理解
白蕾を理解することは出来ないと思っていたはずだった。
この女が剣を握り、汗を流し、花街の空気を変えてしまった「人」はどんな人物なのか。
考えてみれば下庭や花街で俺を見た女たちは向こうから擦り寄って媚びる。白蕾にはそれが無い。
始めから交渉相手であり、花街で生きていくための駒として白蕾は俺を見ていた。
俺以上の人――。
男はどんなやつだ――?
地獄を味わった女が剣を振い、これ以上の地獄を見る可能性もあり、身を削る。
そんな女は儚く美しい。
どうすればこのような女になれる――。
考え、理解しようとしてしまった時点で俺はこの女に負けている。
寝台に腰掛け白い衣は月夜に消えて行くようで、俺の奥にあの瞳は何を見ている――。
晴晴「――ふっ。まだ地獄に落ち続けるつもりか」
白蕾「あたしが代わりに落ちるだけです」
晴晴「――」
白蕾の頬に手を伸ばすが、口を開き、真実を知るのが怖いと思うとは。
白蕾「晴晴様のお相手が務まるとは思いません。上級妓女をお呼びください」
晴晴「俺は妓女に興味はないが、お前を地獄に落とすこともできる」
白蕾「晴晴様が地獄に落ちるかもしれませんね」
寝台の上で白蕾は俺を見上げ頬を撫でる。
晴晴「俺が自ら地獄に落ちることを怖いとでも思ってるのか」
白蕾「いえ、わからなくなっているだけです。幸せを知ればまた毒を痛いと感じてしまい…自ら地獄へと行くのがあたしたち――」
晴晴「――はぁ、馬鹿馬鹿しい。お前は幸せを知ったのか」
バカらしくなり白蕾を押し倒していた体を寝台の上に並べる。
白蕾「――あれはとても怖い……」
白蕾の声は震え、あちらを向く。
天国から逃げてきたのか。
地獄の者同士でしか歩むことは難しい、か――。
白蕾の頭を撫でる。
俺たちは不器用で愛の渡し方を知らない。
教本通りにいけばこれが正解で。
俺がこれをすることに意味はあるのかはわからない。
白蕾「――晴晴様」
この声は誰を呼んでいるのか。
気持ちのない男女ごっこはただ虚しいとこの目は言っている。
白蕾は俺の頭を静かに撫でる。
まるで我が子を撫でるように。
親の愛を知らぬ女が、なぜこのように愛に溢れているのか――。




