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脂肪銀行   作者: ハロ
8/13

8話 お引き出し。

「ご利用ありがとうございます。本日は、私、竜崎 和美が担当させて頂きます。」

「真面目 朋子です。宜しく。」

「ご丁寧にありがとうございます。」

竜崎は微笑む。そして、受付用紙を取り出した。


「今日はどの様なご用件でしょうか?」

「あの、借りたいんです。」

「お引き出しですね。お客様は、ここは初めてのご利用でしょうか?」

「はい。」

「では、こちらの用紙に、

必要事項を記入お願いします。」


お引き出し 新規

名前 真面目 朋子

年齢 25

性別 女

体重 38kg

年収 250万円

借金 0


「これを。」

書き終え、記入用紙を渡す。竜崎は、それを見てパソコンを操作する。


「真面目様。

今回は、如何程脂肪をお引き出しされますか?」

「5kgでお願いします。」

「5kgですと、10日で200g脂肪を受け取るか、1000円受け取るかを選択出来ます。どうされますか?」

「選らばなくてはいけませんか?」

「いえいえ、保留も大丈夫ですよ。その場合、ポイントとして還元されます。」

「ポイント?」

「はい。ポイントは、1ポイントから交換可能です。脂肪か現金かをその時に選べますよ。」

「えーと、それでお願いします。」

「はい。分かりました。ポイントは、沢山集めると豪華景品と交換可能です。宜しければ狙ってみては如何でしょうか。」

「分かりました。」

「では、この書類に判子を押して下さい。」

竜崎に言われるがままに、判子を押した。

「では、暫くお待ち下さい。」

インカムで、竜崎はボソボソと何かを言う。


ガチャリと扉が開く音がした。小太りの女が姿を現す。

「では、ご用意しますね。真面目様は、お腹を出すようにして、服をお捲り下さい。」

「え?分かりました。」

竜崎は机を開け、ラバー吸盤を取り出す。そして、ラバー吸盤を頭上に掲げた。

「てい!」

ラバー吸盤を女にくっ付けると、脂肪が吸い取られた!そして、真面目にくっ付ける。すると、ガリガリだった体型は、少しふくよかになった!だが、まだまだ痩せている。


「こ、これは!?」

「そちらに姿鏡が有りますので、

ご確認されては如何でしょうか?」

真面目は、自分の姿を見た。これが私?肌に貼りがあり、カサカサだった皮膚は潤っている。痩けた頬は、ぷっくりと膨れて、もうスフィンクスとは言わせない。


「どうですか?ご満足頂けましたでしょうか?」

「は、はい!!」

「お引き出しの場合は、こちらに来て頂く事は不要です。脂肪を返却したい場合、ポイントを交換したい場合は、当社にお越し下さい。」

「分かりました!」

「では、説明は以上となります。

何か質問ありますでしょうか?」

「大丈夫です!」

ポイント通帳を貰い、同意書のコピーを受け取る。

「何だか、生まれ変わった気分!」

真面目は、意気揚々と扉を開けた!これからは馬鹿にされずに済むのだ!彫りが深い!スフィンクス!気持ち悪い!ドブス!

こんな罵倒ともお去らばである。


「ふー、久しぶりのお引き出し新規様でしたね。」

「そうね。半年ぶりかしら?」

「脂肪が欲しいって奇人は、あまり居ませんからね。」

「食の誘惑は、常にあるからねぇ。ねぇ、知ってる?」

「何をですか?」

「100年以上前は、この関係が逆転してたの。」

「えー!!脂肪を受け取って、お金払うんですか!?」

「ええ。貧困で、脂肪が不足していたのよ。主に農民がね。裕福な領地様が預けるくらいだったから。」

「いやぁ、そんな時代に生まれなくて良かった。」

「はぁ、このポイント交換の商品。」

「え?先輩、欲しいんですか?」

「これ買えないのよ。ポイント交換のみ。はぁ、私もお引き出ししようかしら?」

「従業員は、対象外ですから無理っすね。」

「もう!分かってるわよ!意地悪!!」

「にししし。でも、これいいんですかね?」

「交換出来るから、いいんじゃない?」


そして、竜崎は席を立つ。1億ポイント交換で、宇宙旅行1週間の旅の項目を眺めながら。


ここは世界で唯一、脂肪を引き出せる銀行。今日も又、笑顔が増えた日常が交差する。




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