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プロローグ
「くふ、くはっ、あははは!!!」
狂ったような笑い声。
女神のよう、と称されるに相応しい美しい顔が狂気に染まる。くるくると渦巻いた豪奢な金糸の髪を揺らし、甲高く哄笑する。「神が与えし宝石」と称された美しいエメラルドの瞳は暗く澱み、もはや何も写してはいない。
「この私を選ばず、その程度の女を選んだこと、せいぜい後悔なさればよろしいわ。──様」
──そこで、はっ、と目が覚めた。
「今のは……」
呪いのような言葉を吐いた女性に、見覚えがあった。というよりも、エンディングだ。私が昔やっていた乙女ゲームの最後の一幕。そして、狂気を感じる高笑いをした女性は、私の十年後の姿である。ヒロインのライバル役、つまり悪役令嬢と呼ぶ立場であり、名実ともに学園トップの令嬢だったエスメラルダの終焉であり、プレイヤーに対してその存在を強烈に意識させた最後の場面でもある。
「……いやぁ……ないわぁ……」
私がエスメラルダだなんて、人選ミスにもほどがある。