得体の知れない
「なぁ、高橋」
「何よ。というか、コンビニ寄っていい?」
「ん?なんか買うの」
「いや、あんたの家にいる時間を少しでも短くしたいだけ」
「つれねーな」
帰り道は旭川と一緒。
駅でいつも別れるけど、今日は違うのだ。
なぜなら旭川の家に寄るから。
旭川の家は母子家庭で、その母親さえも仕事が忙しくて帰ってこない。
1ヶ月に1回会えたら良いほうだと面白おかしく言っていたが一人で住む家は寂しすぎるんじゃないかな。
家は女子高生が一人で住むことを想定して作ってるわけじゃないんだから。
私がそんなことを考えてる間も旭川は一人で喋っている。
ただ一方的にずらずらと意味のないことを喋るのだ。ごく普通の女子高生と変わらないかのように。ずらずらと。
「ねぇ、高橋。聞いてる?」
「少しね。加藤さんの家の猫が犬用のご飯を食べたんだっけ?」
「それ、一昨日の話だよ、聞いてないんでしょ」
「…ごめん」
「いいよ別に。家、着いたよ。入って」
「うん、お邪魔しまーす
」
ドアを開ける。灯りのない家。
最初の頃は驚いたものだが今ではもう慣れっ子だ。
その瞬間。
階段の方から中年の男が降りてきた。
目があって、会釈をする。
旭川の方を見るとキョトンした顔をしていてでも、一瞬でその顔は敵を見る目に変わった。