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第二章 #7【異なる自分】

ようやく第二章に入りました!

今回は直人が今の自分の姿に気付く話ですね。

では、本編をどうぞ!

#7【異なる自分】


目が覚めるとそこは自分の部屋のベッドの上だった。


「生きてるんだ・・・」


少し自分の声がおかしいと思ったが気のせいだろう、胸に手を当てて自分の心臓の鼓動を感じ、生きている実感をもった。


「(全て、‘夢’だったのか?)」


現実に魔術なんて存在するはずがない。

あまりにもリアリティのある夢だったので、自分がイマジネーション豊かな人間だったのかと驚いた。


窓から差し込む夕日の光が眩しい。

どこまでが現実で、どこからが夢だったのか。いつから俺は寝ていたのだろうか・・・


俺は様々な疑問を抱きつつ、何気なく寝返りをうった。


「?」


ふと感じたこそばゆい感覚。それは頬からくるものだった。


その原因を探ってみると、それは髪の毛だった。


しかも‘白銀’の。


驚いて上半身を起こすと、頭が引っ張られる感覚を覚えた。


辺りを見回すと長い白銀の髪が散乱し、幾らか自分で踏んづけていることに気付いた。


「えっ、なんだこれ!」


自分の出した声の高さに驚き、俺は慌てて口を塞いだ。


「(な、なにがどうなって・・・)」


俺は自分の今の姿を見て驚いた。

俺は今、見たことのある白い無地のワンピースを着ている。


この長い白銀の髪といい白いワンピースといい、細い腕といい・・・



―まさに夢の中で見た白銀の髪の少女そのものだった―



「まさか・・・」


俺は急いで飛び起きてベッドから降りた。


やはり視界が低い。どうやら背が彼女並みに縮んだようだ。いや、おそらく彼女と全く同じ背の高さなのだろう。


俺は急いで本棚に伏せてある小さな手鏡を手に取り、自分の今の姿を見た。


美しい白銀の長い髪に全てを見透かすような青い瞳、華奢な体つきだが瞳と髪の色が少女の存在感をよりいっそう強くしている。

俺が自分の心臓の鼓動を確かめた時にその事に気付かなかったのは、小学生並みのぺったんこな胸のせいである。


だがそこだけが男か女かを決め付けられる所ではない。

俺は躊躇しながらも男女を区別するあそこへと手を伸ばした。


スカッ


ない・・・


俺はあの少女・・・完全に女になっていた。



§ §



「・・・ということで報告は終わりや。質問はあるか?」


皆、神妙な面もちでいたが、誰一人手を挙げる者はいなかった。


「それじゃあ解散や」


僕の言葉と同時に静まり返っていた大部屋はガヤガヤと騒がしくなった。


今、僕は今回の‘黒月の使徒’の捕縛ミッションについて、大まかの話を‘仲間’のみんなに話していた。

‘仲間’とは、異能の力を持つもの・・・つまり魔術師としての才能をこちらの世界で持ってしまった者で構成された組織のことである。


‘仲間’の多くの人の親が、魔法世界で起きたある戦争が原因でこの化学世界に身を隠した魔術師である。

ちなみに僕の場合は父、木内 すぐるが魔術師である。


まあ、細かい話はまた後日。



「それで正宏、例の三人の話はしなくてよかったの?」


大部屋からぞろぞろと出ていくみんなを見ながら、今回のミッションの資料を整理していた僕に美琴は小さな声で聞いてきた。

「ああ・・・結局まだ彼女達が何者なのか分かってへんし、‘使徒’の連中やないと思うからこのことは少人数で解決しようと思てな。一応そのメンバーとして庄太郎と俊美にはこのことを話しといたから」

「相変わらず仕事早いね。部隊長の座でも狙っているのかな、うちの隊長さんは」

「んなわけあるかいな。あんなキッツイ仕事、綾瀬川あやせがわ 春菜はるなやないとムリムリ」

「春菜ちゃんの能力は‘分身’だからね。確かにあれだけの報告書を対処するのは、人一人では出来ないからなぁ」


‘能力’というのは、この化学世界で生まれた魔術師の才能をもった者が個々として持っている魔術とは違う‘特殊能力’のことである。

ちなみに何故そんなモノを兼ね備えて生まれてくるのかは、未だ分かっていない。


「ふぁ~っ。とにかく、その事で何か分かったら真っ先に私に教えなさいよね。私も気になっているのだから」

「はいはい、分かりましたよ美琴さん」


欠伸をしてから話す美琴に、僕は呆れながらもそう答えた。



§ §



自分の部屋の中でパニック状態に陥っていると、突然聞いたことがあるようなないやうな女性の声が聞こえた。


[おはようございます、マスター

「えっ、何、誰かいるの!!?」

[右腕ですよ、右腕]


俺はその声に従って自分の右腕を見た。


少し横に厚みのある真っ白なリストバンドみたいな腕輪に、今の俺と同じ青色の宝石が埋め込まれていた。

最初から着けていたようだが、身に着けていないような軽さから気付かなかったらしい。


「えーと・・・今の声は、あんた?」


俺は左手でその腕輪を指差しながら言った。


[はい。私は‘天使サポート用’の‘インテリジェント・ハーツ’です]


本当に話しているかのように、青色の宝石がチカチカと点滅している。

内容はさっぱり分からないが・・・


「えっと・・・あんたが何か、まだよく分からないんだけど」

[分かりました。順を追って説明しますね]


俺は話が長くなりそうなのでその場に座り、俺が短剣に刺されて倒れてからの出来事や、魔術についての様々なことを聞いた。



―「む・・・分かった。それで俺は生きているってわけだ」

[はい]


まあ、生きていることはありがたいことだが・・・


「で、・・・何で俺は女になっているんだ?」

[仕様です♪]


・・・ふざけているのかコノヤロウ。


「テメェ・・・何か言ったか」


脅すように言ったつもりだったが、俺の今の高く透き通るような声では迫力に欠けた。


[すみません。でもこの方法でしか、あなたを助けることは出来ませんでした]


どういうことだ?


「詳しい説明を要求する」

[了解しました、マスター


|彼女(‘インテリジェント・ハーツ’)は一呼吸おいて(いるように見えた)から話し始めた。


[先ほどの話の通り、自然エネルギーの一つに‘マナ’という魔術を使う際に必要とするエネルギーがあります。そして、重傷を負ったマスターに回復魔術を実行しようとしましたが、マスターの体は対魔力構造を体内にもっていたため、回復魔術が効きませんでした]


俺はそこまで聞き、ある矛盾点に気付いた。


「ちょっと待て。それじゃあ、俺には魔術が効かないってこと?それじゃあ、何故俺はその魔術で重傷を負ったんだ?」

マスターが受けた魔術は直接的な魔術ではなく、間接的な魔術であったためです。つまり、その攻撃自体に魔術がかかっているのではなく、存在する武器を魔術で地面を通過させただけなので、マスターが受けた攻撃は魔術による物ではないのです]


なるほど・・・


[そのため、回復魔術が使用不可能と判断し、緊急措置として肉体の‘再構成’を行いました]

「‘再構成’?」

[はい。マスターの肉体を媒体とし、魂の波長から生体パターンを検出、私の中にある‘再構成’のプログラムにょって、今のマスターの体を造りだしたのです]


つまり、遺伝子構造的なものを読み取って、それによって形成される肉体を再構成したということ・・・か?

有り得なさすぎて信じられないが、実際に今俺があの女の子として存在している以上、事実として受け入れなければならない。

だが、何故俺がこの姿なのかは解決していない。


[ただ、マスターの今の姿は仮の姿です]

「‘かりのすがた’?」

「今のマスターは本来の年齢より若い、マナが体に順応する時期の姿です。何故そうしなければならなかったのか・・・それはマスターの今まで停止状態にあった魔力炉は膨大なマナを生み出すことが出来るからで、マナに順応していないマスターの歳の体では負荷が大きすぎて、最悪の場合死にいたる恐れがあったからです」

「そ・・・そうなのか?」


背に腹は変えられないとはまさにこのことだ。死ぬよりかはマシってことか。


[しかし、その点については問題ありません。体がマナに順応するには5日間ぐらいかかりますが、マナが安定すれば自然に元に戻ります]

「ほ・・・本当か!?」

[はい、しかし・・・]

「これ以上言わなくても分かるぜ。用は少し時間がかかるが何とかなるって事か」

[はい、その通りです]


よし、5日間の我慢ってことか・・・

まあなんとかなるだろ。


「そういえば、あんた名前とかないのか」

[はい。マスターにつけてもらえれば光栄です]


よくあるパターンだな。

そうだな・・・


あ、そういえば、あの少女に‘アリア’って名前をつけてくれって言われたっけ。

何かあいつの思い通りに事が進んでいるようで癪にさわるが・・・


「‘アリア’・・・なんてどうだ?」

[‘アリア’。起動コード確認]


え、‘起動コード’?突然なんだ?


[‘人格データ’を起動します]



すると目の前に魔法陣が現れ、いきなり背の高い金髪の美女が現れた。


そして・・・抱きつかれた。


「お嬢さまぉ~~!!会いたかったです~~っ!!」


流れるような金髪をバサバサ揺らし、俺の胸元に頭をこすりつける彼女。


「ふわっ!だ、誰だよあんたっ!」


気が動転して変な声だしちまったじゃねえか。

取りあえず、抱き付いている手を放してくれませんか。


「‘アリア’ですよ、ア・リ・ア♪」

「って、あんた‘インテリジェント・ハーツ’なのか!!?」


埋めていた顔を上げ、にっこりと笑う‘アリア’。

思わずその笑顔にドキッとしてしまった。

って、いかんいかん。


「はい、お嬢様。私は‘《天使》補助プログラム’の‘アリア’です。実は過去のマスターが私を‘アリア’と名付けてくださった時の人格データを元に、私は構成されているのです」

「は、はぁ・・・」


つまりあれか。その人格データによって俺の呼び方が‘マスター’から‘お嬢様’に変わったってことか。まあ今の俺の姿なら‘お嬢様’で間違ってはいないが。


「そういうことですよ、お嬢様♪」


心を読んだ!?


「お嬢様の思考は私と繋がっていますから」


なるほど。


「えっと・・・それで、‘アリア’が実体化している理由は?」

「もちろん、お嬢様をサポートするためですよ。それに、大事なこと忘れていませんか?」



「明日から学校じゃないですか」

「ん?ああそうだな」

「その姿で行くのですか」


・・・


「あーーーっ!!!俺って今、完全に別人じゃん!!?」


そうだ!こんな小学生みたいな、しかも女の姿で学校へ行ったって追い出されるだけじゃん!?


「そのために私が居るんじゃないですか」


自信満々にそこそこ豊満な胸をドンッと叩く。


「お嬢様、頭の中で過去の自分の姿を想像イメージしてください」


‘過去の’って・・・

まあつまりは男の芹沢直人を頭の中で想像しろってことか。


俺は目を閉じて男の時の自分の姿を想像した。


「いいですよ、目を開けて見てください」

ん?今、‘俺’の声が聞こえたような・・・


目を開けると、そこには‘俺’がいた。



to be continued...




~あとがき劇場~(第六回)


正宏「今回から直人の替わりに登場するある人物を紹介するで!

   その人物とは・・・」


アリア「才色兼備のアリアさんで~す!!」

直人「なっ!?ちょっと待て正宏!俺、降板!!?」

正宏「ウソやウソや。今日からアリアさんも一緒にこのコーナーに参加してもらうだけやから」

直人「そ、そうか・・・(ちょっと焦ったぜ・・・ここの作者、何するか分からないからな)」


氷雨「何か言ったかな、直人君♪」

直人「いえいえいえ!!何でもありません!!」

アリア「あはははは!焦るマスター(※ここでは直人は男のままなので呼び方もマスターのまま)も可愛い♪」

直人「んなっ!?アリア、変なこと言うなよ!!てか、才色兼備じゃねぇだろ絶対!!」

正宏「なんか僕だけ置いてけぼり食ってるような気がする・・・」



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