子妓の札変え
文斗は司翠だけでなく、高光の客でもある。
金があるからこそ、どのような妓女でも、天妓三姫でも買うことができる人物なのだ。
金階で司翠が文斗の横で相手をしていると、他の客の一人の仕事を終えた高光がやってくる。
顔の良さに白と桃色の衣に包まれた高光はあっという間に香膳にいる人たちの視線を掻っ攫っていく。
高光「――文斗様、お久しぶりです」
司翠「高光も来ましたし、もう一杯どうでしょうか?」
天妓三姫のうち二人を両側に並べ料理と酒を楽しむ文斗は関係者に見せびらかすように両手を広げ満足そうだ。
自分の顔に触れても透き通った艶やかな肌、この顔が何人もの男たちを虜にし、金、権力も天妓三姫という地位になったこの「美」。
なぜ晴晴様はこの美に興味を示さないのか。
それだけでなくあの下級妓女を選んだ、そんなことはありえない。
美でも司翠の妓女としての技でもなく、心で負けたと?その瞬間、胸の奥が熱い。
怒りでもなく、嫉妬でもなく、恐怖?わからない。
手に入れられないものが天妓三姫になった私があるなんて思えない。思いたくない――。
文斗様の話している内容が頭に入ってこない。
だってもうこの人は手に入れたから。どうせ酒飲んで覚えてないでしょ。いいわ。
あの女に興味を持っているのだし、うまく使える――。
高光「――いいわね」
震えている子妓に指示を出す。子妓の顔色なんて興味ない――。
隣にいる司翠も同じことを考えていたのか、微笑みは氷のように美しく、反論を許さなかった。
子妓は小さく頷き、その夜から操作が始まった――。
今の時間なら小葉様は香膳の手伝いで忙しくて番台から外れているはず――。
白蕾「――手が足りないの?」
白い衣に身を包み、腰には剣をぶら下げている妓女は仮面を外しこちらを見る。
そして私の手にある「晴晴」と書かれている紫と黒の落簪に視線を落とす。
「これが落ちていたので、今かけようとして……」
白蕾「これはどこにかかっていたの?」
「高光様のところに――」
て高光様の名前の下へ手を伸ばそうとするけど声も、体も震えてうまくできない。
白蕾「では、こちらがあたしのほうへかかっていた落簪ね。ありがとう」
私の手を持ち、高光様の名前の下へ晴晴様の落簪をかける。
そして自分の名前に迷いなく文斗様の艶やかな翡翠、金の紐の落簪を――。
冷たいはずの落簪だったのにその時は温度を感じた――。
どうして――?!
自分でそのようなことをするなんて――。
白蕾「これはあたしがやったことだからね。さ、仕事に戻って」
その言葉に思わず振り返り、白蕾様の顔を見る。
文斗様がどのようなお客様なのか分かってないの――?
それとも、分かってこのようなことを――?
驚く私の頭を撫で、穏やかに笑っている。あの剣舞のお面の下のこのような顔があるなんて――。
そんな白蕾様は焦るように背中を押す――。
そうか、これは見られてはいけないことだから。逃げるように番台を離れた。
白蕾「――晴晴様も好きなように動くよね――(笑)」
読んでいただきありがとうございます!
投稿できる話数がたまってきましたので本日12:00にも投稿予定です。そして21:30投稿予定の101話までお楽しみいただけると物語に入り込みやすいかと思います。
はな




