む。
レジ袋を持った指先が震えた。
緊張が身を包む。
「この、辺りだよな……」
だんだんと濃くなる闇に、呼吸を乱しながらも俺はそう口にした。
先ほど音が聞こえたのはたしか、この辺り。そこは一際大きな樹が立つ、雑木林の中心だと、そう呼べる場所だった。
そこで俺は、不意にあることに気付く。
「足元が、濡れてる……?」
なんだろう。
地面が何かしらの水分を含んでいる、そう思えた。
じっとりと土に染み込んだそれを踏みしめて、スマホを取り出し確認する。
「――――――――」
そして、それを見た。
見て、しまった。
「はっ……!」
思わず空気の塊を呑み込み、言葉を失う。
息が出来ない。痺れていく頭の中に、よみがえるのは奈津子の言葉だった。
『遺体は全部――』
――やめろ。きっと、後悔する。
でも、もう手は止められない。
俺はスマホをそれにかざし、しっかりと確認してしまった。
『全部、喰いちぎられているらしいから』
今日は都合により、この一話の更新かな。
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