小噺① 新学級
「それじゃあ…まぁ初日ということなので、自己紹介をしてもらいたいと思います。今年は増員もあったので、少し長めの紹介でお願いします。」
神代輪廻は初日から姿を見せない担任を内心毒づきつつ、副担任としての責務を果たすべく話を進める。
「えぇー、まずは名前と年齢、あとは好きなものとか…特技とか…かな?」
「はい‼︎あとは座右の銘が知りたいです‼︎」
今年から晴れてSクラス入りを果たした最年少の伏舞人が笑顔で進言する。
「はいはい座右の銘もね。じゃあ首席から挨拶お願いできる?」
「はい。」
「名影零です。
名前の"名"に、影武者の"影"。それから漢数字の零で名影零と読みます。」
おぉ‼︎頭良さそう‼︎
僕は今年からだし、名影のお家とはそこまで接点がないから名前くらいしか知らなかったけど、噂に聞くよりも数倍かっこいい感じの人だ。
しっかりしていて、目力もある。
旧日系の美人さんって感じ。
「年齢は14で、家系はほぼ旧日系で構成されています。」
聞いたことがある。名影はかなり純日系の血で、そのせいか黒髪黒眼が異様に多い。
かくいう名影零ちゃんも黒髪に黒眼。
「好きな事は読書で、紙媒体の書籍が特に好きです。他にも旧時代のものには様々興味があります。」
いまどき紙の本なんて読む事が出来ることすら驚きだ。それくらい"紙の本"は廃れている。
「座右の銘は"進取果敢"です。よろしくお願いします。」
なんか…かっこいい言葉‼︎
「芦屋聖。聖の一文字で"せい"って読みます。歳は14、好きなものは旧時代の映像。映画に限らずなんでも。特に"アニメ"って呼ばれるやつが好き。」
聖くんは僕の自慢の友達‼︎
背が高くて、頭も良くて、女の子からもモテモテ。だけど男友達も結構いて面白い人。
「座右の銘は"現状維持。成長も退化もしたくない。よろしく。」
相変わらず気怠い感じで紹介を終える。でも僕は知ってる…聖くんは実はすごく優しくて熱い男だということを…‼︎
「えっとじゃあ次は…席順で伏くん。」
まさか新規生なのにそんな早く自己紹介させられるとは思わなかった。
「はい‼︎伏舞人です。伏せるに舞う人と書きます。12歳です‼︎好きなものはみんなでやるタイプのゲームや行事で、座右の銘は「一生懸命」と「正々堂々」です‼︎宜しくお願いします‼︎」
一息に言い切ると、斜め前の男の子が「うわーっぽいなぁー」と言うのが聞こえてきた。
ぽい…とはどのあたりのことを指しているのかはよく分からないが、とにかく自分はクラスで一致団結したい旨はさりげなく伝えられたと思う。
「じゃあ次は私かしら。」
僕の横に座っていた美人さんが、立つとその抜群のスタイルが目につく。背も高くてかっこいい。
「私の名前はティト・コルチコフ。18歳。好きなことは何かをデザインすること。服でも建物でも、どんなものでもデザインするのが好きよ。座右の銘…か、そうねぇ〜"経験は至高の宝"かしら。常に経験を生かして生きていきたいわね。」
経験から学ぶ、ということだろうか。確かに大切なことかも‼︎
次はさっき僕の自己紹介に「ぽい」と言った人だ。
「アレイ・ディモンド、13歳。好きなことは機械いじり。座右の銘は"あきらめも肝心"。よろしく。」
…え、短いっ‼︎
要約したというより、聞かれたことに対して箇条書きみたいにして答えた、って感じだ。
でも仲良くしたい‼︎年も彼が1番近いようだし…
「……あ、俺?」
次の人は首席の名影さんに声をかけられてはじめて自分に順番が回ってきていることに気づいたらしい。まぁ後ろから回ってきちゃったもんね‼︎
「いやぁ…ははは、気づかなかった。ごめん。恩寿音です。16歳で、好きなことは水泳です。えーと……あ、座右の銘か‼︎ "義を見てなさざるは、勇なきなり"です。よろしく。」
にかっとはにかんだ感じもオーラも優しそう‼︎
「次は私ね、シヨン・マチルダ。旧露系で13。好きなことは料理、座右の銘は"先手必勝"。以上です。」
おぉ…この子も短い…
でもすごく快活そうな子に見える。行事などでは盛り上がるタイプっぽい‼︎
「あと、テキトウな人は嫌いです。」
なんと⁉︎テキトウな人か…まぁ僕もそんなに好きじゃないけど…
「最後は俺だな。ロバート・キング。18だ。好きなことは…身体を鍛えることかな?座右の銘は"為せば成る"。よろしく。」
背が高い‼︎いいなぁ〜。
僕も歳が上がれば身長伸びるかな?
「とりあえず今日いるメンバーは一通り終わったわね。あともう1人は後日ね。現状9人。これからこのメンバーで東校を率いていってもらうから。」
率いる…‼︎
…かっこいい‼︎‼︎
これは、トラストルノに暗雲立ち込めるより、少し前のお話。