10話 バストアップ。
「お待たせしました。本日は、私、笹井 峰子が担当させて頂きます。」
「ど、どうも。」
「では、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あの、その、えーと。」
「お客様。焦らずとも大丈夫ですよ。」
「は。はい。えーとですね。胸を大きくしたいんです。」
「バストアップの脂肪注入ですね。」
「は、は、はい。」
自分に自信が無い表れなのだろう。多分変えたいのだ。性格を。だが、そんな簡単には変える事等出来るハズも無い。だから、見た目を変えるのが一番手っ取り早いのだ。
「では、こちらの記入用紙に、
必要事項を記入お願いします。」
「分かりました。」
バストアップ 新規
名前 吉野 多恵
年齢 22歳
体重 46kg
バストサイズ AAA
年収 330万円
借金 0
「まず大切な事をお話しします。」
「はい。」
「バストアップは、かなりお金がかかります。」
「え!?ど、との位、ですか?」
「片方100万円で、両方だと220万円ですね。」
「ひゃ!な、なんで両方だと、高い、んですか?」
「左右のバスト合わせをするんです。
その微調整に必要経費なんですよ。」
勿論、微調整不要ならぱ、200万円で可能だろう。
「じゃあ、それでお願いします。」
「ちょっと待って下さい。1サイズアップ毎なんですよ。」
「どういう意味、ですか?」
「吉野様はAAAですよね?Bにするのに、220万円です。Cにすると、440万円になる訳ですよ。」
思っていた以上に高額だった。頭がくらっときている。貯金はいくらあったか?300万円くらいはあったハズ。やはりBよりCの方が良いに決まっている。
「まけて貰えませんか?」
「それは規則で禁止されております。」
「あう。」
ここまで来て、何とも情けない話だ。お金が足りなくて、妥協する。自分の胸に手を当て、自問自答を繰り返す。
ブラジャーレスの胸で、ブラジャーを着けているのだ。元彼氏や、友達の罵倒を思い出す。貧乳!ブラジャー不要!母乳出るのか?胸板が!
「Cでお願いします!」
「分かりました。
では、現金はご用意出来ておりますか?」
お金が足りないので、ちょっと待って欲しい事を伝えた。
「それでは、お金の工面が出来次第という事で。」
「すいません。」
「いえいえ、お待ちしております。」
吉野は、深々と頭を下げて帰って行った。
「あの子また来るかねぇ?」
「勿論来ますよ。借金してでも。」
「僕は借金してまでは、止めて欲しいんだがね。」
「店長は、女心を一生分からないと思いますよ。」
「えー!?何で!?えー!?何でぇ!!」
女心がもう少し理解出来ていたなら、店長にも彼女も出来るのになぁ。と、笹井は思った。




