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ESP’s  作者: 浪漫
如月 悠斗
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第四話 アルバート

一般的な学校の教室ほどある部屋にその男は居た。男の第一印象はその佇まいや、身に纏う白いスーツのせいか、どこか研究者を想像させた。



「そんなに緊張せずとも、そちらに座りたまえ。」



 白服の男は一歩も動かずに白服の男を観察する悠斗を見て、緊張していると思ったのか苦笑いをしながら悠斗に話しかけた。



「はい。」



 悠斗は一言だけそう呟くと、男に促されるままに来客用であろう椅子へと足を向けるが、先程までの黒服の男から醸し出される有無を言わせないと言うような圧迫感から開放されたためか、張り詰めていた気が少し和らいだのか、膝が笑っていることに気づいたが、目の前に男に悟らせたくはなかったのか無理やり足を引きずりながら指定された椅子へと腰を据えた。



「まずは、この場に来てくれたことを感謝するよ如月悠斗君」



悠斗の今の心境を感じ取っているのか微笑みながら男が口を開いた。



(ん・・・?)



何のことはない普通の会話(むしろ今の状況に不相応なほど丁寧な)であったのだが、悠斗は一抹の疑問を感じたが、すぐに悠斗はその答えを導き出した。



「なぜ・・・」



 予想外の答えに驚愕から、考えていたことを口にしていたのか悠斗は驚愕に染まる表情をさらに歪めた。この部屋に着いてから、少し気の和らいだ悠斗はその冷たく固まっていた頭脳・・・をフルに回転させこの場の主導権を少しでも握るために思考していたが、どうやらいまの一言で一歩出遅れたようだ。

 しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。

問題は、なぜこの男が



「名前を知っているのか、かね?」


 瞬間。

男からの言葉に、悠斗の体を言いようのない恐怖が走り抜けた。



(何故だ、何処で、何時から、どうして・・・)



一瞬思考を巡らせた悠斗更に体を強ばらせる事となった。

何故なら。



(あの黒服も俺の名前を知っていたじゃないか・・・!)



 緊張(または恐怖とでも言うが)していたからだとしても、普段の悠斗からは、全く考えられない失態であった。

それだけ自分が知らず知らずの内に追い詰められた極限の精神状態であった事に気がついた。



「簡単なことだよ、君の名前は事前に知っていたからね」



男は優越そうに口を開く。



「自己紹介が遅れたね、私の名前は・・・アルバートとでも名乗っておこうか」



偽名・・・

まあ、どうせ深い意味なんてないんだろうがな。



「それで? その高名な科学者さんからどんな用事なんです。わざわざ俺のことを調べてまでつれてきて大したことがない訳ではないでしょう?」



自分のペースを乱していた人物が目の前にいる事を思い出すと、悠斗は知らず知らずのうちに挑発的な態度に出ていた。

先ほどまで冷静を保とうとしていた人物がこんどは、挑発的な態度に出たことにアルバートは不敵な笑みを浮かべた。



「なるほど、報告の通りに頭の回転は早いようだね。」



『報告』この言葉で、悠斗の眉間に更に深い皺ができる。



「なに、我々は君を強制的にここに連れて来た訳では無いのだよ。 ただ君に興味を持ちそうなパズルを与えただけであって、ここに自ら赴いたのはパズルを完成させようとした君自身だ。」



アルバートは不敵な笑みを一掃に深めた。

確かに、悠斗自身ここに来たのは自分の意志であったし。興味を抱いたのは認めざるを得ないのだが、やはり誰かの手のひらで転がされるのは気持ちがいいものでもない。

ましてや、目の前にいるアルバートなる胡散臭い人物となれば尚更のことである。



「で? パズルを完成させたご褒美は何ですか?」



悠斗は、この気に食わない人物から少しでも情報を集めようと、なぜ自分をここにこのような当回しに招いたのかを、聞き出そうとした。



「なに、君には狩りをしてもらおうと思ってね。」



しかし、目の前の男は悠斗の心情を嘲笑うかのように、奇天烈な回答を持って答えたのである。



「狩り・・・?」


あまりの突飛な言葉に口に出してしまった。

たしかにメールでハンターに選ばれたと書かれていたが、現代日本のこんな都心部ではあまりにも聞き慣れないその単語に違和感を覚えた。



「君は超能力を知っているね?」



「俗にESPと呼ばれるものですよね?」



アルバートは満足そうに頷くとさらに言葉を続ける。



「君には超能力者狩りをしていただきたい」



(この男は一体なにを言っているんだ!)

悠斗はアルバートから発せられた言葉に憤りを感じていた。

 たしかに超能力の事は知っているが、それはSF映画やアニメ・小説の中の話である。

それに、知っているとは言ったが信じているとは言っていない。

あくまでも超能力はフィクションのお話である。



「確かに君が憤るのもわかる。 いきなり超能力があると言われても信じられる訳はないし、信じてもらえると思うほど楽観主義者でもない」


「だが超能力は存在するのだよ。」



アルバートは不敵に笑みをこぼした。

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