小噺⑥ 正月(トランプ)
「で、なんでわざわざトランプ全員で集まってんの?」
「おい、ケイト…全員ではないだろ…」
「え?誰かいない?」
「エースもナインもキングもいないだろうが」
「そもそも会ったことないから気にしてなかったわ。ごめんごめん。」
「……まぁいい。今日はトランプでも"挨拶始め"をしようって話になってな…」
「へぇ、クイーン?」
「さぁ?」
「おい、料理の担当って誰がしてんだよ…?」
「え?あぁ、多分トレイとサイスじゃない?」
「は…?サイスぅ?……俺に死ねってか?」
「?」
「絶対あいつ毒薬とか入れてくる。」
「いやいや…さすがにそれは無いよ。それにトランプでたまに料理食べさせてもらえる時あるじゃん?あれ実はほとんどサイスが作ってるらしいよ?」
「あんな美味しいものを…サイスが…?」
「いや……驚きすぎだからね…」
「サイス、そっちの方は上手く焼けたか?」
「大丈夫。上手く焼けたし、あらかたメインの準備も出来たよ。」
「相変わらず……手際はいいし、覚えは早いし…すごいな。」
「そりゃどうも。」
「しかし…なんでた"挨拶始め"なんてやろうってことになったのやら……」
「さぁね。案外納得いくような理由じゃ無いかも…」
「ん?」
「いやなに…女王様には、蝶の羽ばたきすら見えていらっしゃったのかもしれませんね…っていう…」
「サイス、君はいつも独特の言い回しをするね。私のように学の無い人間からすると君は……憧れの存在だ。相変わらずたくさん本を読んでいるのかい?」
「えぇまぁ……読んでますよ。」
「本を与える、という判断をしたクイーンにはその点、しかと感謝しなければならないね。」
「えぇ、感謝してますよ。とても…」
「おーい、シンク、ケイト‼︎料理を運ぶのを手伝ってくれ‼︎」
「ふぁーい…うわっ‼︎なにこれ美味しそう‼︎」
「相変わらず、2人は料理がうまいな。」
「それでは、本年もよろしくお願いいたします。」