小噺③ 密会
PEPEの寮を抜け出して、3日に1度の楽しみに出掛ける。
別にスリルを味わいたい訳でもなく、非行に走る訳でもない。ただ、会ってお話をするのよ。
コンコンコン…コン…コンコン…コン…
静寂の中、PEPEから少し入ったところにある小ぶりな一軒家の玄関バルコニーの上によじ登る。そして二階の窓をある決められたリズムでノックする。
するとね、ほら‼︎
彼が疲れた表情の中でも、瞳だけをキラリと月光に輝かしてカーテンを引くの。
彼は黙って窓を開け、私の手を優しくとり、部屋に招き入れてくれる。
そこからはただ喋ったり、たまにすこーしだけキス、とかしてみたりする。
明日の早朝にはまた寮の自室に戻らなくてはならない。
閉じ籠ってしまった彼によく似た優男が隣室で、しかも首席。バレたらまずい。
それでも私は彼と会えることを楽しみに、今日も今日とて少しばかりの無茶をする。
彼のためなら時間も労力も惜しまないわ。他愛もない外の話にうんうん、と頷いてくれて、笑顔も素敵で、ずっとこのままでいたい。
そう願わずにはいられない。
首、そしてバラバラの四肢。
それが3日ぶりに見た彼の姿であった。もしかしたら彼に化けてる偽物の可能性もある…って女の先生がいってらっしゃったかしら?
そんな訳ないのにね…
だって私が彼を見間違える訳ないもの。
あぁ、なにがいけなかったというの?
彼がいなくなって、1つの決心が私の中で、出来上がった。
彼の後を追おう。
私の名前は恩紅凛。
彼の名前は芦屋類。
彼が、私の世界で1番愛する人。