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2話 それ盛り上げる為のフラグじゃないですか、ヤダー

 数百人は軽く入れる大食堂。だが、ここにいるのは俺と先輩の2人だけ、この広さはかえって寂しさを感じ、まさに宝の持ち腐れだ。

 食事の支度が済んだので、今は無駄にだだっ広いこの空間で茶を啜りながら、名も知らぬ少女待ち、と丁度きたようブフォーッ⁉︎

 食堂の入り口に人の気配を感じ、そちらの方へ視線を向けた俺と先輩は口に含んだ茶を同時に噴き出した。

 そこにはお風呂から上がった当然名も知らぬ少女の姿があったのだが


「ゴフッゲホッ、何で裸なん⁉︎」


 そう少女は肩甲骨のあたりまである黒髪を揺らし成長途中でありながらも艶かしさを感じさせる褐色の肌を一切隠そうとはせず、一糸纏わぬ姿で現れたのだ。


「?全部洗濯中…着る物が無いから」


 少女は、俺の言葉に僅かに首を傾げ、さも当然の如くそう答えた。


「だったら言ってくれればっ、てか、タオル位巻いて下さいよ〜」


「???」


 慌てふためいている俺を見て、不思議そうに再び首を傾げる少女。


「あー、取り敢えずこれ着てて!」


 と自分のシャツを少女に投げ渡す。

 しかし、裸にシャツ一枚…これはこれで犯罪臭が…ま、まあ、裸よりはマシだろう。


「やれやれ、こっちは男しか居ないんだからもう少し気を付けて貰いたいですよねぇ先輩…先輩?………気絶してるーっ⁈」


 そういえば、この騒動の中、先輩は何も言ってきてなかったなと思ったら、茶を噴き出した後の姿のまま微動だりせずに気を失っている先輩がそこにいた…


 ◇


「あれ、何でコクロのシャツ着てるんだ」

「着る物が無いって言うので着てもらってるんです」

「そうかー、それにしてもまさか寝てしまうとは疲れてるのかなー」

「ここまで来るのに全部先輩頼みでしたからね、知らない間に疲労が溜まっていたのかも知れないですね、すいません」

「んーそうかなぁ?にしても、寝る前に何か…そう、天使を見た様な気が」

「ユメデモミテタンジャナイデスカ?」


 気絶した先輩の頬を往復ビンタで叩き起こし改めて食卓へ。

 先輩はどうやら、彼女が裸で現れた辺りの記憶が飛んでいるらしく、あの騒動を知られると面倒そうなので、待ちくたびれて眠ってしまったという事して、少女には今後裸では絶対に俺達の前に出ない様言い聞かせておいた。


「そんじゃ、飯食べましょうて、てアッレ〜?」


 気を取り直してご飯ご飯とテーブルの上に視線を落とすが、あるのはお皿のみ?盛り付けられていたはずの食べ物たちだけ綺麗に消えてるんだけど…?


「食べていい言った」


 テーブルの上を見て首を傾げてると少女が俺の方をじっと見ながらそう告げてきた。


「へ?」

「食べていい言った」


 2度言った…

 相変わらず表情は一切変わらないので、感情は読み取れないがつまり


「1人で全部食べたと?」


 コクリと頷く少女。


「お嬢さんは、大食いさんなんだなー」


 ハッハッハッと先輩は笑っているが、マジかー、見たらいつの間にか五合あった炊飯器の米も全部無くなってるじゃないか、おかずも残ったら保存しようとかなり多めに作ったんだけど。


「食べていい言った」


 難しい顔をして皿を見続けている俺を見て怒っていると思ったのか、3度目の言葉。


「ん、ああ、別に食べたのはいいんですよ、全部食べてもらえてありがたいですし」


 俺と先輩は少し前にも食べてたから、腹もそこまで空いてなかったし、でも、これから作る量は考え直さなければならないなと食べ残し無く綺麗になくなった皿を見て思うのであった。


 ◇


 ブリッジに戻って来た俺達3人、褐色の少女から色々と話を聞かなくてはならない、相変わらずシャツ1枚という格好で服も何とかしなくてはならいところだが今は置いておこう。


「さてお嬢さんの名前は?」


 先輩が切り出す、今まで言わなかったという事は隠したい理由があるのかも知れないが


「フィル=ガゴット」


 おや、即答。


「フィルちゃんかー、何処に住んでるんだ?」

「今は家は無い、色々渡り歩いてる。路上生活。故郷は宇宙地図にも登録されてない辺境の星だから聞いても分からないと思う」

「何でわざわざ俺達の船に乗りたいんだい?お金が無いのかな?」

「お金無い、でも1番の問題は身分証明のIDがない、普通にやってもこの星からすら出れない」


 おい待て今さらりと、とんでもないこと言ったぞ


「IDが無いて何故?じゃあどうやってこの星に来たんだ?」


 この広い宇宙、今だ宇宙地図に登録されていない星に住む人は沢山居る。だが、その人々も身分証明のIDは習得している。

 IDが無ければ、星を往来出来ない所か、通信や交流すら許可されず、勿論商売を始める事も出来ない。

 旅客船等を襲い金品を巻き上げる極悪非道な宇宙海賊でさえ基本IDは習得している。

 例外として、他の星との関わり一切を拒み入星も通信も出来ない星、宇宙へ行く技術が無く、他の星からの接触の無い星の人々はIDを持っていないが


「IDは生まれてから一度も習得して無いそれだけ」


 生まれつきか…宇宙同一言語を話せるって事は前者かな。それなら何故彼女はここに?


「船は毎回古い旅客船や貨物船、セキュリティの低そうな所に潜り込んでる」

「おおー、フィルちゃん凄いな!」


 先輩、感心する違う、それ密航、あかんやつ。


「でも、それでは思うように動けない、故に今回2人に声掛けた」


 アホ面かました2人のカモを見つけたていう事ですね…ワカリマス。


「星系を出るまでって言ってたが、どこか行きたい所が?」

「…探し物…」

「ん?」


 フィルは少し考える素振りを見せ答える。


「探し物をしてる、ここ暫く星系内から出れなくて困っていた」

「探し物かー、もし良ければそれが見つかるまで乗って行くかい?俺達は、特に目的も無いぶらり旅だから」

「いえ、星系から出るまでで、後は何とかなる、ここ一帯はセキュリティが特別に厳しいので」

「そうかー、じゃあ、改めてそれまでの間よろしくな、フィルちゃん」


 探し物が何なのかは彼女のプライベートのに関わる事だ、先輩も一緒に探そうかと提案するも、流石にそこにずかずかと踏み入る程無神経では無かった様で大人しく引き下がる…心底残念そうなだが…


 それにしても、意外とスラスラ話してくれた、偽名かもしれないが、それなら最初から言えば良いし、IDが無い事等言いづらいきちんと質問にも答えてくれているので可能性は低そうだ。

 思えば、初めから自発的に話したのは船に乗せてぐらい必要な事以外話さない、まさか本当に聞かれなかったから言わなかっただけパターン?こちらから聞かなければ永遠に教えて貰えない可能性もあったのかも?なにそれこわい。


 え〜そんなこんなで我々、宇宙に出て1日も経たないうちに犯罪の片棒を担ぐ事にった訳ですが、前途多難でこれからの事を考えると気が重い…


 ◇


 リリリリ星出発まで残り7時間。

 フィルを何時までもシャツ1枚というけしからん格好にはして置けないので、服の調達の為、先輩とフィルは船に残し、俺だけで再び買い出しへ。

 フィルはいらないと言っていたが、流石にそうはいかない。取り敢えず今回は簡単な寝間着を購入、元の服が乾いたらフィル自ら買いに行ってもらう事にする。


 グッドラック号への帰り道、少し先の方が騒がしいって何アレ。鉄兜に肩にトゲトゲを付けた今にもヒャッハーとか言い出しそうな筋肉の集団。ふむ、目を合わせないよう静かにすれ違うのがいい。


「ヒャッハーッ‼︎」


 ヒィィィィィィ、ヒャッハーて話しかけてきたぁぁぁ⁉︎


「お兄さんヒャッハー!我らヒャッハー!今人探しヒャッハーしてるんだがヒャッハー!」


 いや、ヒャッハーの使い方おかしくない?


「この写真のヒャッハー!奴をヒャッハー!見かけなかったかヒャッハー!」


 と1枚の写真を見せてくるヒャッハー。


「…いや、見てないですね」

「そうかヒャッハー!見かけたらヒャッハー!我々にヒャッハー!声をかけてくれヒャッハー」

「あ、はい、分かりました」


 何だったんだあの面白ヒャッハーは、まあいい、今は一刻も早く戻らないとな。船に向かう俺の足取りはスタスタと自然に速くなっていくのだった。スタスタスタスタスタスタスタスタ…


 ◇


「先輩ィィィィ!!!」

「うおっ、何だぁどうしたっ⁈」


 戻るなり飛び込んできた俺に驚く先輩、だが気にせず、早く伝えなくては!


「ハァハァ、ヒャッハーが、、探して、写真で、、ヒャッハーが」

「何?取り敢えず落ち着け」


 早く伝えなくちゃと言う思いが先行しすぎて上手く言葉が出てこない。先輩も俺が何を言いたいのか分からない様子だったが


「状況は何となく分かった」


 とフィルが呟いた。えっ、今ので分かったのと先輩だけでなく俺も驚く中。


「私を探している人達に会ったんでしょう?」


 と続けた。そう、ヒャッハーが俺に見せた写真に写っていたのは褐色の肌の美少女フィルだった。


「ヒャッハーとか言ってる人だったんですが」

「はい」

「お知り合いで?」

「知らない、いきなり襲いかかってきたから逃げた」

「襲われる、心当たりはあります?」

「ない」


 成る程、早く船に来たがったのはこのせいか、本人が心当たりがないと言い切っているので、これ以上追求は無駄だろう、問題はこの状況をどうするか。


「ほほ〜う、敵か!」


 心なしか先輩嬉しそうなんですけど、本当にこの人安全な航行したいと思ってるの⁈


「でも、まだ、心配する事ない、私がここにいる事を彼らは知らないんでしょ?」

「あ、そうか、このまま知られずに宇宙に出れれば」

「まだ、この星に私が居ると思っている彼らは追ってくる事はない」

「ですよね〜、このまま出発の時間まで篭っていれば万事解決、いやぁ、追ってがいると思ったら、ちょっとテンパってしまいましたよ」

「ハッハッハッ、コクロは慌てん坊さんだなぁ」


 あれっ、ちょっと待てよ。漫画やアニメだとこの場合、物語を面白くする為に…


「あのぉ、これって、無事に切り抜けられると思いきや、戦闘フラグてオチじゃないですよねぇ?(震え)」

「えっ?」

「は?」


 残り3時間、近い未来の出航に大きな不安を抱える事になるのであった。


次回。

あーゆーくれいじー?

リリリリ星脱出編2

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