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第一章 #1【とある夏の最後に】

#1【とある夏の最後に】


・・・敵戦力、残り200。タイムリミットまであと30分。

くっ・・・このままでは・・・間に合わねえ!!


だが、しかぁ~し!!


「うおぉぉぉっっっ!!負けられーん!!」


スガガガガ

ドゴーン!


敵、100機を殲滅。残り100機。


「よし、残り100!だが気を抜くな、オレ!」


あとは・・・



数学の問題50問のみ!




とある占い師の持つ、最新の【予言の書】に記された記述の一つにこうある。


-魔王復活まであと二時間―


そしてその出来事の原因が俺にあったとは・・・




夏の終わりを告げようとしていた今日この頃。

藤ヶ丘高校二年生である17歳の芹沢(せりざわ)直人(なおと)・・・つまり俺のことだが、丁度その時の俺は二階の自室に籠もって夏休みの宿題を完遂しようとしていた。

外の茹だるような暑さと共に喧しい蝉の鳴き声を、科学が生んだクーラーによって素晴らしい空間へと変容した部屋と防音製に優れた耳栓により、意外と早く終わりそうだ。


・・・や、やっとオワタ・・・


はあ・・・手ごわい敵だったぜバカヤロウ。

と、愚痴をこぼしつつも達成感をひしひしと感じつつ、俺は大きく伸びをした。


・・・と、そんなことしている場合じゃなかった。


俺は急いで椅子から立ち上がり、耳栓を外し、クーラーを切り、腕時計を確認する。

あと3分しかない!!


俺は急いで胴着に着替えて部屋を飛び出し、階段を下り、玄関で靴を履き、二階建て一軒家である家を飛び出した・・・と見せかけて、一軒家のすぐ隣に建っている道場に猛ダッシュで向かう。

そして・・・


ダッダッダッ

ガラガラ

「たのもーっ!!」

「・・・遅い、あと廊下は静かにな」

「・・・すみませんでした」


少し遅れてしまったようだ。

白髪の古風な顔立ちをしている祖父は、既に胴着を着込み傍らに竹刀を置き、正座で静かに待っていた。


「ふう・・・直人はワシより強うなったが、礼儀作法はダメダメじゃな」

「面目ありません」


自分ではその事を理解しているつもりだが、どうも畏まるのは俺のキャラじゃないから、なかなか難しいものだ。


「まあよい」


祖父はスッと立ち上がると、キリッとした表情になり、手に取った竹刀を握り構えをとった。

俺も部屋の隅に立てかけられている数本の竹刀から一つ選び、彼の前で構えた。


「それでは・・・始めるぞ」



泉流剣術道場。

関助(かんすけ)(母方の祖父であることから、姓は違うが)は泉家代々の剣道の道場を開いている。

その事もあって、俺は幼い頃から剣道の技術を叩き込まれ…いや、俺の場合は3歳の頃から積極的に習い始めたらしい。

今も剣道は好きだが、物心がつき始めた頃に聞いたこの事には、流石に俺も驚いている。


我ながら3歳で竹刀に興味を持つとか、どんな子供だよ・・・


容姿、性格はいたって普通、成績も常に平均的である俺の、唯一といっても過言ではないほどだがその剣道だけは得意な分野である。

といっても・・・ごく一般的な剣道をやっているわけではない。

表向きは普通の剣道を教える関助だが、泉流剣術を継承するのは・・・身内のみ。

第一に胴着といっても羽織に袴のみ。防具を使用しない。


泉流剣術はいわば、

【殺しの剣】。


代々、様々な型を造り出し、脈々と受け継いできた泉流剣術はある時代まで最強と(うた)われていたが、継承するのは血縁関係のある者のみ。まさに諸刃(もろは)の剣、一家が途絶えれば、その技術は闇に葬られてしまう。

関助爺ちゃんによると、二代前の継承者は泉流剣術を途絶えさせないために、歴史の表舞台から消え去った・・・

その事あってか、丁度その頃に起こった大規模な剣術道場の解体から身を免れたそうだ。

そして今に至る。



チャッ


竹刀を再度握り直し、俺は間合いをとるため数歩下がる。


防戦一方だな・・・

関助爺ちゃんは俺を自分より強いとは言ってはいるが、そんなものは立て前であり実際はその実力はあまり変わらない。

・・・やはり強い。


なら・・・!


左足を踏み込んで俺は素早く間合いを詰め、攻撃を仕掛けた。


「ヤーッ!!!」

タンッ!!!


ブンッ

キュッ


タンッタンッタンッ!!


かけ声と共に、素早く竹刀を振る。

間合いを詰めつつ、自ら編み出した最新の技(およそ20秒前に考えた)を使うタイミングをうかがう。

さっきとは逆に関助爺ちゃんが防戦一方となっているが、そろそろ反撃をしてくるだろう・・・


「ぬぅ・・・とわっ!!!」

カンッ!!

「っと、(あぶね~!!)」


少し反撃までの時間が長かったので気を抜いていた俺は、危うく一本とられるところだった。

こりゃあ、今日も長丁場になりそうだ・・・



だが結果的に、ものの五分で(いや、長いか?)決着がついた。

というのも爺ちゃんは最近持久力が落ちてきていて、体力が持たないらしい・・・本人はあまり自覚はないようだが。



「イタタタ・・・いやあ、やっぱり強うなっとるのう」


爺ちゃんは俺の最後の一撃が当たった脇腹をさすりつつ、よっこらしょっと立ち上がった。


「そんなことないって・・・」


あはははと笑いながら照れ隠しに頭をかく俺。


「ふう・・・これでお前に安心して泉流剣術を任せられるのぅ」

「いやいや、まだまだ爺ちゃんには適わないって。最後の‘風凪(かぜなぎ)’が決まっていたら、負けてたし・・・」


‘風凪’とは数十ある泉流剣術の型の一つである。


「ガハハハ、そうかの。だがあれを避け、ワシに一撃を当てたのだから、お前は十分強い。自信を持ちなさい」

「ああ。ありがとな、爺ちゃん」


やっぱり少しは強くなった・・・ということなのかな。


ぐううう・・・

結構集中していたせいか、お昼を過ぎていたことに気付かなかった。


「おお、もうこんな時間か。お昼にするか。直人、先に用意しておいてくれ、後片付けはワシがしておこう」

「了解です」


片付けを手伝おうと思っていたが、爺ちゃんに昼飯の準備をするように言われたので、俺は先に道場をあとにした。



§ §



「そういえば直人、宿題は終わったのか」

「もちろん、なんとか終わらせたよ・・・」


昼食後、俺と爺ちゃんは居間で一服していた。


「んあ?そう言えば、忘れてた」


俺はそう言うと、二階の自室に携帯電話を取りに行った。

高2になって、やっと買ってもらったのだが、俺が携帯電話を持ったとたんに、親友の木内(きのう) 正宏(まさひろ)からのメールが毎日のようにきている。

といっても、あまり迷惑しているわけではない。

正宏は同じ藤ヶ丘高校に通う同級生で、二年生から新聞部の副部長を任されているほどの情報通だ。(実際のところ、部長である三年の先輩よりか情報通なので、実権を握っているのは正宏である。)

そして今ではいち早く俺にその情報をメールで教えることが日課になっているらしく、毎日面白い情報に笑わせてもらっている。



「おっ、メール着てる。なになに・・・」


・・・ん?


そこにはこう書かれていた。


【緊急召集。例の組織の一味をKが確保した。現在、尋問を実行中。E地点に集合すること。そこで情報を提供する。】


・・・・。

ナニコレ?極秘メール?

ムムム・・・気になる・・・


ピッポッバッ(電子音、古っ!)


「おう、正宏。さっきのメールだけど。・・・ん?なに?・・・いや、だから緊急召集ってメールで・・・そう、それ。え?ゲームの話?そなの?マジで?本当に?えーー、っておい」


ブチッ


切りやがった・・・


いや、ね。だから、ね。怪しすぎるんだよね。気になるんだよね。どうなってるのかな~・・・


イライライラ・・・


「あ゛ーもうっ!!!気になる!マジ気になる!!つーか何?俺に何か隠していることは間違いない。ってことで・・・」


ダッダッダッ


「爺ちゃん!俺は迷宮入りとなった事件を解決してくるよ!じっちゃんの名にかけて!」

「・・・よう分からんが、外に出るんなら気を付けるんじゃぞ」

「行ってきまーす」


俺は正宏の家と向かう・・・真実を知るために!!!



§ §



「ヤバい・・・やってもた・・・orz」


直人の親友こと僕、木内正宏は境地に立たされていた。

まさか・・・直人にまで出していたなんて・・・

とりあえず、言い訳を考えなければ。



パターンその1

「実は・・・ドッキリでしたぁ!」

「何の?」



パターンその2

「漫画の台詞でさぁ~」

「誰だって」



パターンその3

「ゲームで」

「それさっき使った」



パターンその4

「・・・少し、頭冷や」

「ダメダメダメダメ!ギリギリアウト!てか俺の台詞じゃないか、逆に!」



・・・面白さに欠ける。


いやいやいや、そんなことしている場合じゃなかった。

兎にも角にも、この状況をなんとか打破しなければ。


ガラガラ


「おーい、正宏はいますか~」


あはは、もう来ちゃった☆


って、ノオオオォォッ!!?

そうこうしている内に直人の奴、来ちゃったよ・・・

しかも今、家には僕しかいない。


「どうしたのかな、直人君。いきなり来て・・・」

「おおっ!!友よ!!・・・チェストーッ!」

「のわっ!!」


ズゴッ



うう・・・ひどい目にあった。


「イツツ・・・いきなりクロスチョップを喰らわせようとする友がどこにいるんだ」

「あははは・・・すみません、つい出来心で」


茶髪がかった黒髪を眉まで伸ばした、ツンツン頭の友人である直人と僕は今、家の居間にいる。幸い、直人の鉄拳は避けたのだが、側にあった机に脇腹を強打してしまったのだ。


「ったく・・・それで、納得したか」

「ああ、つまり新聞部の活動で、部員に送った筈のメールが俺にも届いたってこと?」

「そーいうこと。このことは内密にな、オーケー?」

「ん~分かった。まあ部のネタなら仕方ないか・・・」

「まだちゃんとした確証がないからなぁ。スマンな」

「いいってことよ、友よ。お前の情熱は痛いほど知ってるからな」


どうやら理解してくれたらしい。

ホッとしたぜ、まったく。


「僕の脇腹の痛さも分かって欲しいんやけどな」

「それは自業自得だし」

「ひっでー」

「プッ・・・ハハハハッ!」

「ハハハハッ!」


僕達はそのやりとりに思わず笑ってしまっていた。



「・・・そういえば、直人の叔母さんから電話があったで。少し前に家に電話したけど誰も出なかったからって」

「あ、そういやあ爺ちゃんと稽古していたから、家には居ない時があったなあ。でも、ついさっきまでは家で飯食っていたのに、どうして再度俺の家にかけてこなかったんだ?」

「いや、なんでも伝言があるだけらしくて、僕から直人に伝えてくれたらええって言ってたから」

「それで?」

「ああ、なんでも叔母さんの同僚が直人が剣道やってるって聞いたらしくて、それならとその同僚が趣味で何か作ったらしくて、それを直人に宅配で送ろうとしてたらしいねんけど・・・」



ピンポーン


「宅配便でーす」



タイミング良すぎ!!


「・・・なんでお前の家なんだ?」

「だから、叔母さんが言うには、僕からの説明受けてから直人に渡したいらしく、途中で配達先を僕の家に変えたらしい。そんで直人に電話かけようとしたら・・・」

「逆に俺からタイミングよく電話がかかってきたから、驚いてしまって挙動不審だったと」

「そういうこと」


僕が挙動不審だった理由はなんとかなったらしい。

とりあえず、僕の家に届いた荷物なので、僕が受け取ってサインしてから直人に渡した。

それは細長い長方形の箱だった。



to be continued...





こんにちは!

文才のなさそうな駄作を読んでいただいてありがとうございます。氷雨(ひさめ)です。

初投稿なのですが、とりあえず今後とも頑張っていきます!(“とりあえず”って・・・)


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