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脂肪銀行   作者: ハロ
10/13

10話 バストアップ。

「お待たせしました。本日は、私、笹井 峰子が担当させて頂きます。」

「ど、どうも。」

「では、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「あの、その、えーと。」

「お客様。焦らずとも大丈夫ですよ。」

「は。はい。えーとですね。胸を大きくしたいんです。」

「バストアップの脂肪注入ですね。」

「は、は、はい。」

自分に自信が無い表れなのだろう。多分変えたいのだ。性格を。だが、そんな簡単には変える事等出来るハズも無い。だから、見た目を変えるのが一番手っ取り早いのだ。


「では、こちらの記入用紙に、

必要事項を記入お願いします。」

「分かりました。」


バストアップ 新規

名前 吉野 多恵

年齢 22歳

体重 46kg

バストサイズ AAA

年収 330万円

借金 0


「まず大切な事をお話しします。」

「はい。」

「バストアップは、かなりお金がかかります。」

「え!?ど、との位、ですか?」

「片方100万円で、両方だと220万円ですね。」

「ひゃ!な、なんで両方だと、高い、んですか?」

「左右のバスト合わせをするんです。

その微調整に必要経費なんですよ。」

勿論、微調整不要ならぱ、200万円で可能だろう。


「じゃあ、それでお願いします。」

「ちょっと待って下さい。1サイズアップ毎なんですよ。」

「どういう意味、ですか?」

「吉野様はAAAですよね?Bにするのに、220万円です。Cにすると、440万円になる訳ですよ。」

思っていた以上に高額だった。頭がくらっときている。貯金はいくらあったか?300万円くらいはあったハズ。やはりBよりCの方が良いに決まっている。


「まけて貰えませんか?」

「それは規則で禁止されております。」

「あう。」

ここまで来て、何とも情けない話だ。お金が足りなくて、妥協する。自分の胸に手を当て、自問自答を繰り返す。

ブラジャーレスの胸で、ブラジャーを着けているのだ。元彼氏や、友達の罵倒を思い出す。貧乳!ブラジャー不要!母乳出るのか?胸板が!

「Cでお願いします!」

「分かりました。

では、現金はご用意出来ておりますか?」

お金が足りないので、ちょっと待って欲しい事を伝えた。


「それでは、お金の工面が出来次第という事で。」

「すいません。」

「いえいえ、お待ちしております。」

吉野は、深々と頭を下げて帰って行った。


「あの子また来るかねぇ?」

「勿論来ますよ。借金してでも。」

「僕は借金してまでは、止めて欲しいんだがね。」

「店長は、女心を一生分からないと思いますよ。」

「えー!?何で!?えー!?何でぇ!!」


女心がもう少し理解出来ていたなら、店長にも彼女も出来るのになぁ。と、笹井は思った。

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