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第二章 #10【奈緒の憂鬱】

今回は《天使》の正体が明らかになります。

#10【奈緒の憂鬱】


「抱きつくの、禁止ですっ!!」


私こと芹沢直人、改名‘芹沢奈緒’は、もう少しでアリアに抱きしめ殺されるところだった・・・


「そんなあ~。確かに今回は私が悪かったです~、でも禁止は酷いです~、ぐすん」

「うっ」


う、上目遣いで、しかも目を潤ませるのは反則だあ~っ!


「分かったわ・・・禁止は撤回します。でも程ほどにし」

「ありがとうございますっ、お嬢様♪」

「うぐっ」


またまた抱きつかれる私。さっきよりかはマシだが・・・

ま、いっか。



女言葉に慣れてしまい、かつアリアにとことん甘い奈緒であった。



§ §



「一体、ナオ殿は何者なのでしょうか・・・」

「そうね・・・あの可愛さは半端ないわね」

「確かに・・・」


私もフィーを不埒な目にあわせられて、奈緒に謝られた時のあの顔・・・

一瞬ときめいてしまったではないか///

って、その事ではなく。


「いやいや、そのことではなくて・・・彼女の素性のことです」



私はフィーからあのペンダントが‘インテリジェント・ハーツ’(アリア)であった事や、そのマスターが奈緒であったことに驚きを隠せなかった。


しかもそれだけではない。

フィーの話によれば、アリアは起動する際、‘《天使》補助プログラム’と言っていたらしい。


私達、魔法世界に住むほとんどの人は、その《天使》の存在を知っている。



今から30年前のこと、自らを‘魔王’と名乗る男が魔法世界に現れ、猛威を奮った。

魔王に対抗するために、魔法政府は優れた魔術師や剣術師を戦線に投入。

その結果・、九割の剣術師、八割の魔術師が死亡した。

いや、違う・・・実際は酷かった。


ーその内の八割の魔術師、剣術師が魔王に寝返ったのだー


魔王が彼等に何を吹き込んだかは定かではないが、その事実は政府軍の大敗という結果に終わった。


そして・・・

魔法世界全土が絶望に打ちひしがれていたその時、救世主が魔法世界に現れたのだ



それが・・・《天使》。



彼女が自ら名乗ったわけではないが、白銀の髪に白い翼・・・まさにその姿は《天使》そのものであった。


彼女は魔法世界の‘精霊’の力を借りて魔王を倒したらしい・・・


そこまでが文献に残っている話だ。(一部、政府によって隠されている所もあるが。)



そして、フィーはその《天使》の象徴である真っ白な翼を見たという。

しかし、奈緒の話から《天使》という言葉は出てこなかった。



「リーザ、やっぱり奈緒が敢えてあの場でその事について、私達に話すことをしなかっただけなのかな」


「もしくは、アリアが意図的に彼女に話していないのか・・・ですね」


おそらく後者だろう。もし前者なら《天使》がどういう存在なのかを知りたいはず。

魔法世界の住民である私達なら知っていると踏んで、聞いてくるだろう。アリアが知っていて、既にその事についても話しているならば別だが・・・



そして、奈緒が《天使》だと仮定すれば、恐ろしいことに気づかされる。


私達の任務はある人物、即ち奈緒・・・《天使》を見つけ出して力を借りることであり、それは私達の未来に関わるという話だ。


つまりは・・・


―魔王が復活するということ―



魔王の復活は、魔法世界の崩壊・・・


その答えにたどり着くために用いた時間はそう長くはなかった。

特にフィーは私よりも先にその答えにたどり着いたのだろう、一度アパートに帰ってきたとき彼女が終始無言だった原因は、私だけではなかったのだ。



「・・・このことを奈緒殿に伝えますか?」

答えが分かっていながらも、私はフィーにそう聞いた。


「駄目よ・・・正義感の強い彼・・・彼女なら、私達の世界のために戦ってくれるでしょう。でも、それでは彼女への押しつけにしかならないわ」


確かに何の関係もなかった私達を助けてくれた彼女なら、そうするだろう。


「しかし、いずれにしても何時かはこの事を彼女に話さなければなりません」

「そうね・・・でもそれは彼女が決断したときの方がいいわ」

「・・・そうですね」


私達が彼女かれを巻き込んでしまったのだ。



これが運命だと知れば、どれだけ楽だろうか・・・



私達は命の恩人でもある彼女に、最大限のサポートをしようと心に誓った。



§ §



「どうしよう・・・」


女言葉が板についてきた私だったが、今まで色々ありすぎて忘れていた一番の問題を思い出し、心底悩んでいた。


―家族にどう説明すればいいのだろうか―


今は私のベッドの上に寝そべって本棚にあったマンガを読んでいるアリアも、さすがに今回は「どうにかなりますよ~♪」と軽口を叩かないでいることから、事の重大さが分かっているようだ。


「正直に話してしまえばいいじゃないですか」


・・・分かっていなかったようだ。

こいつを信じた私がバカだったと呆れてしまい、深い溜め息をついた。


「あのですね、アリア。化学世界の住民である私達は、魔術を信じていません。つまり、私が魔術でこのような体になってしまったという事を話しても、信じてもらえないのです」


容姿が全くの別人となっている今の私では、聞き入れてくれる可能性は低い。

どうしたら・・・



グルルル・・・



・・・悩んでいたらお腹が減ってきた。


「お嬢様、おなかが空いたのですか?」

「まあ、うん。えっと、そうね」


曖昧に言葉を返す私。この体になってから何故か感情の起伏が激しく、アリアにおなかが鳴る音を聞かれたことが、なんとなく恥ずかしくなったのだ。


そして、アリアは寝そべっていたベッドから降りた。


「さて、台所は何処ですか」


台所?まさか・・・


「あ、アリア?台所で何をするのかな?」

「お嬢様の夕飯を作るに決まっているじゃないですか」


なっ!アリアにそんなスキルがあったとは!!


「ちょっと失礼です~。お嬢様をあらゆる面でサポートするのが、私の使命なのですからね」

「魔術での戦闘だけじゃあ、なかったってこと?」

「もちろんですよ。私が人型をとっている理由の一つです」


なるほど・・・単に‘俺’に化けて遊ぶ為じゃあなかったのか。


「遊んで欲しかったのですか?♪」

「遠慮します」


遊ばれる身にもなってみろ、寿命が縮むだけだぜまったく・・・



ということで、二人して一階の台所へと向かった。


本当は今日の夕飯は出前をとることにしていた。

というのも、今日はいつも夕飯を作ってくれる‘妹’がいないからである。


妹の名は芹沢雪音ゆきね

私の一つ下で高校一年生。

両親が仕事でいない間、家事全般をやってくれていて、中学生とは思えないほどのしっかり者である。


その雪音はというと、昨日から友達の家に泊まり込みで遊びに行っている。向こうで今日の夕飯をご馳走してもらうとのことで、遅くなるらしいが9時ぐらいには帰ってくるはずだ。



ここ数時間で得た色々な情報を整理したり今後についても模索したかった私は、どうやら料理の出来るスキルは本物らしく、「あり合わせで作るので、待っていてください♪」と言うアリアに台所を任せ居間で横になることにした。



ほんと、頭がパンクしそうだ・・・



―アリアが作ってくれた夕飯を美味しく頂いた私は(ちなみにアリアの食事は魔力らしい。私の。)、疲れをとるため風呂にはいることにした。



で、・・・忘れてたよ。



今の私、女の子だったぁ~~っ!!?



風呂ってことは、は・・・裸になるって事だよな!いや、いくら幼児体型であってもお、女の子の裸だぞ!!心は‘直人’だってのに無理だって!!


とりあえず、アリアのお誘いを断ってみよう。


「あ、アリア。また明日で」

「ダメです♪さあ、行きましょう♪」


そんなことを許すアリアさんではない。強制連行開始っ!


駄目だ・・・力では勝てないよ。


ニコニコしながら暴れる私を引きずっていくアリアさん。


ああ・・・やけに楽しそうだなぁ、オイ。


マジどうしょう・・・



§ §



「・・・以上です、父さん」

「ああ、報告ご苦労」


会議を終え、すでに父さんが家に帰っていることを知った僕は急いで帰り、父さんに書斎にて今回の‘使徒捕獲作戦’の一部始終を話した。


「すまなかったな、正宏。まさかこのタイミングで‘使徒’がこちらに来るとはな・・・」

「遺跡への調査ではしかたないですよ、重要な仕事だし。でも、やはり‘使徒’の連中は、今回の遠征を意図的に狙っているのでは?」

「・・・内部に協力者スパイがいると?」

「可能性はあります・・・仲間を疑うのは気が引けますが」

「そうだな・・・万が一のことも考えて行動しなければならないな。それと・・・」


父は真剣な目つきで言った。


「魔術師の二人組と突然現れたというその少女の件は、おまえに任せていいか」

「はい、父さん。全力で招待をつきとめます」



―話が終わり父の書斎を僕は、携帯を取りだし連絡が付かず行方不明になっている直人に再度電話をかける。


プルルルル プルルルル


・・・・・


「やっぱり、でーへんか」


とりあえず、このことを直人の妹、雪音ちゃんに連絡しておこうか。


「・・・送信っと」


僕は彼女にメールを送ると、廊下にある窓を通して暗闇に輝く月を眺めて溜め息をついた。



「ったく、どこいったんや、あの直人バカ



§ §



シャカシャカシャカシャカ


「ううう・・・」

「痒いところはありませんか、お嬢様?」

「だ、大丈夫・・・」


ちょ、直視できない・・・

目を閉じたままでいることで理性を保とうと考えた私はそれを実行しつつ、アリアに誘導されて風呂場の中についた。

そして、椅子に座らされてアリアに私の長い白銀の髪をゴシゴシと洗われていた。



ザバーン


「ひうっ」


シャンプーを洗い流すアリア。

流すと同時に、頭に重みを感じる。

長い髪の毛が水を吸うとこんなに重たいのか・・・

大変なのね、女の子って。


アリアは私の髪を手際よくアップにする。

そして、私にとって最大の難関が来た。


「お嬢様。それでは体を洗いましょうか♪」

「は・・・はい」

ギューッ

「!!?」


理性を保つために絶対に目を開けるものかと、私は固く目を瞑っていた。

それがアリアの変な気に触れたらしく、


「お、お嬢様、可愛いです~~!!」


と言われ、


ムギュ


「ふわぁっ!!ちょっと、アリア、離れて~っ!!」


と抱きつかれてしまった。


ああ、ダメだ・・・状況が悪化の一途を辿っている。

しかも背中に柔らかいものが当たっているし!!


「ぐふふふ~♪真っ赤になって、可愛い~~っ♪」


さらに背中に胸を押しつけてくるアリア。

ダメだ・・・意識が飛びそう・・・



「だ・・・誰か、たす、け・・・て・・・」


頭が上気し、さらに場所が風呂場で湿度が高いこともあって、本当に気を失いそうだった。


何故か昔のことを思い出す。


「ゆき・・・ね・・・」


そして昔のように助けに来てくれると思って、私はそう呟いていた。


本当は私が白銀の髪の少女という別人になっているこのタイミングでは、非常に不味いのだが。


ドタドタ


え?


誰かの足音が近づいてくる・・・?


ガラガラ



「はあ・・・はあ・・・お兄ちゃん!いるの!!?って・・・」


息を切らして風呂場のドアを開けたのは、雪音だった。


そして彼女の見た光景は・・・


気絶しかけている少女、そしてその少女を後ろから抱きついている女性。


「どなた・・・ですか?」


私の声が届いてしまったのか、運悪く妹の雪音、登場。



to be continued ?






~あとがき劇場~(第九回)


奈緒「・・・で、なんで私、女の子の姿なの?」

アリア「都合上、こうなりました。それにしても・・・膨れっ面も、可愛いっ♪」

奈緒「ふわっ!?

(アリアに抱きつかれる奈緒。)

ちょっ、アリアっ!正宏も見てないで助けてよ!!」

正宏「いや、その・・・ムリっ!!」

奈緒「薄情者ーっ!!」


氷雨「・・・こうして、またモフモフされる奈緒なのでした」


アリア「もふもふ♪」

奈緒「ふわぁっ!ひゃあっ!ちょっ、離してぇっ!」


数分後・・・


奈緒「ニャーーッ!!シャアァァッ!!」

アリア「お、お嬢様、落ち着いて」

正宏「奈緒が猫化して、現実逃避したっ!」



-fin-



Q:氷雨さん氷雨さん。どうしてあなたは同じネタを繰り返すの?

A:若輩者だからです・・・orz


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