事故と転生
その日はいつもと少しだけ違っていた。
違っていたとしても『星座占いで一位を取った事』や『朝食に使う卵が双子だった』と言った些細な事である。
そんな些細な”出来事”を感じながら在り来たりな人生を歩んでいるアラサー女子である。一人暮らしで彼氏いない歴=年齢である。ほっとけ。
仕事がカレシだ。異論は認める。
そんな私に後輩は言う。
『先輩は彼氏や恋人作らないんですかー?
できたら人生楽しくなりますよ!』
いや、これが十分に楽しいんだな。
独り身をしている私に後輩はいつも恋愛談を聞かしてくれる。正直、有難迷惑というやつだが、悪い子じゃないので半分の耳で聞いていたりする。
『先輩聞いてますか!』
『うん、聞いているよ』
ジューと紙パックを飲むと「先輩のいけずぅ!」と叫ばれた。
だって君の噺は長いから、話を聞いていられないんだ。すまんね。
『もう、先輩ったら。』
と言って笑う後輩、本当にいい子だな。
きっと、恋人さんはいい人だろうともし泣かせるようなことになれば天誅をしなくてはならない。と思いながら交差点を見た時、
――――猛スピードで走るトラックが目に入り、その先にいたのは少年だった。
『先輩!?』
考えるよりも先に体が動いた。
その勢いで、轢かれそうになっていた少年を突き飛ばして――――、
『先輩――――っ!!!!』
後輩の叫び声があたりを響き渡らせた。世界がスローモーションに見える。
少年の代わりに轢かれてしまった。体が痛いなぁ。こんな所で終わるのかぁ。やりたいことまだあったのに。
まあでも子供の命を救ったと思えばそれでいいか。そういえば、少年はどうなったんだろう。
「ねぇ」
おお、君は助けた少年ではないか。よかった無事だったか。
それにしてもごめんね、急だったとはいえ突き飛ばしてしまってすまなかったね?
「どうして助けたの。」
どうしてって、目の前で轢かれそうになっている人を見たら、助けるモノ。と思ってるからね!
そんな質問を投げかけた少年の前に後輩が泣きながら現れた。
『先輩っ!先輩!すぐ救急車が来ますから・・・っ!』
泣かないでよ、君が泣いたら悲しくなるよ。
あぁ、体中が痛い・・・。それに意識がどんどん、遠のいていく・・・。
『・・・幸せになってね。』
『先輩・・・!!!』
最期の力を振り絞り、後輩に伝えた。
―――そして『土江蒼依』はその時死んでしまったのだ。
「うん、彼女にしよう。」
と彼女が助けた少年が呟いた事に誰も気づかなかった。