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第二章 #9【心の在処】

今回は少し心温まる話です。


#9【心の在処ありか


「イタタタタ・・・まだ頭がジンジンするです~」


こめかみを押さえ、うずくまるアリア。

自業自得だっての。


「そういえば、アリアは‘インテリジェント・ハーツ’なのだから、物理的な攻撃は効かないんじゃないの?」


と質問するフィレス。


‘主マスターのみ物理的な攻撃が出来る’という仕様なのです・・・ぐすん」


お前にとっては、悪い仕様だったな。


「これに懲りてアホな行動をとるな、分かったか?」

「分かりましたぁ・・・」


彼女の主(マスター)として、俺が舵取りをしなきゃならないからな。

ま、とにかくだ。


「話を戻すけど、確かに魔術は使えるかもしれないが、今の俺では強力な魔術は使えないと思う。とりあえず、あと五日待ってくれ」


俺が‘仮の姿’であることなどをすでに話して知っているフィレスとリーザは、こくんと頷いた。


俺だってそれなりの覚悟が必要だ。なにせ、俺の力を必要としているのは分かるが、何故必要なのかはフィレスにもリーザにも知らされていないらしい。

最初は嘘だと思って聞いていたが、彼女達の真剣な表情を見てこれは本当のことなんだと悟った。

もしその魔法世界に行ったとしても、いつ帰れるか分からないし、帰れないかもしれない。家族には話をつけなければならない。今のこの姿のことも・・・


本当に俺は5日間で決断出来るのだろうか・・・



「お嬢様なら大丈夫です。私もいます。自信を持ってください♪」


俺の気持ちを察してか、アリアはまだ頭をさすりながらも、笑顔でそう言ってくれた。


「そうだな。なるようになるか」


俺は笑顔でそう言うと、すでにアリアから手を離し座布団に座って対面の位置にいるフィレスとリーザの方に向き直った。

何故かまた頬を赤くしているが。


「それで、フィレスさんリーザさんはそれまでどうしますか」

「あ、えっと、とりあえずあの時に現れた少年、少女が何故‘使徒’について知っているか気になるので、私達は別行動をとらせてもらいます」

「しかしフィレス様、あの者達が危険因子かもしれません」

「リーザ、おそらくそれはないと思うわ。‘使徒’と対抗しているという話が嘘だとしても、‘使徒’の二人組を助けようともせず見ていただけらしいから、‘使徒’ではないだろうし」


実際、俺はその姿を見たわけではないが、彼女等を狙っていた‘使徒’のことを知っているということは、要注意人物だな。


「まあ、それに関しては俺も手伝うよ。俺の方がここらの地理に詳しいし。出来ることがあれば協力するよ」

「ありがとうございます」


そういえば、フィレスやリーザは俺に敬語を使っていることに気付いた。


「いやいや、お礼される程のことじゃないし、敬語とかはいらないから」

「なら、私達にも他人行儀に‘さん’を着けないでもらえるかな」

「いや、それは年上「もらえるかな?」・・・はい。」


‘年上’という言葉に笑顔をひきつらせる二人を見て、俺はすぐに了承した。

女の子には歳はNGワードだったな・・・


「それなら、俺も‘直人’でいいよ」

「それじゃあ、ナ「ダメですよ!!」・・・?」


突然、アリアが口を挟んできた。


「お嬢様は女の子なのですから、可愛い名前がいいです!」


また訳の分からんことを・・・


「お嬢様、私はお嬢様の名前に‘奈緒なお’を提案します」


また捻りのない名前だしっ!!

俺の‘なおと’の‘と’を取っただけじゃん!



―だが結局、フィレスやリーザが「可愛い」とか言い出して俺の抗議も虚しく、俺の名前は‘奈緒’になった。


そして、話し込んでいたこともあって日はすでに落ち、辺りも真っ暗になっていたので、今日の所は解散することになった。

とりあえず、俺は学校の始業式があると二人に告げ、午後からまたここに来てもらうことにした。ついでにその時、アリアから念話について教えてもらい、何かあればそれで伝えることになった。


「じゃあナオちゃん、また」

「ではナオ殿、また明日」

「はい、また明日です♪」

「おう、また明日な」


そう言って部屋を出て行く二人。

女の子二人をこんな暗い中を歩かせるのは、と思ったが、今の俺の姿の方が危ないし、リーザがいるから大丈夫とフィレスに断られた。


フィレスに“奈緒ちゃん”、リーザに“奈緒殿”・・・

なんか気が滅入る・・・



―二人が出て行った後、何故かアリアはメガネを出してかけていた。

まるで教師みたいな出で立ちだ。


「さて、お嬢様?」

「何だよ、ア」

「“何だよ”ではありません。もっと女の子らしい話し方をしてください」

「はあ!?」


またいきなり何を言い出すかと思ったら・・・


「俺は男だ!」

「今は女の子では?」

「だから、お」


サッ

スパーンッ!!


「んっ!!?」


痛快な音が部屋中に響いた。


「イタタタ・・・」


俺はあまりの痛さに耳を押さえた。

音の割には叩かれた痛くなかったが、その大きな音で耳が痛くなったのだ。


「お嬢様。また男口調になっております」


アリアのその右手には、キラリと光るあるモノが握られていた。

それは・・・



古代兵器、‘ハリセン’出はないか!!?いや、古代兵器ではないが・・・



「ちょ、アリア・・・なんでそんなモノを・・・」

「もちろん、お嬢様の教育用にです♪」


ハリセンという名の武器を片手にニコッと笑うアリア。

いやマジ怖いから・・・


「お嬢様、もし外を出歩いたときにお嬢様のような可愛いらしい少女が男口調で話していたら、どう思われますか~?」

「それはそれで、オレっ子みたいで・・・」


スパーンッ!!


「いひゃいっ!!」

「変な子ですよ、へ・ん・な・こ!」

「う~~っ。分かったよ、やればいいんだろやれ・・・」


再び振り下ろされようとするハリセン。


「・・・分かったよ。女口調で喋るよう気をつけるから、これ以上叩かないでよね!ふんっ!・・・これでいいの?」


・・・ツンデレ口調が入ったような気がするが、気のせいだ。


パサッ・・・


すると、突然俯いてハリセンを取り落とし、肩を震わせるアリア。

あ、何かまずかったか?


「どうしたの、アリア?私、何か不味いこと言ったかな?」

「か・・・」

「か?」


「可愛いです~~っ!!!」


ムギュッ


「ふにゃっ!!」


反射的にアリアの抱きつきを回避しようとしたが、遅かったようだ・・・変な声まで出してしまったし。

また顔をアリアの胸に押しつけられて苦しい・・・


「(モゴモゴ)は~な~せ~っ!!」

「いやです♪“放して欲しくない”の意味ですよね~?」



ああ・・・これは、‘無限ループ’だ・・・


結局、俺は抵抗できずに窒息寸前まで抱きしめられていた。

トホホ・・・



§ §



とりあえず、彼・・・いや、彼女に協力を仰ぐことは出来た。

あとは・・・



無言のまま、私達はアパートについた。

そして、



「ごめんなさい、リーザ!」


部屋に入り戸を閉めると、私はようやく謝る決心をして彼女に謝った。


「えっ?いや、顔を上げてくださいフィレス様!」

「いいえ!私は避けられたはずなのに、あなたを危険な目に遭わせてしまった。そして、あなたを・・・し、死なせてしまいそうだった!わ、私は・・・」

「もういいですよ、フィー」


泣き崩れる私に、リーザは昔の呼び方で私を呼び、両手で体を支えて抱きしめてくれた。


「私はフィーを護るためにここにいるのだから・・・もっと、私を頼ってくださいね」


その言葉に私は‘はっ’とした。


私は彼女が昔のように親しい名で呼んでくれなくって、怖かったのだと。

私が一番の信頼感を持っていた彼女が、何処か遠くへ行ってしまったのではないか、と。

魔法世界にも学校、魔法学園がある。

そこに通っていた頃から、私はいつも孤独だった。

成績優秀、魔術に関してもトップクラスで‘荒れ狂う紅蓮の炎’の異名を持たされ、魔術にけた大人にも引けを取らない何者をも寄せつけない強さを持っていた。

大人達には誉められていたが、同世代の同じ学園の子供達は異名を恐れて近づこうとせず、 学園での私は浮いた存在だった。


私はあの頃から孤独だった・・・

ふと思い出すのは幼き頃に、共に遊んだリーザのこと。

彼女となら友達として、いや、一番の親友として分かり合えるだろう。

私はずっとリーザに会いたかった・・・


父上が音沙汰なかったリーザが、ローウェント家の近衛騎士団に入団していると聞き、私は彼女と交わした約束を思い出した。


―「フィーは私が守るっ!!」―


私は嬉しくて仕方がなかった。

父上も、今まで元気がなかった私が喜ぶ姿を見て、今回の任務の護衛にリーザを当ててくださったのだ。


だが・・・久々に出会ったリーザは私を‘フィレス様’と呼び、敬語で話しかけてきた。


彼女から感じた疎外感・・・


もちろん、彼女はローウェント家の近衛騎士団に所属していることから、警護対象への礼儀作法に沿っていただけのことであり、彼女は何も悪くない。


それなのに、いつの間にか私は彼女との間に壁を張り、彼女さえも寄せつけないようにしていた。



「ずるいよリーザ・・・こんな時だけ私のことを‘フィー’って呼ぶなんて・・・」


でも、今は・・・彼女の発した‘フィー’という言葉は、私の心を温めてくれる魔法の言葉だった。

彼女が私のことをそう呼んでくれるだけで、私は彼女に再び心を許せた。

今なら素直に言える・・・


私が彼女に一番に言いたかった言葉。



―「・・・おかえり、リーザ」―

―「ただいま、フィー」―



―それだけで、私達は分かり合えた。

昔のように。



to be continued...





~あとがき劇場~(第八回)


直人「ここで、反省会を行いたいと思います」

アリア「反省会?なんのこと?」

直人「・・・アナタのことですよ、アリアさん。何ですか、前回の話は?」

正宏「(直人の奴、敬語になっとる!こりゃあ、本気で怒っとるわ・・・)」

アリア「あの・・・話を盛り上げようと思って・・・」

直人「“話を盛り上げようと思って”?ふーん・・・へぇー・・・」

正宏「お、落ち着け、直人!」


氷雨「私が叱っておきますから、安心してください」

直人&正宏&アリア「「「チーフ!!!」」」

氷雨「アリアさん、反省しなさい。『グッジョブです!!』」(※『』は念話)

アリア「えっ・・・あ、はい、すみませんでしたっ!『い、いいんですか?』

氷雨「だいたい、この話はですね・・・『もちろんです!こういうのがないと、盛り上がりません!これからもよろしくお願いしますね、アリアさん!』」

アリア「はい・・・反省しています・・・『あ、ありがとうございますっ!!』」


直人「・・・なんか説教とは別の話をしている気がする・・・」

正宏「僕もそう思う・・・」


-fin-


あとがき劇場で雰囲気を壊してしまった氷雨です・・・

でも、めげませんよ!

あっちにふらふら、こっちにふらふらな話の構成であることは改善できません、ご了承下さい☆




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