第1章 再会
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『ねぇ!なんでルークはそんなに強いのっ!?みんなより剣も強いし、魔法だって使えるじゃんかっ!』
猫の毛のようなサラサラで肩にかからない程度の金髪が、リズム良く揺れている。この汚れを知らないような輝かしい髪の毛を何度撫でたことか。こいつを、村のみんなを守ろうって、何度小さい時から願っただろうか・・・。
『俺はな、この村で、いやこの国で強くなって勇者になるんだ!!それでな、魔物も倒して、そして魔王すらぶっ倒してさ!!みんなを守れるようになりたいんだ!!』
あぁ・・・そんなこと言ったけな。あの時の俺は病弱だった母親を、幼馴染で気弱なこの金髪を、村のみんなを守りたくて、朝から晩まで剣と魔法の練習をしてたっけな・・・。
まったく憂鬱な夢だ。今更こんな夢を見るなんて・・・。さっさと目が覚めてくれねえかなぁ、こんな現実を知らないガキの夢なんて、思い出しても意味はないんだ。
もう勇者なんて目指してなんかいない。
むしろ俺は、アイツを・・・魔王を・・・復活させたいんだ・・・・。
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「あぁ、嫌な夢を見たな。まったく、俺にもあんな純粋な時があったんだもんなぁ・・・」
夢から目を覚ましたルークは長く、吸い込まれそうな漆黒の髪を束ねながら一人ぼやいていた。
「俺は勇者になる!!って言ってたやつが今じゃ真逆のことをしてるなんて、アイツ、ユリスが聞いたら驚きすぎて思考が何分止まるだろうか・・・。最長記録は俺が村を出るって言った時の30分だろ、それよりは止まるだろうなぁ・・・くくっ」
3年前、俺が住んでいたコット村を出るとユリスに言った時のことを思い出し、思わず笑みが零れる。
あの金髪の美少年は元気だろうか、そんなことも考えながらふと窓から外を覗いた。窓の外からは王都の街並みがみえる。新品の制服に身を包んだ小柄の人たちが大きな荷物をもって歩いている。
「おっとそういえば今日から新学期が始まるのか。俺も2年生になるのか、後輩ができるってこと・・だ・・・ろ・・・・・??ってことは・・・・・アイツも
くるのか、そうか・・・。これは楽しい学園生活になりそうだ・・・まってるよ。」
何を待っているのか、それはあえて口に出さずに、彼は視線を床に落とした。その眼は笑っているのか、悲しんでいるのか、それは誰にもわからない。
(ほんとうに・・・待ってたよ・・・・・・・神託の勇者ユリス・・・くくくっ)
口元を歪め、いつものおちゃらけた雰囲気は静まり、肩を震わせた。
そのとき・・・ベッドに陰る彼の影が一瞬だけ、一回り大きくなったような、より黒くなったような、彼の感情を表していた。
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