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1話 ちょっとそこまで乗せてって

 俺は遂に21年住み続けた星を離れる…

 まず目指すは、リリリリ星、リ×4の星だ、他の星にリ×3つや5つの名前もあるらしいので気をつけなければならない。

 リリリリ星は、まだ企業型住居星系の中の星。

 この星系を正式ルートで出るにはそこで直接許可を取る必要がある。その為、旅に必要な物は一通り揃っているらしいので色々物資の調達もしておけるのだ。


「よーし、準備完了だ離陸の許可出たから出発すんぞー、ポチッとな」


 軽い感じで先輩がボタンを押す。ドンッという音がして一瞬身体に軽くGが掛かるが直ぐに楽になり、気が付けば、もう宇宙空間だ。

 正直、かなりドキドキしていたんだが、呆気なさ過ぎて拍子抜けだ。


「ハハハ、どうだい新型の乗り心地は、大して何も感じなかっただろう?他の船じゃこうはいかないぞ、後は何もする事無く予約した停船場まで一っ飛びだ」


 先輩が誇らしげに話してくるが、ああ、そうか、新型だからか…

 正直初めての宇宙は色々感じたかったな、と贅沢な船に乗りながらも思ってしまう、無い物ねだりて所かな。


 ◇


 最新式という事で、宇宙空間に居るとは思えないほど船内は快適だった。数百人乗れる広い座席。

 俺の住んでたアパートより広い部屋には冷蔵庫やレンジが備え付けてあり、先輩が用意してくれていたんだろう、飲み物や軽食が常備されていた。

 厨房もレストラン並の広さだ、急速冷凍装置等生ものを保存する為の設備まで揃っている。


「せめて料理ぐらいはして、先輩の役に立たないとな、バイトで磨いた腕がなるな!」


 と数時間足らずでは見て回れない程の大きさのある船内を回りながら、漸く俺が出来そうな事を一つ見つけた所で、目的地に着く時間が近づいて来たのでブリッジに戻るのであった。。


 ◇


 リリリリ星へは、5時間程で到着。ハバーロからそんな離れていないのと、運良く航路を使っている船があまり無かったのが幸いしたらしい。

 建物から地面まで鉄で作られており歩くたびカンカンと音が響く鉄の街といった感じだ。

 早速、役所にて星系から出る手続きに検査を受け、12時間後には出発出来る事になった、新規でここまで早く手続きが済むのは珍しいとの事みたいだ。ありがたい事に今だ先輩の幸運が続いているのだろう。

 先輩の起こす幸運、不運は規則性は無くランダムで起こるのだが、長く付き合った経験から確率的には幸運8割に不運2割と感じている、長く続くと1年以上幸運状態てな事もあった、このまま続いてくれるといいんだけど…


 船に必要な物はメンテナンスの業者に任せていて、燃料から予備パーツまで多めに積み込んで貰っているらしいので、出発までの時間、俺と先輩は食料の調達、とはいえ元々沢山積んでいたので必要無いのではないかと先輩に聞いてみたが、何があってもいい様に積み過ぎぐらいが丁度良いというので今は2人で両手一杯の買い物袋を持ち戻る途中だ。


「そういえば、先輩て友人多いですよね、今回その人達は誘わなかったんですか?」


「んー、宇宙や船には詳しいやつが居なかったからなぁ、流石にそういうの連れて来ても足手まといになるだけだしなー」


 おいちょっと待て


「あのー俺も何も出来ないんですが…」


「ああ、コクロは別だよ」


「別?」


「前も言ったが、やはり1人で行くのは寂しくてな、とは言っても誰でもいい訳じゃない、最も付き合いが長くて気兼ねなく話せるコクロだからこそ何だぜ、コクロはそこに居るだけでいい、何があっても俺が守ってやるぜ!」


「先輩…」


 見つめ合う俺と先輩。


「キュン、とかトキメキませんからね、そっちのけはありませんし」


「ナハハハ、安心しな俺もだ!」


「それと、自分の身位は自分で守りますよ」


 つまり、本当に旅の話し相手が欲しかっただけという事らしい。確かに先輩は1人で静かに旅をする様なタイプじゃないな。

 とそんな感じで話しながら歩いていると


「ねぇ、あなた達、2人で旅をしてるの?」


 前方から抑揚のない声で呼び止められる。

 顔を上げると、汚れたコートにフードを深く被っている為顔はよく見えないが声の感じから少女と思われる小柄な人影が俺と先輩の前に立っていた。


「おう、そうだぜ、それで何か用かい?」


 自分に向けられた言葉だと気づくと先輩は即座にそう答えたんだが、先輩、そんな如何にも私怪しいですって格好したのに気さくに答え無いで下さい…


「そう…なら、少しの間、この星系を出る所まであなた達の船に乗せて欲しい」


 いきなり何言ってんのこの人怖っ、そんなの駄目に決ま


「いいよー」即断


 チョ、先輩ィィィっ⁉︎


「ちょっと待てーっ!」


 突然とんでも無い要求をしてきたフードの少女に対し即決した先輩を慌てて引っ張り少女との距離をとる。


「せせせせ先輩!何言ってんのか理解してるんですか⁉︎」


「ん、何だ困ってるみたいだから乗せてあげようて話だが何か問題が?」


「いやいやいやっ、問題大有りでしょ!そもそも…」


 そうだ、そもそも何故俺達に声を掛けてきた?

 何故、自家船を持っている事を知っていた?

 それに、少女は最初に何て言ってきた?あなた達2人でと確かに言った…何故2人だと?

 今持っている買い出しの量は明らかに2人で宇宙を旅する量では無い、本来もっと大勢居ると思うのが普通だ…という事は彼女は初めから知っていたんだ、俺達が2人だという事を。

 考えてみれば、あんな船にたった2人てだけで、嫌でも目立つし目を付けられやすい。

 おそらく、この星に着いた時から彼女に見られていて、俺達のやり取りを観察していたんだろう。

 あれっ?やっぱコレかなりヤバイ感じががが

 と俺が非常に危機感を募らせている中、先輩は、


「おい、そんな事よりあの娘、きっと美少女だぜ」


 などと申しており


「いやいやいやいや、そんな事よりって!美少女とかも関係無いし、つーか、顔見えたんですか?」


「いや何、今の俺達に足りない物はキュートなヒロインだと思うんだ、やっぱり冒険といったらヒロインは必要不可欠だろ?それにあの娘の可愛い

 声聞いたろ、あのボイスは美少女に違いないぜ」


 この人マジ何言ってんの…

 とはいえ、先輩の船だし誰を乗せるかの決定権はやっぱり先輩にあるんだよねぇ。


「ハァ、もう乗せてく事は先輩の中で決まってしまってるんですね…」


「勿論、男に二言は無いぜ」


「分かりました、先輩の判断に任せます」


 しかし、先輩あんた安全な旅をしたいのか、デンジャーな冒険をしたいのかハッキリして下さい。

 せめて彼女が先輩の幸運の力で寄ってきた可能性を祈ろう、どうか不運の方ではありませんように…


 当のフードの少女は、俺達のやり取りが終わるまで、最初の場所でジッと待っていた。


「やあやあ待たせたね、話は纏まったよ、是非、うちの船に乗って行ってくれ、俺はゴルゴン、こっちは相棒のコクロ、俺の事は気軽にゴルって呼んでくれて構わない、これからよろしくぅ」


「分かったゴル、出来れば早く、あなた達の船に行きたい」


 相変わらず淡々とした話し方で声からは感情を読み取れないが、一刻も早くこの場所を離れたい意思は伝わってきた、やはりというか何か厄介事を抱えていそうだ。

 まあ、早く戻るのは賛成なんだが、いい加減、両腕の荷物が重くてプルプルしよる…


 ◇


「ふぃー、やっと戻ってきたー」


 俺はドスンと荷物を降ろして、少女の方へ振り向く、街からから此処までフードは深々と被ったままで、今だ顔すらみれていない。

 そんな相手を軽々と船に乗せてしまう先輩の神経。怖いもの知らずというか、ノーテンキというか…


「いい加減フード取ったらどうです?」


 街中じゃないからか、俺がそう言うと少女は躊躇なく被っていたフードを外しす、黒髪に褐色の肌、そして見つめていると魅力され目が離せなくなる程の澄んだ緑色の瞳。


 なるほど、声が可愛くても美少女とは限らないと思っていたのだが、美少女だな、先輩の嗅覚半端ない。

 だが、暫く体も洗えていないのか肌は泥などで汚れ、髪もベタついている。それに、野外では余り気にならなかったが、かなり臭う。


「詳しい話は後だな、まずは、お風呂に入った方がいい」


 そんな少女をまず浴場へと案内する先輩紳士。本当に美少女だったから気合いが入ってる。

 此処まできたらごちゃごちゃ考えても仕方が無い、俺は食事の用意でもしておこうかなと厨房で準備を始めていると先輩が帰ってくる。


「今、あの娘お風呂入ってるぜ」


「そうですか、かなり汚れてましたもんね」


「覗くなよー」


「除きませんよ、先輩じゃあるまいし」


「失敬な、俺もそんな事はしないぞ」


 ニヤニヤと言う先輩は、かなり浮かれてる様子、美少女が加わり嬉しいのだろう。


「飯作ってんのか」


「ええ、簡単なものですが、あの様子では彼女もお腹減ってそうですし、てあれ、先輩、彼女の名前て何ですか?」


「ん、そういえば俺も聞いてないな」


「へ?」


「まあ、風呂から出てきたら聞いてみればいいか、アハハハハ」


 あれ?うちらは名乗ってたよね…

 名前すら教えてくれていなかった事に驚愕、そして相変わらず危機感無しに爽やかな笑顔を向けてくる先輩をブン殴りたい衝動を抑えながら、ミステリアスガールといく近い未来の冒険に更に不安をつのらせていくのであった。

次回。それ物語を盛り上げる為のフラグじゃないですか!?ヤダー

リリリリ星脱出編

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