3話 借金。
「いらっしゃいませ!
本日はどの様なご用件でしょうか?」
男は、混乱しながらも用件を伝える。
「あの、その、お金が簡単に手に入るって、
聞いて来たんだすけど。」
「もしかして、お客様。買い取り希望でしょうか?」
「え?どういう意味ですか?
売るモノは有りませんけど。」
男はシドロモドロになりながら、そう答える。
「では、こちらをお渡しします。どうぞ。」
「あ、はい。」
受付番号の紙を手渡された。
【受付番号301】
「あちらで、お掛けしてお待ち下さい。」
男は、訳も分からす椅子に腰かけた。
すると、直ぐに呼び出される。
『受付番号、301、番の方は、
窓口、8、へお越し下さい。』
男は立ち上がり、窓口8を目指す。
「ご利用ありがとうございます。
本日は私、中川 恵子が担当をさせて頂きます。」
「どうも。」
男は、頭を少し下げた。
「お客様、どのようなご用件でしょうか?」
「えーと、お金が簡単に貰えると聞いて。」
「成る程。お客様は、ここのご利用は
初めてで宜しいでしょうか?」
「はい。もしかして、紹介状とか必要なんですか!?」
「いえ、必要御座いません。」
男は安堵する。しかし、疑問が晴れた訳では無い。
「お客様のご要望は、お金が必要で間違いありませんね?」
「はい。」
「では、説明させて頂きます。」
「はい。」
「当社では、脂肪を取り扱っております。それを預けたり、引き出したりする事が可能です。お客様の場合、どちらにも該当しません。」
「え!?では、お金は手に入らないんてすか!!こ、困ったぞ!今日、入金しないと東京湾に沈められてしまう!」
中川は、目をパチクリした。まぁ、驚くのは無理も無い。今時、東京湾に沈めるとか言う輩は居ないのだから。
「慌てなくても大丈夫です。」
「何とかなるんですか!?」
「はい。お金は手に入りますので、ご安心下さい。」
「良かったぁ!魚の餌になる所だったよ!!」
中川は苦笑する。しかし、手元では仕事を進めている手際は良い。
「今回、買い取り希望となります。」
「買い取り希望、ですか?」
「はい。銀行にある脂肪を買い取って頂きます。」
「ほぇ、どういう事何ですか?」
「1kg3万円で、銀行の脂肪をお客様に買い取って頂きます。」
「え!?お金払うの?」
「いえいえ、逆です。貰えるです。」
「マジか!やった!!」
「どうされますか?買い取って頂けます?」
「勿論!!」
「では、こちらに必要事項をご記入お願いします。」
中川は、記入用紙を手渡す。
名前 貧乏 暇無
年齢 21
性別 男
体重 45kg
希望金額 50万円
「書けました!」
「はい!では、お預かりしますね。」
記入された内容を見て、中川は言う。
「貧乏様。ご希望金額50万円ですと、17kgの脂肪を受け取って貰う事になります。」
「17kgですか?」
「はい。体重が45kgから62kgへ増加します。」
「ほぇ、で、どうなるんですか?」
「現在の体重が増えます。そして、お金が50万円手に入ります。宜しいでしょうか?」
中川は、この人頭悪いと思った。だから、お金を提示する事で、解決方法を見出だす。
「直ぐにお願いします!!」
「ありがとうございます。では、こちらの契約書に判子を押して頂けますか?」
「分かりました!!」
貧乏 暇無 は当社から、脂肪 17 kgを買い取り、51 万円受け取ります。貧乏印
「では、暫くここでお待ち下さい。」
インカムで、脂肪を持って来て貰うように伝える。その間、お金を用意した。ペリペリペリペリ!!トントン!51万円の半沢諭吉を数え終えた。
ガチャリ!
扉が開き、小太りの男が現れる。
「失礼します!」
中川は会釈すると、ラバー吸盤を掲げる。
「貧乏様。服を脱いで、お腹を出して頂けますか?」
「え!?何かするんですか?」
「はい。脂肪をお渡ししますので。」
「うわ!何これ?」
ラバー吸盤を見て驚く。時間を掛けるのも、業務に支障をきたす。とりあえずお金の話をする。
「貧乏様。脂肪の受け取りを完了しないと、お金は受け取れませんよ?」
「分かりました!」
貧乏は、シャツを脱いでお腹を出す。ガリガリに痩せて、骨しか残っていない。小太りの男に、ラバー吸盤をくっ付けた。脂肪が吸い取られ、17kg吸引された。それを貧乏のお腹にくっ付ける!すると、ガリガリだった体は、ふくよかな体型となった!死にかけていた目のクマ等、全て無くなり健康その物だ。
「これにて完了しました。
ご利用ありがとうございました。」
現金51万円を差し出すと、貧乏は嬉しい泣きする。
「ううう!!こんな簡単にお金が手に入り、体も肉付きが良くなるとは!!」
お金を握り締め、貧乏は涙を拭く。
ここは世界で唯一、脂肪を買い取りする銀行である。今日も又、救われた人々が出入りするのだ。




