11話 取引。
「お父様!!何故言う事を聞いて下さりませんの!?」
「はぁ、脂肪銀行の頭取の、
龍聖紋店長を怒らせたのは、本当なのか!?」
親子の会話は、噛み合っていない。お互いが言いたい事を言っているのでは無い。父親はパニックに、娘は怒り心頭で、である。
「お前は、やってはいけない事をしたようだ。電話で確認したが、もうブラックリストに乗っている。」
「くう!!あの腐れ店長がぁ!我が権力で、あんな、みすぼらしい銀行潰してくれますわ!!」
「馬鹿者が!!」
キーンと耳に障る程、部屋の中に響き渡る!
「そんな事すれば、
間違いなくゼニーが倒産する事になるではないか!!」
「一体何んなのですか!?あの銀行は!?」
「あれに歯向かってはならん!これはお願いでは無い!命令だ!絶対にもう近付くでないぞ!」
「嫌ですわ!!
私、バストアップをしなくてはなりませんの。」
「セバス!これは絶対命令だ!
娘を脂肪銀行に近付けるでない。」
「心得ました。旦那様。」
「セバスチャン!!??」
娘は泣いた。溢れん涙を隠しもせず。セバスチャンは、ハンカチを取り出し、涙をそっと拭う。
娘達が出て行った後、父親は電話に手をかけた。
「もしもし、大変失礼します。今お時間宜しいでしょうか?はい。はい。誠にすいません。はい。はい。え!?例の件を飲めと!?いや!!ですが!!!はい。はい。・・・・・分かりました。それでお願いします。」
ガチャン!
「糞が!あの黒狸めが!!
あんな事をさせるつもりだと!?馬鹿が!」
「旦那様。どうされますか?」
メイドが問う。
「例の見積り、先方へ断りを入れてくれ。それと、三津橋に話をしに行く。段取りを頼むぞ。」
「仰せのままに。」
―――――――――――――――――
「ああ!!もう苛つきますわ!!」
セバスチャンは、ティータイムの準備をする。ストレス解消効果のあるジャスミンティーを用意していた。
「セバスチャン!何とかなりませんの?」
「旦那様がお決めになられた事。
それを覆すのは、無理難題かと思われます。」
「くう!」
「先程、入手した情報ですが、ブラックリストに載った人は、如何なるお偉方でも、お断りされるそうです。例え総理大臣でも。」
顔を真っ赤にして、怒り狂う!地団駄を踏むお嬢様。
「あの糞店長風情が!!」
セバスチャンは、お嬢様が寝るまで付き添った。そして、旦那様の元へ足を向ける。
コンコン!
「入れ。」
「失礼します。旦那様。」
「うむ。セバスか。何用だ?」
「お嬢様の事で。」
「はぁ、いらん事をしなければ、
容易くバストアップ出来たモノを。」
セバスチャンは、珈琲を入れカップを机の上に置く。
「セバスが居て、制止出来かったのか?」
「誠に申し訳ございません。」
「過ぎた事を言っても仕方無いな。」
「で、あちらはどの様に?」
「埋め立ての融資を止めろと来た。今更出来る訳なかろう。第一いくら注ぎ込んだと思っている!!!」
「策はあるのでしょうか?」
「呑むしかあるまい。が、タダでは転ばんよ。
三津橋に引き継いで貰おうと思う。」
「大丈夫なのですか?」
「リスクの無い事業等、無いのだよ。」
少しの間、沈黙が流れる。それを切り崩す様にセバスチャンは口にした。
「ブラックリストの件は、どうされます?」
「うむ。とても難しい。」
「このままでは、お嬢様がとても可哀想でございます!旦那様!何卒、ブラックリストの解除を!」
「そこで、それには手を打った。」
「おお!ありがとうございます!!!」
「リズに任せたから、後で詳しく聞くがよい。
鷲はもう寝るぞ!久しぶりに疲れた!!」
セバスチャンは涙をハンカチで拭った。これで悲願のお嬢様のバストアップが出来ると。お嬢様はまな板なのだ。バストサイズAAA(トリプルA)だから。




