暗闇の鬼
ここはいつも苦しい。息をしても空気が足りないの――。
この間の落簪を見に行くのだって成功した。
小葉様もそこまで警戒していないのかもしれないでしょ。
そう思って晴晴様の落簪がかかっている部屋を探した。
どこの部屋を見ても晴晴様の落簪は見つからない。
こっちは物置部屋しかない後戻りしよう。
晴晴「何を探してる」
え――。
あそこは物置部屋のはず。
どうして晴晴様が屋根裏部屋の扉から出てくるの――?
暗闇から現れた黒と紫の衣の晴晴様は冷たい目で見降ろす。
「あ、いえ……落とし物をして」
晴晴「ふっ、落とし物か。ここは小葉館の最上階だぞ?」
「あ……えっと……」
晴晴「誰にそう言うように言われたんだ?」
晴晴様の紫色の目が漆黒の髪と衣に映えて、まるで暗闇の中で見てしまった虎のように恐ろしい。
体の震えが止まらない――。
晴晴「あー、この色は高光だな」
私の帯の色を引っ張り、刺し殺されてしまいそうな空気を纏う姿に声も出ない。
晴晴「……俺の落簪か?ここにあるぞ(笑)」
晴晴様は自分の胸から取り出した。
それを見て私は晴晴様が持っていたのなら見つかるはずもないと力が抜けた。
晴晴「――来い」
そのまま私を引っ張り物置部屋の奥の階段を上がり、奥へ投げ捨てられる。
「晴晴様――」
奥から女の人の声がする。
ダメだ。ここには妓女が居たんだ。折檻どころで済まされるはずがない。
私はそのまま失禁してしまった――。
晴晴「鼠を一匹捕まえたぞ。――白蕾を買った。高光にそう伝えればいい」
その言葉でその白蕾と呼ばれる妓女?は察したのか、伸ばす手を一瞬止めてこちらを見た。
あ……だめだ。
妓女が妓女のことを探るなんて掟破りだ。その命令を受けて、失敗した私が罰を受けても仕方がない。
身構えて目を閉じるしかなかった。
白蕾「――大丈夫よ」
白蕾と呼ばれる妓女は包帯を巻いている手を伸ばし、濡れた私の衣に自分の羽織を掛けた。
え――。
晴晴「こいつはお前の毒だろ」
白蕾「晴晴様がここへ連れてくるからでしょう?――晴晴様が白蕾を買ってくれました。そのように報告するように」
白蕾の顔は真っすぐに高光の子妓を見る。
天妓三姫に宣戦布告する下級妓女か――(笑)
見てて飽きねー女だな。
白蕾がかけた羽織を脱ぎ捨て、子妓は階段を逃げるように駆け下りて行った。
あんな毒を締め上げないなんて、今度はどんな毒を受けるつもりなんだ?(笑)
あいつは高光から折檻受けずに済むだろうが。
まぁ、ここまで締め上げておけばいいか。
目の前の妓女は自ら子妓の失禁した床を噴き上げていた。
晴晴「まぁ時期が少し早まっただけだろ」
白蕾「他人事ですね」
俺の笑い声に釣られるように高光がこの屋根裏に入って来た。
扇子でここの空気を吸いたいくないと口元を隠す。
晴晴「早いな〜(笑)」
高光「晴晴様は天妓三姫を買ってこの小葉館の繁栄するようしていてくださったのに……!この妓女には天妓三姫のような大金を動かせませんよ!」
晴晴「高光大事なこと忘れてないか?落簪を持ってねーと妓楼の中を歩けないだぞ?」
高光「その妓女と私たち天妓三姫の金額は違うはずです!」
晴晴「で――?お前が俺のことを決められると思ってんだ?」
高光「――わ、私を買う客がどれだけいるかご存知ですか?!」
晴晴「それが永遠とは限らないだろう?(笑)客は次の天妓三姫に金を使うようになるだろうな」
与えられたものでお前は天妓三姫になった。中身が無い。
晴晴「俺は、人間臭いのは好きだが、鬼臭いのは嫌いだ」
高光「私が鬼だといいたいのですか?!ひ、ひ、ひどいです」
子妓をあれだけびびらせて十分「鬼」だろ――(笑)
目に刺さる衣に隠れ、高光は涙を溜めて階段を下りて行った――。




