小噺② 明日は我が身
今日は当たりだ。
絶え間ない銃声と屍臭の只中で、小さな少年は一心不乱に金目のものを探していた。
ここは、金銀財宝、宝の山。
時折すぐ近くを鉛や鉄屑がすごい勢いで飛んでいくが、そんなものはお構いなし。地に伏した肉塊から明日の生きる糧を頂戴してまわる。
「おーいカルメン‼︎そろそろやべぇよ‼︎」
「わかった‼︎こいつだけとったら行くよ、ちょっと…とれねぇ…イーザック、先に行ってていいぞ‼︎」
「ダメだよ、万が一の時に生き死にがわからねぇなんて嫌だもんよ‼︎」
相棒の叫びと地響きを聴きながら、やっとの事で赤髪の塊から金色のロケットを取り、振り返った。
瞬間、足がもつれ、もんどりうって地面に肢体を強かに打ち付ける。
「…ってぇ…」
「カルメン‼︎まずっ………」
………………
なんだ?
突如地響きの中から相棒の声だけがパタリと途絶えた。少年は真っ赤な雨でぬかるんだ地面に手をつき、顔を上げる。
………………
今度は周り全部が静まり返った。
物言わぬ手と脚と、頭と…相棒だったものが、つい瞬間前には俺を急かしていた、人間だったものが、そこに打ち捨てられていた。
「あぁ……」
一言だけ、うめき声を発すると、少年は駆け寄り狂ったように搔き集めはじめた。
お宝は自分のポケットや背負い込みの麻袋へ。それからぬるりと暖かい塊を寄せ集めて持とうとするが、ズルリと手から滑り零れ落ちる。
悔しい。
これほどのものも持てない己の力の無さに絶望した。
やむなく、虚空を映す瞳とそれを携えた頭を、両腕にひしと抱いて、少年は一目散に駆け出した。
その様は不気味だが、不思議に美しい。
友情がそう見せているのか?
鬼の子のようでもあったが…
抱え持ったそれを、戻ってすぐに焼いた。ほとんど無意識のうちに焼いて、埋めるまでを済ませ、そしてその場にドタリと仰向けに倒れた。
空は晴れ晴れとしていた。
もう彼の中に相棒はいなかった。
ただ、今日の寝床と明日の飯だけが心配だ。