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脂肪銀行   作者: ハロ
2/13

2話 滞納の行く末。

朝9時を回る。

世界で唯一、脂肪を取り扱う銀行の開店だ。今日も、沢山の人が行列をなす。


「では、お預かりしますね。」

「はい。お願いします。」

従業員が手際良く、脂肪をお客から取り出す。取り出された脂肪は、直ぐに従業員に吸収されるのだ。


「質問いいですか?」

「はい。何でしょうか?田中様。」

「この取り出した脂肪って、放っておくとどうなるんですか?」

「えーとですね、取り出した本人に戻ります。」

「え!?そうなんですか?」

「はい。でも、ご安心を。当社では、しっかり脂肪の譲渡を目の前で行っております。私が太りますよね?それが証拠となります。」

「成る程。では、燃やしたり、潰したら?」

「取り出した状態で、ですか?」

「ですです。」

「その場合ですと、取り出した私が死にます。けっこうこの仕事危ないんですよ!この間も、危うく死ぬ所だった・・・・ゲフン。今のは聞かなかった事にして下さいね。」

「・・・了解です。」


「ぎゃあああ!!止めてくれぇ!!!!」

隣で男が叫び声を上げた!

「い、今のは何ですか!?」

「・・・期日を守らなかったんです。」

目を閉じ、そう従業員は答える。


「期日を守らなかったら、どうなるんですか?」

「先程お伝えした通り、ここの利用が一生出来なくなります。」

「それだけで、あんなに叫ばないんでは?」

「ここの下に書いてあるのを御覧になりましたか?」

「えーと、これ?ですか?」

「はい。」


従業員は、重い空気を纏い説明文を指差す。


期日を守らなかった場合、当社のご利用を許可しません。また、延滞した日を計算し、お金もしくは利子分の脂肪を全て精算させて頂きます。


「これでは、あまりよく分かりませんが。」

「延滞した場合、預けた脂肪をまず下ろしてもらいます。次に利子分を脂肪かお金で精算するのですが。」

「ですが?」

「大抵、お金を持っておられません。そこで、脂肪が強制的に上乗せされるのです。」

ゴクリ!田中は息を飲む。


「待ってくれ!金なら明日払う!!頼む!嫌だぁ!!」

引きずられ、別室に連れて行かれた。

「あの方は、どうなるんでしょうか?」

「それは守秘義務により、お答え出来ません。」

田中は思った。延滞だけはしないでおこう。


――――――

別室では、男が取り押さえられていた。

3人の関取が部屋に入ってくる。

「嫌だぁ!!助けてくれ!!」

必死に抵抗するが、腕を後ろに取られている為、成す術が無い。

従業員が、ラバー吸盤を掲げる。男は必死にもがく!

「痛い!痛い痛い!!離せ!」

関取にラバー吸盤が引っ付く。すると、脂肪50kgが吸盤に吸い寄せられる。それを男へ引っ付けた!


「やめろぉ!やめ!うわぁ!!」

男は丸々と太った!関取を見ると、え?誰?と思える程のイケメンになっているではないか!!

「ううう!!!もう許してくれ。」

泣きじゃくるが、それで許して貰える世の中では無い。従業員は、関取からまた脂肪を吸い取る。それを男に付けたのだ。合計100kgの体重が一気に増えた。男は見るも無惨な姿となる。

男の体重は55kgだった。が、現在155kgである。

もう立っていられない。予め用意されていたベッドに横たわっているのだ。「はぁ、はぁ、はぁ。」と荒い息遣いで、固唾を見守る。


ガチャリ!

扉の開く音がする。店長が入って来たのだ。

「本間店長!御苦労様です!」

従業員達は、頭を下げる。

「うん。皆大変でしたね。ご苦労様!」

手を上げると、そのタイミングで従業員達は、頭を上げた。


「頓田様~。酷いじゃないですか。フロリダに高跳びされるなんて!」

「わざわざ追ってきやがって!はぁ、はぁ。」

太った事により、呼吸は苦しい。だが、目は死んでいない。

「いえいえ、こちらも仕事ですから。」

「たかだか、100kgの脂肪くらいで、こんな事していいと思っているのか!!」

頓田は、フロリダでの出来事を言っているのだ。

逃げた先で、橋を爆発し、ヘリで機動隊が突入する。戦車も出てくる始末。もうこれでだけで、映画でも作れる勢いだ。


「えー、100kgで1000万円ですよ?それに滞納分も含めると、かなりになりませんか?」

「馬鹿が!破壊した橋の修繕費、ヘリや機動隊、戦車のレンタル費の事を考えれば安いくらいだ!」

「あれは、経費で落ちますから。でも、頓田様の脂肪は経費で落とせませんからね。必要経費です。はい。」

「ふざけるな!!ぜぇ!ぜぇ!ぜぇ!」


本間は、営業スマイルを解く。

「てめぇが滞納したからじゃねーか!ボケが!こっちは、わざわざ休日返納してまで、フロリダ行ったんだぞ!?俺の休日を返せ!」

「本間店長!地が出てますよ!」

従業員に指摘され、ハッと我に帰る。

「申し訳ございません。頓田様。粗相をお見せしまして。」

本間は従業員に指示し、契約書を持ってこさせる。

「30日の滞納がありました。これがその詳細になります。」

頓田に詳細を見せた。


100kg×10%=10kg

110kg×10%=11kg

121kg×10%=12,1kg

30日の滞納分 33,1kg

現金 331万円支払うか、33,1kg脂肪増量。


「な、何だよ!計算がおかしいぞ!」

「いえいえ、しっかりと計算しましたので、間違いはありません。」

「普通100kgなら30kgじゃねーか!小学生でも解るわ!何で3,1kgも増えてるんだ?詐欺だ!詐欺!」

「竹田さん。預かり時、頓田様に説明はしましたか?」

「はい。2回説明しました。」

「なら良いです。」

本間はニッコリ微笑んだ。もし、説明していなけれぱ、竹田は冷や汗をかくだけでは済まないだろう。


「頓田様、利子はご存知ですか?」

「ああ、30kgだろ?」

「いえいえ、10日で1割増えた分にも利子は付くのです。利子にもしっかり利子が付きますよ。」

「嘘だ!詐欺だ!この店は詐欺をすんのかよ!」

「はぁ、ラチが厭きませんね。もういいでしょう。」

手を上げると、従業員はラバー吸盤を掲げた!

関取にラバー吸盤をくっ付ける。今回は微妙な匙加減が必要だ。33,1kg、しっかりと計量し終えたのだ。


「では、頓田様。利子分をお渡ししますね。」

「やめろ!やめろぉ!嫌だぁ!!助けぐわぁ!!」

利子分の脂肪を、頓田は受け取った。もう顔は元の頓田とは認識が難しい。合計188,1kgの体重になっていた。


「あらら、意識を手放してしまわれましたね。頓田様、サービスでお家までお送りします。では、ご利用有り難う御座いました。」

そう言うと、ベッドを従業員が運び出す。車に積むのだろう。


今日も、キッチリと滞納者は、脂肪の受け取りを行った。ここは、世界で唯一、脂肪を取り扱う銀行である。





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