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よりどり小噺  作者: なさぎしょう
2/7

小噺② 明日は我が身


今日は当たりだ。



絶え間ない銃声と屍臭の只中で、小さな少年は一心不乱に金目のものを探していた。

ここは、金銀財宝、宝の山。

時折すぐ近くを鉛や鉄屑がすごい勢いで飛んでいくが、そんなものはお構いなし。地に伏した肉塊から明日の生きる糧を頂戴してまわる。


「おーいカルメン‼︎そろそろやべぇよ‼︎」


「わかった‼︎こいつだけとったら行くよ、ちょっと…とれねぇ…イーザック、先に行ってていいぞ‼︎」


「ダメだよ、万が一の時に生き死にがわからねぇなんて嫌だもんよ‼︎」


相棒の叫びと地響きを聴きながら、やっとの事で赤髪の塊から金色のロケットを取り、振り返った。

瞬間、足がもつれ、もんどりうって地面に肢体を強かに打ち付ける。


「…ってぇ…」


「カルメン‼︎まずっ………」





………………



なんだ?

突如地響きの中から相棒の声だけがパタリと途絶えた。少年は真っ赤な雨でぬかるんだ地面に手をつき、顔を上げる。



………………



今度は周り全部が静まり返った。

物言わぬ手と脚と、頭と…相棒だったもの(・・・・・)が、つい瞬間前には俺を急かしていた、人間だったものが、そこに打ち捨てられていた。


「あぁ……」


一言だけ、うめき声を発すると、少年は駆け寄り狂ったように搔き集めはじめた。

お宝は自分のポケットや背負い込みの麻袋へ。それからぬるりと暖かい塊を寄せ集めて持とうとするが、ズルリと手から滑り零れ落ちる。


悔しい。


これほどのものも持てない己の力の無さに絶望した。



やむなく、虚空を映す瞳とそれを携えた頭を、両腕にひしと抱いて、少年は一目散に駆け出した。

その様は不気味だが、不思議に美しい。

友情がそう見せているのか?


鬼の子のようでもあったが…







抱え持ったそれ(・・)を、戻ってすぐに焼いた。ほとんど無意識のうちに焼いて、埋めるまでを済ませ、そしてその場にドタリと仰向けに倒れた。


空は晴れ晴れとしていた。



もう彼の中に相棒はいなかった。

ただ、今日の寝床と明日の飯だけが心配だ。



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